
現在、木下大サーカスは愛知県名古屋市の「白川公園」で公演を行なっている。3年ぶりとなる名古屋公演も大盛況のまま10月27日の千秋楽が近づいてきた。そこで今回は、木下英樹取締役のインタビュー第2弾をお届けしたい。
前回はサーカスの魅力や裏方の努力、そして「ファミリー」としての絆について語っていただいたが、今回はさらに深く「これからの木下サーカス」について伺う。観客を驚かせ、笑顔にし続けるために必要なものは何なのか……
現場と経営の狭間で揺れるリアルな声。そのひとつひとつから、サーカスを支える覚悟と未来への展望が浮かび上がってきた。
・木下英樹取締役インタビュー第2弾
1902年創立から123年。木下大サーカスは日本全国を巡りながら年間約100万人を動員する世界三大サーカスのひとつだ。空中ブランコやイリュージョンをはじめ、多彩な演目で観客を魅了し続けている。
約70名の団員が全国を転々としながら共同生活を送り、世代を超えた「ファミリー」が舞台を支えているのも大きな特徴である。
──そんなわけで前回の続きとなります。これからのサーカスの形についてお話を聞かせてください。
「このサーカスのスタイルはしばらくなくなっていかないでしょう。でも、やっぱり広い場所がないとテントは建てられないし、都市部ではビルの建設が進んで更地が減ってきている。駅前などでの公演は今後なかなか難しくなるかもしれない。
そうなるとテントのサイズをひと回り小さくすることも選択肢のひとつ。また最近は1つの場所で4カ月近く公演をすることもあります。移動をすればその分コストがかかるから、経営的にも時代に合わせた進化や改革が必要だよね」
──なるほど。では、働き方についてはどうですか?
「団員のうち、日本人パフォーマーは株式会社の社員だけど、海外アーティストは契約形態が異なりますよね。中国やロシアではサーカスは国立で公務員のように扱われて定年後も手厚い待遇があります。でも日本のサーカスは民間運営。
だからこそ、アーティストの質や地位をもっと高めたい。ヨーロッパでもアーティストは芸術家として一目置かれる存在だし、日本でもそのレベルに引き上げたいと思っています。そのためには国や政府にも文化芸術の価値を広げる活動をしないといけない」
──その通りですね。
「岡山には2022年にオープンした木下サーカス記念館があります。もともと本社があった場所のすぐ近くで、現在は旧中国銀行の支店ビルに本社を移転して、その3階に記念館を設けました。
戦前からの歴史あるポスターや過去に使われたバイクなども展示しています。これは黒字化を目的としたものではなく “形として残す” ためのもの。ちょうど120周年の節目にあたり、社長の『やると決めたらすぐ動く』という性格もあって実現しました」
──創業120年の歴史に触れることができるわけですね。
「そう、戦前のサーカスの写真はもう焼けてなくなってしまったものも多いけど、県外の方が持っている場合もあって……ある日突然 “両親が亡くなって遺品整理していたら、サーカスで働いていた頃の写真が出てきたので送ります” ということもありました」
──記念館があるとそういう機会が増えるかもしれませんね。それでは、今後の展開についても教えていただきたいのですが……
「まずは毎年1月にモナコで開かれるサーカスのオリンピック “モンテカルロ・サーカスフェスティバル” に日本を代表して出場することが目標の1つ。練習体制も20年前とは大きく変わっています。公演が終わって19時から21時ぐらいとか……
強制ではなく、体操クラブのような基礎練習が中心です。体操経験のない人はマット運動から始めて、倒立やバク転などの基礎を身につけます。経験者でもクセがある場合は、サーカスで通用する技にレベルアップするために基本に立ち返ることもあります」
──私もまさに「高岡体操クラブ」で心身共に鍛えられました。
「そうだよね。最近はダンスで世界一になった人や、チアリーディングのトップ選手、インターハイ出場経験のある陸上選手など、身体能力の高い人材が集まっています。
それと海外アーティストのブライアン(ジャグリング)の長男・ガエルは現在18歳。この間の1月にドイツで行われた “サーカス・クリスマス” だったかな……に招待されました。
これはドイツ、フランス、イタリアなどで行われる世界中の芸人が集まるクリスマスショーで、期間は2週間から1カ月ほど。ガエルはハンドバランスを披露して世界で通用する実力を示しました。彼は6〜7歳で日本にやってきて、いつも裏で練習してたよね」
──テントも練習内容もどんどん進化していますね。では、コンテナ(団員住居や売店など)についてはどうですか?
「色んなアイデアがあって、例えば売店は、今もトラックに積んで移動してクレーンで降ろすスタイルだけど、キッチンカーにすればそのまま走って設置できるから経費も抑えられる。そういう改善点はまだまだあります。
トラックの数は現在94台で昔より増えています。団員の住環境も改善していて、結婚や出産を機に、キッチン・トイレ・シャワー付きの部屋を用意することもあります」
──家族でも快適に暮らすことができますね。
「昔は “長屋” のような共同生活で、誰かがカレーを作れば匂いで皆が集まってくるような時代でした。40年前はガスボンベ式のコンロを共同で使っていたこともあります。
設備面でいえば、私が小学3年生くらいまでは汲み取り式トイレも残っていましたが、今は “完全水洗” です。トイレは1日3回以上使うので、キレイであることはストレス軽減につながります。トイレがキレイな会社の多くは繁栄をしていますね。もちろんトイレ掃除は徹底しています」
──今日は本当に勉強になりました。名古屋公演、千秋楽まで頑張ってください!
・華やかな舞台の裏側で
前後編を通じて見えてきたのは、木下英樹取締役の覚悟だった。サーカスという文化を未来へつなぐ強い使命感、そして一緒に働く仲間や観客を大切にする姿勢だ。
舞台の華やかさの裏には、練習体制の進化や住環境の改善がある。さらには「トイレがキレイな会社は繁栄する」という一見些細に思える部分にまで目をくばる細やかさがサーカスを支える大きな力になっていた。
だからこそ木下大サーカスは、これからも世代を超えて笑顔と感動を届ける存在であり続けるだろう。
──というわけで今回はここまで。くり返しになるが、名古屋公演は10月27日まで。まだの方は早めに白川公園へ。ぜひ本物のサーカスを体験してみてほしい。それではまた!
参考リンク:木下サーカス
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
砂子間正貫








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