ガチな人間ドラマっていうのは、人の(ゲスな)好奇心を惹きつけるもの。ネットやテレビでいろんなリアリティーショーが公開されているが、今、SNSでじわじわと話題になっているのが2025年10月30日からスタートしたABEMA TVの『男磨きハウス』である。

「人生どん底」の男たちが共同生活と極限ミッションを通して“弱さ“と本気で向き合い、真の男へと生まれ変わる……というもの。

男性の変身企画は、女性以上に大きな変化があることが多いので、ワクワクしながら見ることにしたのだが……ある世代にとっては非常に懐かしさを感じるような内容だった

・ダメ男達を変える男磨きの合宿だが…

最近、XとかのSNSでも男性向けの「モテ理論」とか「キャリア指南」みたいなのがよく流れてくるので、今「男磨き」はコンテンツとして人気なのかもしれない。

「男磨きハウス」でメンター(指導者)となるのは、男性向け自己啓発コーチのジョージ氏。私は女性だからか、ジョージ氏のことを知らなかったのだが、メンズコーチYouTuberとしてかなり人気があるらしい。

第1回は、東京ドイツ村に100名ほどの参加者が集められるところからスタート。どうやら参加者5名を絞る最終審査らしいのだが、この選考からツッコミどころが満載であった。

集まった男性達が、興奮状態で大騒ぎをする中、ジョージ氏が登場。

「お前ら、走って来いよ!」と叫んで呼び寄せたかと思うと、生ジョージを目に興奮する参加者に対して「ふざけてるやつ、帰っていいよ」とジャブをかまし、黙らせたかと思うとこう続ける。

「今日は、本気のやつだけ、呼んでるつもり。今日は、口だけのやつ、消すつもり。要らない」

完全に新学期の体育教師か運動部の顧問のやり方である。最近のリアリティショーにはないマッチョイズムがかまされて面食らう。


・いきなり穴を掘らされる男達

そして、出された課題は「穴を掘る」というもの……! 男磨きに、穴? 

穴には意味がないらしく、なんの目的もないまま、ひたすら穴を掘らされる男達。まるで奴隷へのやり口である。

「うお〜! 俺は変わってやるんだよ〜〜〜!」などと叫びながら、100人の男達がシャベルを手に一心不乱に穴を掘る様子、画面の左下には「※男磨きのために特別に許可を得て撮影しています」の文字。シュールなことこの上ない。

こうしたリアリティショーやオーディション番組は、課題に取り組む様子を見て、視聴者が参加者に感情移入したり、応援するもの。しかし、「穴を掘る」ことには特に目的はないようだし、自分磨きのために日常生活で穴を掘ることもないので、なんともいえない気持ちで見守るしかない。



・共同生活の怪ルールと罰

そうこうして、5人のメンバーが選ばれて、10日間の男磨きハウスでの合宿がスタートする。メンバーのキャッチフレーズと名前は以下のとおり


・イキリ夢追い人 田村シュンス
・お喋り童貞陰キャ チキンスティック田中
・38歳子供部屋おじさん ヨシタカ
・非モテ東大卒の星 アンカメ
・ダメかわいい童貞デブ DAI


といった具合。ちなみに、あくまでキャッチフレーズは番組がつけたものである。どの男性も人生崖っぷちというだけあって、かなりクセが強く、基本的にみんな協調性がない。

さらに男磨きハウスの合宿には5つの掟があり


・スマホ使用禁止
・ポルノ・〇〇〇ー禁止
・整理・整頓・清潔感 維持
・嘘をつかない
・ジョージの言うことは絶対


これらの掟を破るとイエローカードが出され、2枚たまるとレッドカードに。さらにレッドカードが3枚たまると強制退場である。(ちなみに、このポルノのルールをめぐって一休さんのトンチみたいな質問が飛ぶのも見どころ)

