以前、ロケットニュース24では『お金がなかったので廃材から義手を自作した中国人男性』を紹介した。鋼鉄丸出しの義手の見た目は自然とは言えない。しかし、彼の義手は「握る」、「つまむ」などの高度な動作も可能であり、「民間の発明者」として注目された。
その彼は、いま人々のために義手を作っているという。彼が目指しているのは “美しい義手” ではない。実用性を追求した「生きるための義手」だというのだ。その彼の思いや制作現場に迫ったドキュメント動画『義手で義手を作る発明家ソン・ジファ』を紹介したい。
・義手で義手を作る発明家
義手で義手を作る発明家の名前は、孫吉発(ソン・ジファ)さんだ。彼は1980年、爆薬で魚を捕まえる「ダイナマイト漁」の実験中に両腕を失う大怪我を負った。一時は人生に絶望したものの、1年後に一念発起。廃材から義手を作ってしまった。中学校しかでていないが、彼の技術はかなりものだと注目された。
・腕にホウキやハンマーを装着可能な特殊な義手
そして、いま彼は他人のために義手を作っている。彼の顧客はすでに800人を超えたそうだ。孫さんが作る義手は、金属むき出しもの、手首から先にホウキやフック、ハンマーがつけられるものなど、見た目がかなり特殊だ。それには深い理由があった。
・目的は貧しい障害者の経済的な自立
孫さんによると、中国では貧しい身体障害者は、お金がないから義手を買えない、仕事にもつけない、いつまでも貧しいままという状況であるそうだ。孫さんはその悪循環を断ち切るべく、経済的に自立した生活が送れるように実用的な義手を作ることを使命としている。
それは、孫さん自身が、腕を失った後、家族に頼ってしか生きていくことができなくなったことに絶望した経験によるという。必要な支援は、経済的な自立だと彼自身が強い思いを持って行動しているのだ。
・自分は廃人じゃない、必要な人間だ
また、孫さんは必要としている人のために義手を作ることで「自分は廃人じゃない、必要な人間だ」と感じ、嬉しく思っていると笑顔で話している。多くに人が彼を訪ねるのは、義手の性能だけでなく、彼の強い信念と素朴な人柄に魅かれてのことかもしれない。
なお、この動画を製作したのは世界30カ国以上に支部を持つメディアカンパニー「VICE」の日本支部だ。以前にもご紹介した、『福島の警戒区域にたった一人で生きる男』や『自殺の名所:青木ケ原樹海』などを制作したのも、この「VICE」の日本支部及び海外支部である。
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