テレビで自分の曲が使われた時の裏側の話をしたい。ほとんどの人は経験することがないイベントだと思うので、どれだけ意味のある情報かは分からないけど、同じことで「は?」と思った人の助けになれば幸いだ。

・作詞した曲がテレビで流れた話

実は2025年7月、私(中澤)が作詞した曲がテレビで流れた。私は自認バンドマンなので、ライブにお客さんが来るのが一番嬉しいんだけど、とは言え、初めてだったから素直に嬉しかった。

いや、正直めっちゃ嬉しいかもしれない。なんたってキー局のゴールデンだった。この後こんなことが私の人生に起こるか分からない。思い出したらテンションが上がってきた。どうしよう? 今からでも祝杯をあげようかな。

売れてないのにどうやってテレビで流れたのか。ここが気になる人もいるかもしれないので、先に軽く触れておくと、私自身が出演したから、その紹介で「実は普段こんな活動をされてます」と使用されたわけだ。

ゆえに、再現性はない。テレビで曲が使われる攻略法みたいな裏側を知るためにこの記事を開いた人は参考にならないと思うので先に謝っておく。すまん。今回の裏側はお金の話だ

・テレビで曲が使用されると使用料がもらえるはず

テレビで曲が使用されると、普段聞かせる機会のない人に届けられるという以外にも期待できることがある。それが著作物の使用料だ

テレビ局とJASRACは包括契約をしているので、JASRAC管理楽曲がテレビで使用された場合、JASRACから著作者に使用料が分配される。ざっくり言うと、テレビが使った曲をJASRACに報告することで、著作者が報酬を得られる仕組みが出来ているわけだ

この使用料は、契約で支払われている一定期間分のまとまったお金を、期間内に曲が使用された著作者で分ける形。秒数やテレビ局によっても違ったりするから一律にいくらとは言えないものなんだけど、今回はバチバチのキー局だから期待できるかもしれない。7月から期待してた。

・12月の支払計算書を見た結果

で、2025年12月、ついにJASRACから7月から9月の分配が記載されている支払計算書が届いた。キター! 何買おうかな? ワクワクしながら封筒を開いたところ……


_人人人人人人_
> 少なッ! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄

テレビどころか全部合わせても3639円。売れてないとは言え、前回支払いの第1四半期の分配額より少ないのはどういうことなのか。そこで分配種目をチェックしたところ、なんかテレビ放送で使われたっぽい種目がない

インタラクティブはざっくり言うとネット関係だ。で、私の場合、分配種目「演奏」の対象作品数1は地下アイドルのライブでの利用しかない。であれば、テレビでの使用料の分配入ってないことない? おいJASRAC! どないなっとんねん!!!!

・JASRACに凸

いや、テレビ局かもしれない。どっちにしても信用できない。裏があるというより、こなす仕事の物量が尋常じゃないゆえに、私ごとき小物がミスって取りこぼされていたとしても気づかれないのではないだろうか。そこでJASRACに逆凸してみた。もしもしー! 正会員の中澤ですけど!!

JASRAC「お世話になっております」


私「曲がテレビ放送されたんですけど、2025年12月分配分に記載がないように見えるんですが、念のため、テレビ放送された場合の分配種目を教えてもらえますか?」


JASRAC「分配種目は『放送』になります」


私「頭のアルファベット記号ってどんな表記になるんですか?」


JASRAC「そうですね。例えば、NHKで使用された場合『KB110』など、放送局によって異なるんですが、大体、KB○○という表記ですかね」


私「やっぱり支払われてないっぽいんですが。7月にキー局で放送されたのに支払計算書に記載がないんです!」


JASRAC「2025年7月に放送された分が、今回お送りした2025年12月分配分の支払計算書に入ってないということでよろしいですか?」


私「はい」


JASRACテレビでの使用の場合、分配額の決定は6カ月後になります。なので、2025年7月から9月のテレビ放送分は来年の3月送付される支払計算書の記載になりますね」


私「あ、そうなんですね。ありがとうございます」

──知らんかった。ビッグプロジェクトに参加するほど売れてない私は、そもそも、配信とコンサート利用でしか使用料が入ることがないので全部3カ月だと思ってた。テレビ放送は配信より3カ月遅いのか。

・テレビで使われた場合の計算

ちなみに、その事実を認識した上で改めて目を皿にして探すと、JASRACの公式サイトの「主な利用形態ごとの許諾・請求・分配の仕組み」の「放送等」の項目に書かれていた。支払われる使用料についてもここに書かれていて、「使用回数×使用時間×使用方法×放送規模=何点」として契約のお金を点数ごとに分配する形。

ってどういう意味やねん! 意味が分からなかったため計算式についても詳細を聞いてみたところ、一般的には、使用時間は1秒1点で、使用方法はメインかテーマかBGMで点数の設定が別。で、放送規模というのはテレビ局の事業収入によって1年ごとに決まるものなのだとか。

つまり、かみ砕くと、テレビ使用での使用料は「回数」「時間」「用途」「テレビ局の持ち点」がポイント。そこから割り出した点数で丼のお金を分ける形で、使用される番組が深夜かゴールデンかは関係ないらしい。へー、知らんかった。

そんなわけで、一般に公開されてる式を知っても全くピンと来ないテレビでの楽曲使用の分配額。大体いくらくらい入るのかというのさえ、ケースバイケースすぎて目安すら分からない状況だ。2025年7月にキー局で使われた私にはいくら入ってくるのか? 来年3月、もし、入ってたら報告しようかと思います。

参考リンク:JASRAC「許諾・請求・分配の仕組み(放送等)
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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