何者かに楽天市場のアカウントを乗っ取られた私(本誌記者)。調べてみると、乗っ取り野郎は私のアカウントでえらい高級な炊飯器(5万6800円)とデジカメを購入していた。発送先は大阪某所。これだけのことが分かっているのに、現時点の状況では、警察としては何もできないのだという。
そのいきさつは、シリーズ『追跡ネット犯罪(1)』と『追跡ネット犯罪(2)』と『追跡ネット犯罪(3)』でお伝えした通りであるが……私は居ても立ってもいられない心境だった。なんせ大阪に私と同じ名前の人がいるのである。私の名前は、実はメチャクチャ珍しい系の名前なのだが、その名前を名乗る人物が確実にいるのである。
・ご挨拶に行こう
いや、実際には存在しないのかもしれないが、私の名前だと分かっていながら、大阪の住所に商品を送った何者かがいるのである。そしてその発送先まで判明しているのである。警察はその住所には行かないと断言した。もしかしたら、発送先の住所の住民が、勝手に住所を使われている可能性もある。もしかしたら、私と同様、この事件に巻き込まれている可能性もゼロではないのである。
ならば私が行くしかないだろう。ご挨拶に。ご注意に。新幹線の始発なんて待っていられるか。今すぐに会いに行きたいのだ。せっかちな私は、今すぐに、今すぐに……今すぐに動きたいのだ。NOW(ナウ)なのだ。ということで、警察署から帰宅はせずに、高速道路へ入ったのだった。
・手土産は何にするか
はるばる東京から大阪まで訪ねるのだから、何かの手土産がないと失礼にあたると私は思った。いきなり訪ねるのだから、絶対に失礼があってはならない。いろいろ考えた末、お米をプレゼントすることを決意した。なぜならば、今から向かう目的地には、高級な炊飯器があるかもしれないのだ。それに見合うお米でなくてはならないだろう。
目的地まで向かう最中に、適当なスーパーでお米を物色。あったあった、いいのがあった。価格は5キロで3280円、滋賀県産の高級米「ミルキークイーン」に決定だ。これは絶対ウマいはず。間違いなく満足していただけるだろう。熨斗(のし)には「ご挨拶」と書いてもらい、準備はOK。あとは、ただひたすら目的地に向かうだけである。
・やたらと早かった楽天&某大手家電量販店の発送スピード
ここで私サイドの時系列を整理してみたい。
2月9日(木)23:52 楽天アカウントを乗っ取られる
2月9日(木)23:55 楽天がアカウント変更確認のメールを送信
2月10日(金)00:06 乗っ取り野郎が買い物をする
2月10日(金)夕方ごろ 楽天からのメールに私が気づく
2月11日(土)11:46 すでに商品は大阪へ届いていた(後の某大手家電量販店の知らせで発覚)
2月11日(土)12時ごろ 妻にアカウント変更したかどうか聞くと「してない」
2月11日(土)13:50 楽天に問い合わせメールを送る
2月11日(土)16:52 楽天「2月10日に買い物されてます」
2月11日(土)21:00すぎ 乗っ取り野郎の買い物履歴、住所などが判明
2月11日(土)22:00すぎ 警視庁など関係各所に連絡
2月12日(日)00:00すぎ 警察署へ相談
2月12日(日)02:00ごろ 東京出発
である。ポイントは「2月11日(土)11:46 すでに商品は大阪へ届いていた」だ。つまり、炊飯器はすでに目的地へ到着していたのである。私の名前が書かれたラベルが貼られたダンボールは、すでに大阪の発送先に到着していたのである。なんでこんなときに限ってチョッパヤの発送スピードなんだ、楽天市場&某大手家電量販店!
それはさておき、今度は逆に、乗っ取り野郎側の時系列を簡単に予想してみよう。
2月9日(木) 私の楽天アカウントを乗っ取る。うへへ。
2月10日(金) 炊飯器などを買う。わくわく。
2月11日(土) 炊飯器などが到着。やったぜ!
2月12日(日) 数時間後に、謎の男がお米持参で東京からやってくる。
だ。
・出発から約9時間後、大阪に到着
真夜中に出発し、ほとんど車の走っていない東名高速道路をひた走る。途中で休憩をはさみつつ、仮眠もはさみつつ、約9時間後には無事に大阪へ到着した。時刻は、お昼チョット前である。目的地であるアパートから少し離れた場所にある有料駐車場にクルマを停め、一歩一歩、大阪の地を確かめるように歩を進める。
・目的地発見
通天閣が見える。オレは本当に大阪まで来てしまったんだ……と静かに実感。iPhone4Sの地図に発送先の住所を入れ、方角を確認しながら徐々に近づく。そして該当するブロックへ到着し、一軒一軒、表札を見る。……あった。デタラメの住所どころか、そのままドンピシャ、まさに発送先の住所に書かれていたアパート名の建物があるではないか!
・緊張しながらチャイムを押す。すると……
アパートの一番奥に、その部屋はあった。無礼のないよう、コートを脱ぐ。手土産のお米も袋から出す。髪の毛もツバを付けて整えた。もしも不在だったらどうしよう。そしたら、お米を置いていこう。そんなことを考えながら、私はチャイムのボタンをプシッと押した。部屋の中から「ピンポーン」という音が聞こえる。しかし返事は聞こえない。不在か。何事もなく終わるのか……と思ったその時!
ガチャリとドアが開いたのだ。
それと同時に、私は「あ、どーもコンニチハ」と、ご挨拶。最初が肝心、お辞儀しながらのご挨拶。そして、ゆっくりと頭をあげると、そこに立っていたのは……な、な、なんと……ッ!?
Report:GO羽鳥