しかし、このルールが男磨きになぜ重要なのかはあまり語られず、それゆえか、初日の夜から自己判断でルールを解釈して派手に掟を破ったうえに、嘘をついてレッドカードが出される者が出てくる始末。さらに「どう考えても問題行動だろ」というトラブルよりも、細かい忘れ物などでカードを切られるのも謎ポイントだったりする。


・フィジカルに重きを置いた課題

さらに、第2話までは、まるで軍隊のしごきのような、フィジカル重視の厳しい運動やアウトドアに関する課題が続く。ボクシングのスパーリング勝負で殴り合う、木を切り倒してキャンプファイアーをする、流れの急な沢に飛び込んで溺れかけるなどなど。

運動したことがなさそうな男性達がこんなにいきなりハードな運動をして大丈夫なのかというレベル。

おかげで、疲労と元々の性格から、参加者同士の醜い言い争いやいざこざが絶えない。男磨きとは一体なんなのか。どちらかというと、彼らが改善しなくてはならんのはフィジカル(体)よりもマインド(心)の方じゃないのか……という心配をしてしまう。

近頃のリアリティショーは参加者同士の絆が生まれたり、人間的な成長が見られて応援したくなるはずなのに。人間の醜い部分が押し出されて、イマイチ、応援したい気持ちになれない仕組みになっている気がする。

この問題を抱えた参加者同士のいざこざ、謎のハードなシゴキなどを見ていて思い出すのが、元祖リアリティショーともいえる「ガチンコ・ファイトクラブ」である。「男磨きハウス」は、もはや令和版の「ガチンコ・ファイトクラブ」なのではないかと思わされるほど……。


・第3話でようやくマインド寄りに

……と、2話目までは完全に「ガチンコファイトクラブ」の様相だったのだが、第3話の課題からは、ジョージのコーチングに始まり、ファッション改善、そしてホスト指導で有名な“軍神”からのモテ講座指南などが始まる。

ちなみに、Xで大きな話題となったのが、38歳子供部屋おじさんのヨシタカが「勝負服で来い」と言われたにも関わらず、ジャケットの下にヨレヨレのエアリズムのインナーを着てきたところ。

だが、このヨシタカもプロの手にかかれば変身する! 見かけの変化がいちばん彼らに自信を持たせていたように思うので、このファッション指南はもっとしっかり見たかった!

正直、メンバーの「男磨き」の目的がはっきりし、個々の良さが見えてくるのは3話からなので、3話から見始めてもいいのではないか……と、個人的には思ったりした。



・モヤモヤと期待と

参加者が無理難題に応えていくように思えるけど、番組の副題が「Burn your weakness(己の弱さを燃やせ)」なので、男磨きとは己の弱さに打ち克つこと……的な考えがあるのかもしれない。

しかし現状だと、彼らの成長を見守り、ファンを作るというよりは、ダメな男性同士のいざこざやダメっぷりを笑って見るような感じになっていて、ちょっと悪意を感じる部分もある。

ぶっちゃけ、自分が関わらない揉め事をはたから見るのって面白いんだけど、リアリティショーの参加者は顔を出し、自らをさらけだしているわけで、彼らの人生がモロにかかっている。もうちょっと彼らの成長が見られるような見せ方もできたのでは……と思ってしまう。

男性が変わろうとして一歩踏み出してみる、それって素晴らしいことだし、本気でやれば感化される男性たちもたくさん出てくるはずだ。

少女達の素晴らしい成長譚だった ちゃんみな プロデュースの「No No Girls」なんかを見たあとだと、こういうのはちょっと古く見えたりもするのだった。

「男磨きハウス」は全5話なので、残りは2話。

まあ、文句を言いつつ、たぶん、私は最後まで見てしまうと思うので、彼らが己の弱さに打ち勝ちイイ男になる姿を見届けたいと思う。

参考リンク:ABEMAプレスリリース
執筆:御花畑マリコ
Photo:(C)AbemaTV,Inc.

▼第1話はYouTubeでフルで見れる

▼第2話のショート版

▼第3話のショート版(ファッション指南)