デンマークのアマチュア・ロケット開発チームが、自家製宇宙ロケットの打上げを試みた。結果的にロケットは宇宙空間に届かなかったのだが、今後の有人宇宙飛行を視野に入れる同チームにとっては大きな前進となり、関係者たちはこの打上げを成功とみている。

「コペンハーゲン・サブオービタルズ」は、国からの公的資金を一切受けることのない非営利的ロケット開発チームだ。ホームページには、「有人宇宙飛行は、必ずしも政府による莫大な費用がかかるプロジェクトである必要はない。それを世界に示すのが我々の目的である」と書かれている。

つまり、低コストでの有人宇宙飛行を真剣に目指す、完全なるアマチュア集団だ。活動資金はもっぱら、彼らの活動に理解を示す支援者の寄付に依存している。

彼らが開発しているのは、HEAT-1Xと名づけられた宇宙ロケット。普通のロケットに比べるとずっと小さいのだが、重さ約1500キロ、長さ約9.5メートルあり、開発費用は約6万ドル(約480万円)。通常のアマチュアが作るものとしてはずいぶん大きいもので、費用もそれなりにかかっている。そして驚きなのは、開発に用いた工具からロケットの素材まで、そのほとんどをホームセンターで買いそろえており、HEAT-1Xがまったくの自家製という点だ。

そして2011年6月3日、ロケット先端のカプセルに人形を乗せ、海上に設けられた発射台から打上げ実験が行われた。1回目の点火は失敗したものの、2回目でなんとか打上げに成功、音速の速さでロケットは急上昇していった。上空約3.6キロのところに達したところで、パラシュートが開きカプセルは海上に落下したのである。飛行時間は21秒だった。

ちなみに宇宙空間は高度約100キロのところから始まる。当初、今回の実験では16キロまで上昇することを目指していたので、この飛行実験は失敗に終わったと思われるかもしれない。しかし、関係者たちは大きな手応えがあったと考えている。

開発チームの設立メンバーの1人、ピーター・マドセン氏は、「信じられないくらい嬉しいです。私たちは歴史に偉業を書き加えることができたと思います。データの回収もでき、打上げ前に比べずっと多くのことがわかりました」と語っている。

宇宙というフロンティアに挑むアマチュア集団、コペンハーゲン・サブオービタルズ。彼らはきっと試行錯誤を経て、今後も宇宙に届くロケット作りを続けることであろう。今回の飛行距離3.6キロは、宇宙には届かなかった。だが、ロケット開発にとっては偉大な一歩だったのではないだろうか。

参照元:popsci.com(英文)