日本で屋台を冷やかすたび、強烈な「見たことがある感(既視感)」を胸いっぱいに感じる今日この頃。

例えるなら、国道沿いに連なるファミレスのような、まるで日本全国のたこ焼き屋さんが、同じ人の経営する同じ店だった──みたいな錯覚をおぼえ、つい、活気に満ち溢れた台湾の屋台街に思いを馳せてしまうのだった。

その台湾も、同ジャンルの屋台が複雑に組み合わさって屋台街ができているわけだが、日本と異なり常設屋台の割合が高く、オーナーの個性を感じさせる独自のカスタマイズが施されているのがポイントである。

「○○○も絶賛!」といった風に、雑誌やテレビの取材を自慢する飲食店は山ほどあるが、冒頭写真の屋台、店頭に設置した大画面液晶テレビで取材時の映像を無限ループ! 映像の真横で張本人が団子を焼いているといった具合で、ここまで露骨だと逆にさわやか。

続いては、腕組みするオーナーの渋い写真をあらゆるスペースにあしらい単なる屋台のおやじを、カリスマの如く自己プロデュースしてしまうケース。人ごみをかき分け食ってみるや、他と大差ない味だったりするわけだが、ブランドの魔力によって「む……さすがは名人、ひと味違う!」と変に納得してしまう。日本でカリスマラーメン屋が使い古した手口だが、効果のほどは確かなようだ。

日本のテキヤ業界も、不景気と高齢化で客の減少に苦しんでいるという。ここらで台湾のスターシステムに習い「北関東をさすらうタコ焼き作りの人間国宝 小林道夫の店」みたいな展開はいかが?
(取材・文・写真=クーロン黒沢

▼1958年創業の老舗、通称・ネギ魔人のお店

▼写真と同じ人が作ってる! なんだか得した気分!