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声で遊ぶコミュニティ「こえ部」、1アイディア100円で販売「元気玉」、絵画の測り売りショップ「アートメーター」など斬新なアイディアを、いくつも世に送り出している面白法人カヤック。その斬新なアイディアは、時に感心し、時に驚かされ、そして時に笑いを誘う。一体、そのアイディアの源泉はどこから来るのだろうか。代表取締役の1人(※)、柳澤大輔さんが11月19日に新刊を出版した。その名もアイディアの宝庫、カヤックを象徴するようなタイトル『アイディアは考えるな。』 (日経BP社 ¥1365)。稀代のアイディア会社カヤックにして、『考えるな』とはどういうことだろうか。早速インタビューでお話を伺った。(※カヤックの代表取締役は、柳澤さんを含め3名いる)

1).今回の新刊を出版された経緯について、教えてください。

2006年の4月から今年の6月まで、日経PCオンラインで3年間続いていた僕のブログ『面白法人カヤックのいきかた』が、日経アソシエオンラインに引っ越しをしたんです。『週刊面白法人カヤック』というタイトルで新しく始めました。その時に「前の連載を本にしませんか?」とお声を頂いたところから、今回の本の話は始まっています。当初はブログの内容をまとめるつもりだったんですけど、結局ほとんどを書き直しています。以前出した『面白法人カヤック会社案内』が自己紹介の位置付けだったので、今回はより実践的な内容を提供しています。誰にでもヒントになるものになるように仕上げました。多くの人に長く読んで頂けるものにしたいと思って、『アイディア』という言葉をタイトルに付けています。

2).この本の読みどころは?

『はじめに』で書いていますが、「『アイディアをたくさん出すノウハウ』は『楽しく働くノウハウ』」でもあるんです。アイディアを出すことをご紹介しながら、『面白がり屋』になってもらいたいんですね。人間は何かに閃いた瞬間、ハッピーになるそうです。これは誰でも共通で、日常に閃きが多いほどハッピーな時間が増えると思うんです。自分の仕事が直接アイディアを形にするものではなくても、その業務のちょっとした工夫に気付いて、アイディアを閃くと楽しく働けると思います。第1章の『悩まずに、まず乗っかろう』では面白がり屋になる3つのステップを紹介しています。アイディアを出せる人は、何事も面白がることのできる人です。面白がり屋になって仕事も遊びも楽しんでもらいたいんです。後の章は、アイディアを出すための実践的な内容が続きます。

第5章の一番最後に、岡本太郎さんの言葉を引用して面白がることの理由について、お伝えしています。「人間はすべて矛盾のなかで生きている。(中略)矛盾のなかで面白く生きようと、発想の転換はできないだろうか」。僕はこの言葉にこう付け足したいです。「アイディアをいっぱい出して、面白がり屋になろう」。この考え方をお伝えしたいです。

3).どんな人に読んでもらいたいですか?

商品開発や企画・制作の人にも、もちろん読んでもらいたいんですけど、誰にでも当てはまるノウハウをご紹介しています。アイディアを出す仕事をしていない人やアイディアを出せないと思っている人ほど読んで欲しいですね。楽しく働くノウハウなので、仕事を楽しいものにしたいと思ってる人には、是非読んでもらいたい。今、仕事が楽しくないと思ってる人には、楽しむきっかけが見つかると思います。逆に仕事を楽しんでいる人には、さらに楽しむ材料になると思います。

後は、これから就職を控えている学生さんにも読んでもらいたいですね。僕の就職の時のエピソードも紹介しています。自分を誠実にさらけ出すという方法で、複数の企業から内定をもらいました。結構参考になると思いますよ。

『アイディアをたくさん出すノウハウ』『楽しく働くノウハウ』、この言葉のいずれかにピンと来た人には、オススメです。

4).「どうしてもアイディアが出せない」という方に、何かヒントはありますか?

アイディアが出せないのは『すごいアイディア』を出そうと思うから、出せないんだと思います。本にも書いていますが、アイディアの『質』にこだわるとアイディアは出せなくなるし、あってもすごくないと思ってしまいます。まずは『量』を出すことに挑戦してみてもらいたいですね。『質』を考えずに『量』を求めるとアイディアは出て来ます。エジソンやバッハ、ピカソなどの歴史に名を残す偉人たちも、大量のアイディアの中から、秀逸な作品に結び付くアイディアを生み出しています。

アイディアを出す人と出さない人の一番大きな違いは『思い込み』です。自分にはアイディアがあると思い込んでいる人が、アイディアを出すんです。出せないと思っている人は、自分で思ったその通りにアイディアが出せない。出す人と出さない人の違いは思い込みだけです。いきなり思い込みを捨てることは出来ないと思いますが、とにかく、思い込んでいる自分の限界や、自分の壁、自分フィルターを捨ててみることが大事ですね。訓練すれば、誰でもたくさんアイディアを出せるようになる可能性があります。そのためにも、まずは『出せない』という思い込みを、なるべく早く捨てて欲しいです。

5).これから本を読まれる方に一言

楽しく働くためには、アイディアが必要です。アイディアがたくさんあれば、毎日楽しくなります。自分も周りも楽しくなって、楽しく働けるようになります。まずは何事にも乗っかって、アイディアをたくさん出してみて下さい。

それから、アイディアは1つの可能性です。実現出来ないことであっても、そのアイディアを1つでも多く持っていれば、実現出来る可能性を1つ持っているのと同じことだと思います。自分の持てる可能性をたくさん持っていると楽しいし、ハッピーですよね。毎日を確実に面白がれると思います。不安や矛盾の少なくない世の中かも知れないけど、一緒に面白がり屋になって、毎日を楽しんで行けたらと思います。

『面白法人』と看板を掲げるカヤック。面白いという言葉に寄せられる期待は、決して小さくはないはず。それでも率先して面白がり屋になって、面白さを提供するその決意と志は、実直とさえ感じさせる。記者は『面白法人カヤック』ほど、真面目な会社はないのではないかと感じている。本書を通して、面白がり屋がどんどん増えて行けば、世の中さらに楽しくなることだろう。アイディアを求める人はもちろん、日常をより楽しく過ごしたい方は必読の1冊。