東急線沿いに展開されている駅そばである『しぶそば』。この「しぶそば」の名前は渋谷にちなんでつけられているわけだが、実は渋谷にしぶそばはない。渋谷駅改札外にあった『本家しぶそば』が5年前に閉店したのである。

理由は渋谷駅再開発のためとは言え、あれから5年。東急東横店も解体され、あの一帯の景色も消えた。変わっていく時代。ひょっとしたら戻ってこないんじゃないかとすら思っていた……。そんな『本家しぶそば』が渋谷に復活するという。そこでオープン記念イベントに行ってみた。

・自我を持った本家しぶそば

『本家しぶそば』の新店舗は渋谷区道玄坂2-9-10。道玄坂の中腹にマークシティの下を通って246に続く飲み屋通りがあるんだけど、その道玄坂側の入口の店舗が本家しぶそばの新天地となる。

オープン記念イベントが開催される場所はその新店舗の2階。そんなわけで、やって来たのは本家しぶそば渋谷道玄坂店。もはや駅から独立している立地だ。新しい本家しぶそばは自我を持っている。

・コロッケそばの特殊さ

自我と言えば、しぶそばは店舗限定メニューが結構多いけど、渋谷道玄坂店の店舗限定商品は「いか天そば」「さばコロッケそば」「オールスターそば」「究極おかか飯」と4つあるようだ。中でもさばコロッケそばは今回特別に開発された業界初のものだそうな。そもそもさばコロッケっていうものを初めて知ったし。

イベントの説明によると、さばコロッケは和歌山県日高町の特産品で、「全国コロッケフェスティバル2019in龍ケ崎」で爆売れしたものらしい。なんでも紀州梅の梅酢を使って鯖を南蛮漬けにした後、じゃがいもで包むようにして揚げたものなのだとか。そのため食べてみると……

中心に鯖が集まっていてジューシー。出来上がりの見た目は普通のコロッケと同じだけど、味の質感は全然違う。鯖の風味も大きいけど、やはり「衣 → じゃがいも → 鯖」と層になっているためか1つ1つの素材の味が強かった。


・衝撃

さらには、魚介系の味ゆえにしぶそばのつゆとの相性がめっちゃ良い。しぶそばのつゆって甘みがありつつもかつお出汁が強く出てるけど、コロッケがそこに鯖の風味も加算する。コロッケそばはコロッケそばでも、マッチングの切り口が普通のコロッケそばと違うところに、本家しぶそばだけの味を見た。なんなら、『箱根そば』の社長も「ウマイ」って言ってた。


って箱根そばの社長いるんかい!


思わず2度見してしまった。なお、富士そばの室長もいた。そば屋の町内会みたいになってる。

さて置き、コロッケそばの元祖と言われている『箱根そば』の社長のお墨付きだから、コロッケそば好きは注目のメニューと言えるかもしれない。なお、渋谷道玄坂店のオールスターそばにはさばコロッケも入っている。オールスターは色んな店舗でやってるけど、ここのオールスターが凄そうなことは追記しておきたい。


・渋谷……なのか?

それにしても、私などが参加していいのか迷うくらいホームパーティーみたいなイベントであった。「渋谷でイベント」という言葉の緊張感を裏切るオーラに今自分がどこにいるのか分からなくなったほど。ここは本当に渋谷なのか……?

しかし、店を出ると私は確かに道玄坂にいた。パラレルワールドに行っていたような気分である。その想像を絶するアットホームさに極めてしぶそばを感じたのであった。

なお、そんな本家しぶそばのグランドオープンは2025年9月14日10時から。この5年、渋谷に何か足りないという想いを抱いていた人は本家しぶそばの帰還を祝おう。一度失われたからこそ分かるものがそこにあるはずだ。

・今回紹介した店舗の情報

店名 本家しぶそば渋谷道玄坂店
住所 東京都渋谷区道玄坂2-9-10
営業時間 平日8:00~23:00 / 土日祝9:00~22:00
定休日 無休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼現しぶそば社長の岡田さん

▼2021年頃にインタビューした山口さんが社長でなくなってることに衝撃を受けた

▼ふざけすぎたのかもしれない