さぁ、これからお金の話をしよう。誰もが多かれ少なかれもっている「お金」であるが、「お金って何?」と聞かれると意外に答えられないものである。このコラムでは、誰もが知ってるようで知られていない、お金について話してみたいと思う。今回は、お札を発行している日本銀行について話したいと思う。

・日本銀行は民間銀行!?
前回、お札を発行しているところは日本銀行、硬貨を発行しているところは日本政府という情報をお伝えした。今回はもうちょっと踏み込んだお話をしたい。実は、お札を発行している日本銀行はジャスダック証券取引所(株式や債券の売買取引ができる場)に上場している資本金1億円の民間銀行なのをご存知だろうか? 上場しているので、当然、その株式(出資証券と呼ばれる)は誰でも買うことができる。

では、1億円あれば、日本銀行を買えるかというとそう簡単な話ではない。あくまでも、1億円というのは額面(※1)であって、11月15日現在、時価(※2)では1株あたり5万5000円もするのだ(1株100円)。さらにいえば、100株単位での売買なので、株主(出資者)になるには、最低550万円必要なのである。

そして、たとえ550万円出して100株買ったとしても、0.01%(1万分の1)しか権利はない。さらにいえば、買い手が多ければ高騰し続けるのである。買い占めようとすればするほど、どんどん高くなり買えなくなってゆくのだ。

・政府の特権 
たとえどんなにお金を出しても、日本銀行は買収不可能なのである。実は政府が株の55%(額面5500万円)を保有しており、残念ながら、経営には参加できない仕組みになっているのだ。さらに、日本銀行法により出資者であり株主ではない為、その発言権は最初から与えられていない。唯一、存在する日本銀行の株を買うメリットは、その配当だけなのである。

しかし、その配当も額面の5%以内と決められていて、55000円あたりたったの5円しかない。そして、出資証券の価格が上がれば上がるほど、利回りは落ちる構造なのである。さて、次回はなぜ、日本銀行の株が公開されているのか? という謎について話してみたい。
(文=経済評論家・渡邉哲也

※1 額面とは、証券の券面に書かれている価格、実際の取引は額面で行われるわけでなく、市場の取引で決定される。
※2 時価とは、実際の取引価格を言う。証券などにおいては、証券取引所でその価格を決定する。市場取引となるので、買い手が多ければ上がり、少なければ下がる。

イラスト:ピョコタン