
アメ横はすっかり様変わりしてしまった。昔は外国人の経営する飲食店が少なく、鮮魚店のにぎやかな呼び込みの声で活気にあふれていたもの。
しかし、今ではアジア圏の飲食店が路上を埋め尽くすほど軒を連ねる光景がすっかり当たり前になってしまった。それはそれで活気があるけど、昔を知る身としては、都民の台所の風情がなくなるのは少し寂しい。
それでも昔を感じさせてくれるものは、まだ残っている。たとえば志村商店の「チョコレートたたき売り」もそのひとつ。……なのだが、毎年、いや毎月のように物価が上がっていくなかで、1000円を死守するのは大変なのではないだろうか?
現在の様子が気になったので、3年ぶりに1000円で商品を購入したところ、やはりその影響を顕著に感じずにはいられなかった……。
・アメ横のたたき売り
私が初めてたたき売りを利用したのは今から15年も前になる。2011年11月、そう東日本大震災の年だ。あの頃は計画停電等の影響で一時、街からにぎわいというものが感じられなくなった。
震災から約半年で街が平常に戻りつつある中で、アメ横で聞いたあの「入れちゃえ入れちゃえ入れちゃえ!」の声は、自然と気持ちを明るくしてくれた。「景気がいい」とはまさにあの啖呵売(たんかばい)のためにあるような言葉だ。
時代は移ろい、ジリジリと物価が上がってきた2023年12月。12年ぶりに訪ねると、変わらず営業は続いており、啖呵も健在。だが、商品には国際情勢や円安の影響がにじんでいた。
さらに3年を経た2026年6月、久しぶりに志村商店を訪ねることにした。
あの黄色の看板は3年前と変わった様子はない。値段も据え置きなのは有難いけど、3年前ですら大変だったはずなのに、さらに円は弱くなり、世界情勢も混沌さを増している。1000円のままであることを素直に喜べない自分がいる。
いつものように1000円を渡すと、今までと少しも変わらず「入れちゃえ入れちゃえ入れちゃえ!」が始まった。これを聞けるのはうれしいんだけど、毎回少し心苦しいことがある。
それは「おにいさん、どこから来たの?」と聞かれることだ。もちろん、ここアメ横は観光名所であり、全国から人が集まっている。だが、私はこう聞かれると「都内です」と正直に答える。近距離で申し訳ない気持ちになってしまうんだよなあ。まあ、仕方ないけど。
そうして、いつもの気持ちの良い口上を聞いて袋を手にした。
15年前は本当に袋いっぱいに入っていた。ケチな気持ちでそう言ってるわけでなくて、あの頃から世の中がずいぶん変わったことを実感させられる。当時は袋が自立したんだ。
その中には袋菓子・箱菓子を含めて計14品。
そこから内容がかなり変わったとはいえ、3年前は計15品が入っていた。
そして今日買ってきた袋は、残念だが自立はしない。壁にもたれさせてようやく立っている。
中身はこうだ。大きな箱菓子がひとつと、あとは小袋のもの。商品の数は11品だった。
森永 ディアガレットサンド チーズケーキ味
森永 ラムネグミ
森永 グミチョコボール 国産白桃 × 2
森永 キャラメルバークランチ × 4
不二家 LOOK 苺ティラミス
不二家 カントリーマアムチョコまみれザ・ワールド オーストラリア編 × 2
3年前よりも品数が4品も減ってしまっている。致し方ないことだと思う。我々も日常的に物価高を感じているのに、1000円で同じだけの品数を求める気持ちになれない。
それならいっそ2000円にしてくれてもいいんじゃないだろうか? このお店に限らず、客離れを嫌って、価格を死守するところも多い。
その気持ちは消費者としてとても有難いけど、店が苦しくなるのなら、もう1000円、せめて500円でも値上げをして、できるだけ長くお店を続けて頂ける方が有難いと思うのだが。
いつになったら、物価高に歯止めがかかるのだろうか? いずれにしても末永くたたき売りを続けて頂きたい。
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24