「美味しい寿司屋を見分けるネタは玉子」という話をかつて聞いたことがある。メインのマグロは寿司屋なら気合が入っていて当然だけど、玉子がウマイのは細部にこだわっている証拠という論理だ。でも、その言説が広まりすぎたのか、最近は玉子にこだわっている店も珍しくない

じゃあ、今の玉子ポジションって何だろうか。これひょっとしたらチーズ系の創作寿司なんじゃないか? いざちゃんと見たらえびチーズとか結構どこにでもあるし。そこで回転寿司チェーンのチーズ創作寿司を食べ比べてみたところ、店によってかなり違いがあることが判明した。

・くら寿司

まず、回転寿司チェーンで創作寿司と言えば『くら寿司』だと思う。寿司屋だけどうどんがウマイことは以前の記事でお伝えした通りだが、デザートにしてもプレゼントシステムにしても、アイデアで勝負する姿勢が随所に感じられるのだ。

そのアプローチのオリジナリティーが創作寿司にも出ていて、個人的な感想を述べさせてもらうと、くら寿司においてはマグロや中トロよりも創作寿司の方がメインだとすら思う。チーズ創作寿司をいくつか注文してみたところ、「あぶりチーズサーモン(210円)」「あぶりえびチーズ(210円)」などは、基本チーズソースをかけて上から炙るスタイルのようだ

また、シャリの甘さが控えめゆえに、チーズとシャリのバランスも良い。チーズ創作寿司の基準となる味と言えるだろう。


・スシロー

一方、そんなくら寿司と別の道を行く回転寿司界の雄が『スシロー』だ。スシローは素材勝負の路線。「すしに真っすぐ」というキャッチコピーからもそのプライドが感じられる。

だが、そんなスシローにもチーズ創作寿司がある。現在展開されているのは「サーモンチーズマヨ炙り(230円)」や「えびチーズマヨ炙り(170円)」だった。これらはネタの上にスライスチーズが乗せられ、マヨネーズをかけた上で炙られたスタイル

食べてみると、チーズに存在感がある分、ちょっとピザっぽい味がする。スシローはシャリにコクがあるため、チーズも強い創作系寿司はコクそのものを食べているかのような味。ある意味、くら寿司より邪道な気もしないでもないけど、伸ばせるところを妥協してない点はスシローっぽくもある。

・はま寿司

ところで、近頃、この2大チェーンに割って入る勢いの回転寿司チェーンがある。それが『はま寿司』。現場での実感を言うと、はま寿司の混み方は年々増している。特に、若い子が多いイメージがあって、高校生くらいのグループが順番待ちしてるのを1番見かける回転寿司チェーンだ

そんなはま寿司のチーズ創作寿司は、どちらかと言うとスシローに近い。ネタの上にちょっとしたスライスチーズが乗り、マヨネーズをかけて炙られた「炙りサーモンチーズマヨ」「炙りえびチーズマヨ」は共に税込198円である。

味的にもスシロー方向なんだけど、はま寿司はチーズがより厚めで存在感が強い。また、特徴的なのは醤油との組み合わせ。九州醤油や四国風ゆずぽん酢など5種類の醤油が選べるのが、創作の味と合わさることで探求したくなる。スシローとは別の楽しさがあった。

・深い

ちょっと意外だったのは価格で、一番安かったのはスシローの「えびチーズマヨ炙り」、一番高かったのもスシローで「サーモンチーズマヨ炙り」だった。その価格の狭間で高めがくら寿司、安めがはま寿司という順。そう考えると、スシローの「えびチーズマヨ炙り」はコスパが良い。

一方で味的な面を言うと、くら寿司のチーズ創作寿司もまたバランスが独自でオリジナリティーがあった。はま寿司は味の幅が広いし、それぞれ流派が違う感じがする


・食べ歩いていたら

そんなわけで他の回転寿司チェーンでもチーズ創作寿司に着目していたところ、ヤバイことになっている店を発見した。こちらは先日注文した「サーモンマヨチーズ炙り(288円)」なんですが……


チーズすぎるだろ

チーズに埋もれてサーモンが見えない。一瞬、チーズ2倍キャンペーンでもやってるのかと思ってタッチパネルを確認したが、どうやらこれで平常運転のようだ。名物として推されるわけでもなく、ひっそりとチーズ量が狂っている。なお、えびバジルチーズ炙りなど他のチーズ創作寿司においても同様の現象が発生していた。

くら寿司、スシロー、はま寿司で基本の値を知ったからこそ感じる規格外。もし、くら寿司がベジータだったら泣いてると思う。チーズ創作寿司でスカウターも爆発する戦闘力を発するその店とは『回転寿司みさき』だ。


言わずもがな、チーズの風味も圧倒的。もはやチーズ臭いと言ったっていい

そんなわけで、みさきのチーズ創作寿司に関してはなんでこうなってるのか意味不明なんだけど、ここまで振り切ったらそれはそれでアリな気がする。これも1つの個性であると言えよう。

思ったよりも深かった回転寿司のチーズ創作寿司の世界。冒頭の仮説「チーズ系創作寿司で美味しい店が分かるか」については、正直分からない。ただ、その闇の奥にはチェーンの個性が垣間見えたような気がした。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼これはくら寿司の「濃厚チェダーチーズ天にぎり(210円)」

▼奥深きチーズ創作寿司の世界