自殺者が増えているそうだ。警視庁の調べによると5月の自殺者数は、昨年に比べて19.7%増加。また、4月5月の数字はその前の月よりも増加しており、近年の3月と9月10月に最多だった傾向と異なるという。これに対し、内閣府は「大震災による生活環境や経済状況の変化」が影響している可能性があると示唆している。

私事を持ち出して申し訳ないのだが、元々記者はうつ持ちだ。さらに出身は福島県。もちろん震災がすべての元凶だとは言い難いが、虚無感に襲われる度合いや頻度が、以前よりも強くなったような気がする。同じように感じている人は多いのではないだろうか。

ちなみに記者の症状は、ひどいときは体や脳が痺れたようになり、ベッドから起き上がれなくなる。寝返りさえ打つこともできないのだ。だが、これまでは、こういった心の悩みは自分で解決するものだと思っていたのでクリニックへ行ったことがない。実際、見ず知らずの人に自分の気持ちを打ち明けることにも抵抗がある。

しかし自殺者が多くなっているという事実を知り、思い切って、まずは「自殺防止」の相談窓口に電話をしてみることにしたのだ。

相当思い切って、数箇所に電話をかけてみたのだが、よほどたくさんの人が電話をしているらしく、どこにかけても「時間をおいて、おかけ直しください」のアナウンスが流れるのみ。あるところは10回以上かけ直したが繋がらなかった。その間にも、「いったい何を相談すればいいのか、相談して何の意味があるのか、何か解決するのか?」など疑問が持ち上がる。もういいや……諦めかけた頃、ようやく「はい、○○相談窓口です」と、女性の優しそうな声が返ってきた。

とはいっても、何を話して良いかわからない。記者が正直に答えると、相手は優しく「具体的な悩みか、漠然な悩みか」を、尋ねてくれた。その口調は、敬語ながらも、親身に語りかけてくれるもので、それまでの緊張はみるみるうちに解けた。

女性は、当然ながら話を聞くのがとても上手で、謙虚であった。それまで記者は特に話すことはないと思っていたのだが、気がつけば、震災時に感じた衝撃や、具体的な症状、さらには過去の自分のことまで、ポンポンと伝えていた。

中には自分本位なことも言ったと思うが、「自分としっかり向き合っている方だと感じている」などと、絶対に否定はしない。さらに感心なことに、女性は口を開く度に「偉そうなことを言ってごめんなさい」と謝りの言葉を入れる。もちろん、記者が何か責めたとかではないし、女性が偉そうなことを言っているわけでもない。相談者のナイーブな心を傷つけないよう、こちらが申し訳なくなるくらいに細心の心配りをしているのだ。

何かが具体的に解決されるというわけではないが、じっくり話しながら、一緒に解決の糸口を考えてくれる。これはこれで、心が萎縮しているときには大変心強いものである。おかげで一時的なマイナス思考は幾分か和らいだ。

そして、「あまり一人で頑張り過ぎないように、もしまた何かあればご活用頂ければと思います」との最後の言葉に救われた。また、何かあったら相談してみても良いかな。

自殺防止を訴えるサイト「befrienders.org」には、「塞ぎ込んでいる時は非常に狭い観点から物事を見がち。 1 週間か 1 カ月してみると、物事は全く違って見える」「自殺しようかと考えた事のある人達の多くは、今では死ななくて良かったと思っている」などとある。そして、最も大切なことは「誰かに話すこと」なのだそうだ。

誰かに気持ちを打ち明けることで、行き場がなかった感情が開放される。それだけでも、随分違う。記者の心も、いくぶん軽くなった。どんなにささいな異変でも良い。心が重く、落ち着かないときは、まずは自殺防止や心の相談窓口に問い合わせてみて欲しい。

参照元:内閣府 自殺対策自殺防止警視庁(自殺者数)
画像:flickr Digiart2001 | jason.kuffer