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立ち食いそば400店を巡った私が厳選する「カレーそば13選」/ キーマカレーそば、十割カレー南蛮など実は深い立ち食いカレーそばの世界

27分前

邪道とも言われるカレーそば。発明された明治時代、老舗そば屋に敬遠されたというのは発祥の店である中目黒『朝松庵』の歴史に書かれている通り。カレーが強すぎてそばの風味が飛ぶなどの点は、そばにフォーカスする勢力から反発を招くのも理解できる。

一方、カレーが味を底上げすることによるつゆの味の安定感は画期的だ。どこで食べてもある程度ウマイのがカレーそば。ひょっとしたら、その手軽な安定感は現代の立ち食いそば屋でこそ真価を発揮するものだったのかもしれない。今、立ち食いそば屋のカレーそばが熱いのだ。

・その1『柳屋』笹塚

ウマイそば屋を求めて色んな町を放浪する連載「立ち食いそば放浪記」。先日400回を迎えたが、実は私(中澤)も当初カレーそばにそんなに注目していなかった。カレーそばってどこで食べても同じ味のイメージがあったのである。

そんなイメージをガラッと変えてくれたのが、笹塚『柳屋』のカレーそば。都内立ち食いそば好きにはすでにレジェンドとして知られていると思われるのだが、なんと、ここのカレーそばはキーマカレーそばだ。

ギュッと濃縮されたスパイシーさが溶ける暗黒つゆの旨みは平均帯の雲から明らかに突出している。メニュー表にひっそりと存在するそのオリジナリティーは、魔術師が地下室で研究した秘術の如し。一見何の変哲もない立ち食いそば屋のカレーそばの異端さに階層の違いを感じた。

そんなわけで、ウマイカレーそばを探して色んな町を放浪したところ、他にも突出しているカレーそばがあった。普通のそばとはまた違う深淵があるカレーそばの世界。私がオリジナリティーを感じた立ち食いカレーそばの名店は以下の12店である。


・その2『白河そば』牛込柳町

新宿区ながら都営大江戸線開通までは「23区の秘境」と言われていたという牛込エリア。そんな大江戸線・牛込柳町駅前に創業1973年の立ち食いそば屋がある。『白河そば』だ。

その歴史もさることながら唯一無二なのはそばつゆが塩出汁なこと。透き通るつゆの美しさは温そばの評価も高いが、カレーそばとのマッチングも素晴らしい。甘みが控えめでさっぱりした塩出汁カレーそばは一食の価値ありだ。

・その3『松石』高田馬場

JR山手線・高田馬場駅前というアクセス抜群の立地で「攻めのそば」を展開しているのが『松石』だ。かえしは砂糖もみりんも使わず醤油のみ。なのに、そばつゆに豊潤な甘みとコクがあるのは醤油にこだわっているためだ。

店長はもともと全国の醤油を取り寄せる醤油マニアで理想のものを探した結果九州の醤油にたどり着いたらしい。そのこだわりの甘みはカレーそばにも活かされていて、優しさとスパイシーさが同居するカレーそばはオリジナリティーが光る。都会の雑踏に紛れて瞬く星のような名店だ。

・その4『万代そば』新潟

新潟のバスターミナル「万代シテイバスセンタービル」の待合スペースにある立ち食いそば屋が『万代そば』だ。その歴史は1973年から続いていて、発着するバスと行き交う人の中で食べる旅情は現代が失くしてしまったものを感じるが、この店のカレーもまた今では珍しくなった黄色いカレー。

後からピリリと効いてくるスパイシーさと豚骨ベースの猛烈なコク深さがあるカレーは今や新潟B級グルメの定番となっているけど、カレーそばになると、そこにさらにそばつゆのかつお出汁が効きまくり。豚骨とかつおが同居するカレーそばは周囲の旅情も含めてここにしかない味と言える。


・その5『そばよし』日本橋

かつお出汁が効いていると言えば、日本橋の『そばよし』を忘れてはいけない。鰹節問屋直営の立ち食いそば屋だけあり、カレーそばにおいてもそのかつお出汁力は矜持を感じる。スパイシーさすら追い越してぴちぴち跳ね回るようなかつおの風味。ここのカレーそばは活きが良い。

・その6『かのや』新宿西口店

新宿と新橋に3店舗ある『かのや』は、上記5店に比べると特筆すべき箔(はく)みたいなものはない立ち食いそば屋だ。そのなんでもなさがフラッと入れる気楽さにも繋がっている立ち食いそば屋なのだが、なんでもない雰囲気の割にカレー南蛮がやたらウマイ。

カレー自体にクリーミーかつコク深さがあることは元より、そばつゆの醤油の甘みが下味に入ることで一段と深みが出ているカレーつゆとしてのバランスの良さが技ありだ。さらに、トッピング・味玉を加えると完全に『かのや』ならではの味に。その味は表層に隠れた深層。まさしく階層の違いを感じたカレー南蛮だった。

