最近は吉野家やはなまるうどんなど、大手外食チェーンがピッツァの業態を開発する『ナポリピッツァブーム』がにわかに起きている。
だが、正直ナポリピッツァファンの記者(私)からすると、「ただブームに乗っているだけでは……」とガッカリしてしまうピッツァの出来を、多少残念に感じているのも事実だ。
・ブームではなくナポリの食文化を広めたい
そんなブームを横目に、「ナポリの食文化を広めたい」をモットーに、世界一のピッツァ職人が認める機械式のピッツァ窯を作った男性がいる。それは埼玉県川越市に本社を構える、ツジ・キカイ社長の山根 証さんである。
・ツジ・キカイの窯がスゴいワケ
山根さんはツジ・キカイの社長に就任後、薪窯と遜色ないピッツァを焼くことができる高性能なガス窯「クラシカ・ナポリ」と電気窯「イーナポリ」を作った。そこまでたどり着くのにはさまざまな苦労があったそうだ。
・他社の窯とは一線を画したこだわり
たとえば窯に使用されている石材。ナポリピッツァを焼くには温度も大事だが、窯にどれだけ熱が蓄えられているのかも非常に重要。だが、従来の石では高温に耐えられずひび割れを起こしてしまう。そこで独自の配合で石を作り、さらに熱が逃げないこだわりの形状の窯を設計したという。
・世界一のピッツァ職人に認められる
上に挙げたエピソードはほんの一つに過ぎないが、そういった工夫を積み重ねることで名古屋にあるピッツェリア『ソロピッツァナポレターナ』オーナーで世界一のピッツァ職人・牧島昭成さんも認める窯を作ることに成功。いまでは全国のデパートなどで開催される催事で、牧島さんはツジ・キカイの電気窯を愛用している。
・「自分の作りたいものを作った」
ピッツァの本場イタリアでも無い、世界一の職人に認められる窯を作った山根社長は「自分の作りたいものを作ったら、結果がそうなった。私は一過性のブームのためのものではなく、ナポリの食文化を日本に広めることが目的で窯を作っているのです」と語る。
・自分の食べたいものが作れる窯
確かに山根社長のいうとおり、ブームのために作るなら低コストで大量に生産できる窯を作ったほうが正直効率が良い。だが、そのような意識だったら職人に認められることはおろか、自分の食べたいものが作れる窯すら作るのは難しいだろう。
実際に記者もツジ・キカイのガス窯と電気窯で焼いたピッツァを食べさせていただいたが、これほどまでレベルの高いピッツァが焼けるということに改めて驚いた。窯のサイズもコンパクトなので、バーなどの小規模店舗でもこだわりのピッツァを出すことができるはずだ。
・家庭用はあえて出さない
また、さまざまな外食系メディアから「家庭用は作らないんですか?」という質問も受けるそうだが、山根社長はきまって「レベルを下げる必要はないので、作る予定はない」と答えるそうだ。確かにここまで高性能な窯を家庭用にするなら、コスト削減による性能のダウンは避けられない。
利益よりも本場ナポリの食文化を広めることを最優先に考える山根社長だからこそできるカッコいい答えだよなぁ……と思ってしまった。これからツジ・キカイの窯を使っておいしいナポリピッツァを提供する店がぞくぞくと増え、それこそラーメン店や牛丼店のように本格的なピッツァが本場ナポリのような低価格で食べられる時代が来るのだろうか!? これからが楽しみだ。