
旅先の宿の食事で、こんなに満ち足りた気持ちになったことは無い。実はGoogle Mapで周辺を見た時に、ローカル感が凄すぎて侮っていた。
しかし私は間違っていた。ここには、全てがあったと言っても過言ではない。結局のところ、美味いメシには勝てないのだ。私は弱い。
だが、美味いメシに弱い全ての人に強くお勧めできる。それが、今回私が福井で宿泊した宿「旅を奏でる ひろた」での食体験だ。
・「若狭ふぐ」と若狭湾
今回、私は福井県の提供で敦賀から高浜町までの、嶺南(れいなん)エリアの魅力を伝えるため、プレスツアーに参加している。
そこで福井県が繰り出してきたのが、若狭湾で養殖されるブランドふぐ「若狭ふぐ」だった。こいつの美味さと、産地ゆえかの驚異のコスパに、私はすっかりやられてしまった。
まずは、「若狭ふぐ」と若狭湾について簡単に紹介しよう。実は若狭湾は、トラフグの養殖がおこなわれている日本最北の地である。
水温の低い期間が長いことや、夏と冬の水温の差が大きいことが、「若狭ふぐ」の美味さに影響していると考えられているもよう。
海上保安庁のHPに、若狭湾の年間の水温が掲載されている。トラフグは水温10度~30度あたりに適応するが、若狭湾の水温は11月から20度を下回り、3月に10度に至る。その後は再び上昇を始めるようだ。
「若狭ふぐ」の一番おいしいシーズンは11月ごろから始まり、3月ごろまで続くという。水温の下限が約10度という点から若狭湾が養殖の北限な理由が納得でき、美味くなるとされる時期と水温にも相関性が見られて興味深い。
・小浜市阿納へ
さて、福井県は「若狭ふぐ」を食べられる宿を「若狭ふぐの宿」として認証しており、県のHPで一覧を公開している。
認証を受けた宿は福井全域に存在するが、今回の取材で選ばれたのは、小浜市阿納にある「旅を奏でる ひろた」という宿。敦賀と高浜町の中間あたり。阿納という場所にある。
阿納は山間の小さな漁村である。三方が山で、正面は海だ。小さな漁村で、アクセスにはレンタカーが推奨される。
・若狭ふぐ
なんとも奥まった場所に来ましたね。外界から隔離されてるじゃないですか……! 思わず口に出たファーストインプレッションだ。海はきれいだが、極寒の時期にできることは釣りくらいしか思いつかぬ。コンビニも無い。
こんな超絶ローカルスポットに人が来るのか……? そう思う方もいるだろう。実は阿納には「若狭ふぐ」の養殖業者による宿が複数存在する。
夏場は海水浴場となる正面のビーチの沖に、この辺の宿の人たちが所有するのであろう養殖筏が見える。
あそこで育てた「若狭ふぐ」を、そのまま調理してくれるわけだ。そして今はフグが一番美味い時期。路地では近隣の宿の浴衣を着た観光客の姿をときおり見かけた。
分かっているグルメな人たちが、フグを目当てに来ているのだろう。聞くと、「若狭ふぐ」だけでなく、ブランド養殖魚の「若狭まはた」の他、鯛などの養殖もやっているそうだ。
・極上
そして迎えた夕食の時間。まず目に入ったのはこれだ。恐らく4人分。ふぐ鍋(てっちり)の具材一式だ。
そして、これが1人分の「若狭ふぐ」の刺身。全部1人で食っていいのかい? これだけで腹一杯になりそうな量だ……!
1枚が厚い。弾力がとても心地よく、噛むと染み出てくる旨味が濃い。ふぐは淡白な魚だと思っていたが、ここのふぐは濃い。
おっと、焼きふぐもあるのかい? こいつは絶品だった! 刺身とも鍋で煮られたものとも異なる弾力があり、レア気味で食うと身がジュワジュワで魚肉感が稀薄。この旨味、どこか鹿児島の美味い鳥刺しを思い出させる。
ふぐ料理の主役は刺身で、焼きふぐはサイドキックが限界だと思っていた。しかし、それは東京クオリティの焼きふぐだったようだ。
この焼きふぐはメインを張れる。やっぱ本場は違うな。感心していたら、から揚げも出てきた。
このから揚げは極上だった!! 出てきた全てが凄まじく美味いのだが、から揚げはどこか別格で、思わず宿の人にとても美味いと感動を伝えてしまった。
特濃の出汁で、シイタケすらも ふぐ味に染まった鍋をすすり、旨味の濃い刺身を噛みしめ、焼きふぐとから揚げに唸っていたら、ふぐのヒレ酒が出てきた。
辛口の酒に、美味いふぐの風味が、これでもかと出たストロング仕様。味の濃いふぐ料理を、強いふぐ酒で流し込むという恐るべき所業だ。これを1度味わうと、もう価値観を変えられてしまう。
ここまでメイン食材が「若狭ふぐ」1種類。だが、私の主観ではこの世の全てを味わったかのような満足感がある。ふぐだけで腹八分目を軽く超えるボリュームのところ、最後にふぐ鍋のスープで作る雑炊でとどめを刺された。ふぐに溺れたという感覚だ。
でも、お高いんでしょう? そう思うじゃないですか。お値段を聞いて驚愕しました。こちら「ふぐフルコース」なのだが、オーシャンビューなツインルームの宿泊費込みで、1人当たり25000円前後(部屋毎に異なる。詳細は公式HPを参照)ですって。コスパが凄い。
参考リンク:旅を奏でる ひろた、海上保安庁
執筆・撮影:江川資具
Photo:RocketNews24.
▼部屋は全て細部や間取りに小さな違いがあるが、オーシャンビューのツインはこんな感じ。2023年2月にリニューアルしたそうで、半分が洋間、半分和室のスタイルで綺麗かつ広い。
風呂は大浴場のみ。トイレは客室外。部屋にドライヤーは無いので持参を推奨。
▼実は味の濃い小粒の牡蠣もあり、実に美味だった。普通は主役級の感動を与えてくれるクオリティの牡蠣だったと思うが、若狭ふぐが相手では分が悪かったと思う。
▼茶碗蒸し。ふぐが入っている。
▼皮の湯引き。プリプリで美味い。
▼「生酒貯蔵 わかさ」 生酒らしいワイルドな味わいがあり、刺身や鍋のふぐとよくあう。
▼「早瀬浦 特別純米冷用酒」 澄んだ舌ざわりからの鋭いキレ味。焼きふぐやから揚げとよくあう。
▼釣り船も出しているもよう。
▼著名人の宿泊もあるようだ。
江川資具




















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