
昨年、人生初の福井入りを果たした私。今年も取材で招待して頂いた。その帰りのことだ。新幹線を待っている間に、私は駅やハピリンという駅横の飲食店などがある施設を徘徊し、土産物を物色していた。
季節は夏。福井は水羊羹が有名だが、微妙に売っていない。水羊羹と言えば夏だろ? なんで無いんだよ。お店の人に聞くと、水羊羹は冬ですよと。
えっ、福井ってそういう感じ? 文化が違いすぎる。ググるとマジで福井の水ようかんは冬の名物だった。じゃあ冬に福井入りする日が来るまでお預けか……そう思っていたら、新宿高島屋が「福井冬水ようかん食べ比べフェア」を開催した。
・福井民
福井の水ようかん文化は、とても特徴的だ。県公式の観光サイトに詳しく書かれている。
なんでも、冬にこたつで食べるらしい。あんなヒヤっとしたものを? 冬に? いやまあ、暖房をきかせまくった部屋でアイスを食うのと似たようなものだろうか。
東京で水ようかんと言えば、問答無用で夏一択。都内に甘味処はごまんとあるが、冬に水ようかんをアピールする店を見つけるのは難しいように思う。
東京の羊羹シーンにおけるリーディングカンパニー、虎屋だって夏にしか水羊羹を売らないしな。
なぜ福井民は冬に水ようかんを食べるのか? 諸説あるらしいが、今回私が買った水ようかんに入っていた紙には、丁稚羊羹に関連しているとあった。
丁稚羊羹は滋賀の名物。農水省によると、地方から都市部へ奉公に出た丁稚が、その安さから帰省時に好んで食べていたとか、丁稚の土産として喜ばれたとか、こちらもまた諸説あるスイーツだ。
丁稚が帰省するのは年末なので、丁稚羊羹は冬の食べ物で、その流れをくむ福井の水ようかんも、冬の食べ物みたいな? 丁稚説は恐らくそういう感じの解釈なのだろう。
バックグラウンドに関する正確な所はよくわからないが、何にせよ福井の水ようかんは冬にしか出回らないし、メーカーも、全てかは不明だが、大手でも冬にしか作らないらしい。
・水ようかん
そして今回、2025年11月12日から18日の期間限定で新宿高島屋に登場した水ようかんは、23店舗のもの。とにかく大量だ……! ぶっちゃけどれがいいとかは全く分からないので、適当に2店舗のものを買ってきた。
最初は名前を知っていた美濃喜のやつにするつもりだったのだが、奇しくも私と名前が同じなので「えがわ」にした。
この水羊羹は恒常品で、11月から3月までの期間、週1で銘菓百選のコーナーで売られているもよう。
私は江川なので「えがわ」を選んだが、皆さんはせっかくなので、「福井冬水ようかん食べ比べフェア」の間は平時では買えない店のものを攻めるのが良いのではないかと思う。
さて、サプライズは、箱から出して最初のフィルムを剥がした時にやってきた。
_人人人人人人人人_
> すっげぇ黒糖 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
本当に羊羹なのか? 黒糖の匂いしかしないぞ。最後のフィルムを剥がしたら、切れ目が入っていた。
正しい食べ方とかはあるのだろうか。よくわからんが、とりあえず付属の木べらですくいあげてみた。このスタイル、赤福みたいだな。
ほう、けっこう硬いぞ。木べらがクコッて感じで入る。食べてみると……やっぱり黒糖だ!
一般的な羊羹は、水だろうが蒸しだろうが、小豆由来の餡の風味が強いものだと思う。しかしこいつはド黒糖! そして、水ようかんらしく、水分が豊富。
食感と味の両面で、さっぱり風味の黒糖寒天みたいな感じだ。冬に食べるスタイルも珍しく感じられるが、この味覚も予想外だ。
とてもおもしろい。私は今、福井の水ようかんと異文化交流をしている。これは、何かと合わせたりするのがいいのだろうか。それともそのままいくのだろうか。
現地民のリアルな習性はよくわからないが、とにかく興味深いものだ。たかが水ようかんで、こうも異なるとは。
もう1品は「亀寿堂」の「でっち羊かん」。
選択の理由は、こいつは大野のお店のものらしく、そして私は夏に大野に行ったから。その時は気付かなかったが、実はお店の前を通っていた。
こっちは商品名からして丁稚羊羹だが、どんな仕上がりなのだろう。密閉はされていない。持ち帰る際にひっくり返したらアウトだと思われる。
まずは硬さを確かめよう。ご覧ください。行儀は悪いが、そんなことは些事。この感じを見て欲しい。木べらが、やっぱりクコッと刺さる。
スルッとか、ヌッとか、そういう感じじゃないのだ。クコッと、独特の刺し心地がある。
しかし、こちらの味は、水羊羹らしい感じだった。ちゃんと餡子だ。小豆由来である。黒糖も感じられるが、控えめだ。
「えがわ」の黒糖がゴリゴリなのか、「亀寿堂」の黒糖が弱いのか、その辺は福井民に聞かねばわからぬ気がする。もしかしたらどちらも異端な可能性。何にせよ、バラエティが豊かなことが察せられる。
こちらの「でっち羊かん」の最大の特徴は、その瑞々しさにあるように思う。とにかく水が良く含まれている。大野と言えば御清水(おしょうず)など湧水が有名だが、土地のイメージに合致した口当たりだ。
どちらもなかなか食べやすく、1人で1度に丸ごと1箱余裕だと思う。「亀寿堂」は普通にちゅるんとさっぱりウォータリー。黒糖ストロングな「えがわ」も、ストロングではあるが軽やかに去っていくため、クドくない。
ぶっちゃけ、普通に夏に食べても合う味わいだと思うのだが、これをあえて冬に頂くのが福井の文化なわけだ。異文化体験としても、味わい的にも、とても楽しいものであった。
ところで福井民さん、水ようかん界隈の覇者みたいなのはあったりするんですか? 前にいたく感心させられた、はや川「羽二重くるみ」。あれは、例え福井内でも、抜きんでていると思うのですよ。水ようかん界隈で、そういうのがあれば教えていただきたい。
参考リンク:新宿高島屋、ふくいドットコム、農林水産省
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
江川資具











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