・その7『立ち食い蕎麦 酒処 稜』綾瀬

下町感あふれる足立区。東京でも東側は立ち食いそば激戦区だけど、コロナ禍明けにJR綾瀬駅にオープンした『立ち食い蕎麦 酒処 稜』はすでに名店との呼び声が高い。そばのコク深さや天ぷらのウマさなど料理のバランスの良さは風格すら感じるレベル。

その圧倒的なバランスの良さがカレー南蛮にも発揮されている。甘みとコク深さのあるそばつゆに、カレーの鮮烈なスパイシーさが加わって、カレーつゆは深い味。さらに、のどごしの良いそばがカレーつゆにマッチしていて、バランスレベル99のカレー南蛮と言える。

・その8『福そば』人形町

レベル99のカレー南蛮と言えば、もう1つ別の山の頂を感じるのが人形町『福そば』だ。カレー南蛮発明当時、カレーの強さでそばの風味が飛ぶことでそば好きから敬遠されたことは冒頭でお伝えした通りだが、『福そば』のカレー南蛮はそばの風味がめっちゃする。

少なくとも、そばの風味という点で言うと私が食べたカレーそばの中で最強だ。だからと言って、カレーつゆも特に薄味なわけじゃなく、花が咲いたようなスパイシーさと一段深いそばつゆの旨みが当然あってそばの風味が同居しているので、腕を感じずにはいられなかった。

・その9『さ竹』恵比寿

黒船的な登場から邪道の道のりを辿ったためか、カレー南蛮がメニューにないそば屋も多い。そのジャンクなパンチ力はストイックにそばに向き合うなら相反する部分もあるのは明白。しかし、それゆえに、カレーつゆとそばのこだわりの共存にハイブリッドさを感じるのが恵比寿の『さ竹』だ。

石臼挽き十割そばのカレー南蛮が税込700円。発想と価格の軽やかさを実現するのは電動石臼製粉機という科学の力。そんなカレーそばは、とろみのあるカレーつゆと太めのそばがマッチしている。ハイブリッドかつ合理的なコスパの魅力は、極めて現代的な一杯と言えよう。

・その10『南天』椎名町

西武池袋線椎名町駅目の前の立ち食いそば屋『南天』は肉そばの名店として知られる店。肉そばダブルのもりもりの肉っぷりはそば食べに来たのか肉食べに来たのか分からなくなるレベルだが、そんな肉と並んで知る人ぞ知る人気メニューなのが、毎年秋から始まるカレーそばだ。

通常の肉そば同様、肉ダブルに増量できるこのカレーそば。食欲の秋を告げる一杯として待っている人も多いに違いない。2026年もすでに開始されているので食べに行かなければ。

・その11『丸政そば』山梨県

トッピングと言えば、山梨の『丸政そば』だ。山賊焼き、コラチャー、馬肉、ジャンボコロッケなどなど、ガツンとした存在感は完全にそばよりトッピングが主役。爆弾みたいなトッピングの数々にひたすら食べごたえがある。

そして、もちろん、カレーそばにも山賊焼きなどがトッピング可能。カレーそばのジャンクみ+爆弾トッピングの組み合わせは、他店に影すら踏ませない独自の地位を築いている。その大らかさはカレーそばにも多様性を感じる。

その12『信州そば本陣』新宿

正直個性だけの話をするなら新宿駅にある『信州そば本陣』が1番際立っているかもしれない。そばつゆ、そば、トッピングでオリジナリティーが光る店でも、加算されるカレーは基本ジャパニーズカレーでカレーつゆには和食っぽいとろみがあった。しかし、この店の「スパイシーカレーそば」は違う。

カレーつゆが完全にタイカレーみたいなサラサラ系なのだ。ピリリとした辛みの速度に本場感があって、なんなら奥に感じる甘みもココナッツミルクみたい。

このメニューがどういう経緯で生まれたのかは不明だが、これまでのカレーそばが可愛く見えるほどの邪道っぷりに脱帽。カレーそばに深淵を通り越して魔境を感じた一品。

その13『麺処盛盛』富士見台

現代の立ち食いそば屋でカレーそばが花開いていることはご理解いただけたかと思う。最後はその中でもエッジィな店をご紹介したい。その名も『麺処盛盛』。

甘さ強めのつゆに深い旨みがあるこの店。そのつゆがまろやかな自家製カレーとマッチするのはもちろんなのだが、普通のカレーそば以外に、汁なしカレーそばや冷やしカレーそばなども選べる。

さらに、麺も5種類から選べて、トッピングに辛味ねぎがあるなど、カスタマイズの幅広さは通えば通うほど探求したくなること請け合い。己の好みと向き合う雰囲気はまるでラーメン屋だ。現代的センスに立ち食いそば屋の今を感じる。

気楽さを極めることで浸透した立ち食いそば屋。縛られない発想が極まった今の時代だからこそ、邪道から始まったカレーそばが新しい扉を開くかもしれない。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼つゆとカレーのバランスも店によって個性がある

▼今、立ち食いそば屋のカレーそばが熱い

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