不要になったバイクを売ろうとしたとき、あなたはどこに売ろうとするだろうか? ネットが発達した今の時代ならネットオークションで買い手を探すという手もあるし、買取業者の買取価格比較なんかもできたりする。だが、ネット以前の時代には、売る側の選択肢は限られていた。
近所のバイク屋に売るか。バイク雑誌の「売ります」コーナーに住所さらして投稿するか。個人間売買情報雑誌などで買い手を見つけるか。はたまた「無料で出張査定! 高価買取り!」などと太文字で書かれているバイク買取業者に頼むか、だ。
・購入半年で愛車の売却を決意
15年以上も前のこと。私(筆者)はバイトで貯めたお金で初めてバイクを購入した。価格は約16万円。中古のホンダ『CRM50』という6速ミッションの原付バイクである。実に良いマシンだった……が、購入半年でスクーターが欲しくなり売却を決意。雑誌に掲載されていた買取業者に連絡をした。
・ここなら高く売れるかも……!!
その業者は「無料で出張査定!」や「超高価買取り!」などと、やたら派手に書かれている広告をバイク雑誌に掲載しており、「ここに売ってよかったです! 買取価格は60万円!!」といった体験者の声も紹介されていた。ここなら高く売れるかも……!! 期待に胸が高鳴った。
・「それにしても遠かった!」
ドキドキしながら迎えた査定日。約束の時間を2時間遅れて我が家に軽トラがやってきた。中から汗ダラダラの業者さんが降りてきて「遅くなりましてすみませんね、前のお客さんがアレでして……それにしても遠かった!」とか言っている。そしておもむろに私のバイクを査定し始めた。すると……
・「あれー、これ、ダメだァ……」と落胆
クンクンクンとニオイを嗅ぎ、「あれー、これ、ダメだァ……」と落胆した表情。何がどうダメなのかと聞いてみると、「お客さん、これ、オイル漏れてます」との答え。確かに新車ではないので、まんべんなくガタはきてるが、そんなにダメだったとは正直ショック!
・何だか申し訳ない気持ちに……
次に、タイヤを見て「お客さん、これ、もう溝がないっすね……あぁ……」とか言っている。「フェンダーも……あー」「ミラー、片方ないんすか? あー、そうなんだ……」などと落胆しまくりで、売り手の私は何だか申し訳ない気持ちになってきてしまった高校生の私であった。
・そして業者はこう切り出した
季節は真夏。30度以上の炎天下のなか、お互い汗ダラダラしながら重い空気が流れている。そして業者はこう切り出した。「本当は買い取れないレベルだけど……1万円ならいいよ」と。い、いい、1万円……。そうなのか、バイクの買い取りというものはこれほどまでに厳しい世界なのか!!
・ビビりながら「は、はい……」
さらに「このままだと不動車になって、処分するときお金かかるよ。でも、せっかくここまで来たんだしね、1万円で引き取りますよ!」ときた。世の中のことをよく知らない高校生の私は、ビビりながら「は、はい……」と答え、1万円と引き換えに我が愛車はドナドナ状態で旅立ったのであった。
・今なら……今だったら!
30過ぎた今だったら、「1万円はちょっと……」と、心を鬼にしてお引取り願ったであろう。今ならネットで買取相場を調べてから交渉に臨んだであろう。その後の私は、バイクを売る時はネットオークションを使うようにしている。中古のバイクを買う時も。今のところ、トラブルはない。