日本でも買占めが問題となっているが、太平洋の向こうアメリカ西海岸でも、原発事故を懸念して買占めが起こっている。危険な放射線が迫ってくるという恐怖にかられて、人々は抗放射線薬「ヨウ化カリウム(ヨウ素)」剤を買いあさり、品切れ状態が続いている。

原発の事故で何よりも心配されるのは、放射能による汚染だ。その放射性物質のうち甲状腺ガンの原因となるのが、「放射性ヨード」と呼ばれるもの。この放射性ヨードを防ぐのが、ヨウ素剤だ。その仕組みは、甲状腺をあらかじめヨウ素で満たしておくと、仮に被爆しても甲状腺に放射性ヨードが取り込まれず、予防できるというもの。

ヨウ素剤は、過去の諸外国での原発事故において配られてきた。今回の事故でも、福島第一原発の周辺住民や、現場付近にいる作業員や救助隊員に配られている。

さて、カリフォルニアの衛生当局は、日本で放出された放射線が危険なレベルのままアメリカ西海岸にとどくことはなく、健康に全く心配ないと通達している。それにもかかわらず、日本での放射能漏れを心配している人たちは、ヨウ素剤を買いあさっているのだ。

バージニア州の製薬会社「アンベックス」によると、通常は1週間に数箱の注文が、今は1分間に3箱くらいの注文になり、すでに1万箱以上を売って品切れ状態だとか。また、ミズーリ州の「フレミング製薬」でも1時間で数十件の電話やメールによる問合せがあり、現在のところ在庫はあるものの今週中にはなくなる見込み。現在、発注をかけている。

カリフォルニア州サクラメント郡で食料雑貨店を経営するスーザン・タレリコさんのお店でも、月曜の朝にお客さんが殺到し、ヨウ素剤は開店2時間で売り切れている。店内の張り紙には、ヨウ素剤の大量摂取は逆に危険だと書かれてあり、また購入したお客さんには、現在の状況では不要だと説明がされたという。

「お客さんは一応聞く耳は持っているのですが、それでもほしがるのです。薬を必要としているというより、どうも気持ちの問題みたいですね」と、タレリコさんは言う。

日本でも状況は同じだが、買占めはどうやら心理的な要因が大きいようだ。「普段使用しないけど、念のため購入してみた」とか、「みんな列を作って買っているから、自分も購入してみた」といった消費行動は抑えなければ、被災地で本当に物を必要としている方々に物が行き渡らない。こんなときこそ皆さんの協力が必要。冷静な判断を心がけ、本当に必要とし使うものだけを買うようにしよう。

参照元:kramersforum(英文)
参照元:news10(英文)