
木下サーカス名古屋公演は2025年7月13日に開幕する。現在は「場越し」と呼ばれる引っ越し作業の真っ最中だ。巨大テントだけでなく団員たちの住居なども “場所が丸ごと引っ越す” から場越しと呼ばれているとかいないとか。
会場の撤収作業は北九州公演の終了直後からスタート。客席や舞台装置などをコンテナにスキマなく積み込んで約100台のトラックで次の公演地(名古屋)へと出発。そんな大サーカス団の引っ越しとは……詳しくお伝えしたい!
・サーカス団の引っ越し
前回は3カ月に1度の「場越し」のたびに訪れる出会いと別れ、そして別れを惜しんで朝まで飲み明かす「青春の引っ越し期間」についてお伝えした。サーカスの舞台裏にある “人間くささ” が少しでも伝わったなら幸いである。
だが当然のことながら、飲んでばかりいるわけではない。団員たちは公演終了直後から作業着に着替え、泥まみれになりながら、街に出現した「サーカスの景色」を丸ごとなかったことにする撤収作業に取り掛かるのだった──。
・蛍の光
最終公演終了後、テント内に『蛍の光』が大きく響き渡る中……数分前まで華やかな舞台衣装に身を包んでいた団員たちが作業着姿でステージに登場。余韻に浸る間もなく撤収作業が始まる。蛍の光は団員たちにとって作業開始の狼煙だ。
オートバイホール(直径約7メートルの鉄球)を解体するチーム、客席を解体するチーム、グリーンマット(歩行者マット)を回収するチームなど、それぞれ担当チームに分かれて撤収作業が行われていく。
「ダダダダ(電動ドライバー)」「ガシャーン(客席を回収する音)」「おーい、おろすぞー(上から機材をおろす)」と、魔法の空間はいつの間にか工事現場の雰囲気に。
女性団員も舞台メイクのままヘルメットをかぶり、客席のクッションを回収。売店(お土産ショップ)の商品等も種類ごとに分けて梱包される。次の土地ですぐ販売できるように丁寧かつスピーディーに作業は進められるのだ。
職人さながらフォークリフトを乗りこなして荷物を運搬する団員や、ユンボ(油圧ショベル)を使って鉄杭を抜く団員、地上10mの鉄柱にのぼって重たい照明機材を片手で回収する女性団員までいる。
……やってることがサーカスとほとんど変わらない。鑑賞チケットを販売したらきっとファンに喜ばれるだろう。とにかく業者に依頼するよりも勝手が分かっている団員たちで作業してしまう方がスムーズということだ。
・スピードが命
“使えない大卒” こと私の担当は、主に電気回り。大テント内の「非常口マーク(誘導灯)」と「足元誘導灯(ダンボール約3箱分)」を全部回収してから、客席下に這わせているケーブル類を鬼スピードで回収する。スピードが命。
というのも、ケーブルを先に回収しないと、客席を崩すことができないから(ケーブルを客席に結んでいるため)。テントの中は1日でほぼ片付けてしまうので、作業全体の流れを見ながら撤収作業を進めなければならない。
回収した機材やケーブルはコンテナの中にしまう。ちなみにケーブル類は音響照明、誘導灯、空調類なども含めると500本近くあるが、テキトーに放り込むのは絶対にNG……移動後の設営時に見つからないと自分が困るだけなのだ。
・電気チーム
電気チームを率いるのは、博士キャラの保坂さんと同い年の中尾さん。
広島出身の中尾さんは音響関連の専門卒で、同い年だが社歴だと2つ上。熱狂的なカープファンで、仕事もプライベート(体の洗い方とか)も効率を重視するデキる男。電気工事士やフォークリフトの免許を持っていて現在も活躍している。
同い年ってことで最初に仲良くさせてもらい、今でも付き合いのある先輩というか友人である。武井壮さんがMCを務める番組で「この人はどこでも食っていける」と中尾さんの仕事ぶりが絶賛されていて私まで誇らしかった。
それはさておき、保坂さんは照明関係のケーブル類を回収し、中尾さんは音響関係のケーブルを回収してから、今度は全員で照明やスピーカー本体を回収する。重たい機材をアルバイトスタッフの力も借りながらコンテナまで運んでいく。
同じく「客席」「フェンス」「舞台装置」などが次々に決められたコンテナへ。テント内だけでなく「トイレの車椅子用スロープ」や「入場ゲート」なども工具を使って解体され、コンテナやトラックの荷台に積まれていく。
経験を重ねるほど「設営が楽になる撤収方法」と「撤収が楽になる設営方法」が分かるようになる。作業が好きになればサーカスでの生活が楽になるだろう。サーカス退職後に建設・土木作業員になる団員も少なくない。
新人は「寅壱(老舗作業着メーカー)」を着こなすベテラン団員に憧れ、作業服や安全靴はもちろん、作業に必要な工具まで揃えてやっと1人前のオーラが出てくる。石の上にも三年なんて言葉があるが、やはり1人前になるには3年くらいかかるものだ。
・打ち上げ
そんなこんなで、テント内の作業は半日でほぼ片付いた。23時過ぎから打ち上げがスタートする。作業後の冷えたビールは最高に美味い。
寿司をたらふく食べてからジャンケン大会で盛り上がり、社長の挨拶で中締めをしたら、それぞれ好きなタイミングでコンテナハウス(自分の部屋)へと戻る。という流れなのだが……
翌日も早朝から作業が始まるので、仕事に慣れていない新人は「先輩につかまる前にこっそりとフェードアウトしたい」というのが本音。遅くまで先輩に付き合って寝不足になったら余計使い物にならなくなるし、喧嘩っ早い先輩に絡まれたらマジで終わる。
かと言って、新人がすぐに輪から抜けるのも感じが悪いので、ちょうどいい頃合いを見計らってうまく抜け出すのだ。これも共同生活ならではの悩み……かもしれない。
・イルミネーションの撤収作業
ちなみに、大テントに張り巡らされたイルミネーションは最終公演の1週間ほど前(天気の良い日)に実際にテントにのぼって回収する。夏は遠くで花火が見えたりするから最高だが、冬はマジでテンションが下がる。
そんな作業を舞台に出ていない裏方の女性団員もするのだから、身体能力も度胸も自ずと鍛えられるだろう。
・移動
さて、打ち上げ(千秋楽)の翌日は、大テントを畳むのがメイン。サーカスのシンボルであるテントを降ろす前には、地面にブルーシート等を敷いてテントを絶対に傷つけないよう小石なども全て取り除いてから慎重に作業を進める。
大テントだけでなく、テントを支える6本の大鉄柱、8本の中柱、120本の外柱もトラックに積み込む。荷物を積み終えたコンテナはクレーンで吊るしてトラックに乗せられ、次の場所へと運ばれていく。そして……
・移動日前日の夜
仕事を終えたら今度は自分たちの部屋(コンテナハウス)の整理。翌朝には部屋がそのままトラックに積まれるため、テレビや冷蔵庫が倒れないように固定し、それこそコンテナに取り付けていたテレビ用のアンテナやケーブル類も回収する。
移動日前日ということで、部屋の片付けを終わらせてから飲みに行けばいいのだが……結局、片付けは後回しで、夜中まで飲んで朝方に帰ってくる団員(とくに若手)がほとんど。
そして移動日は、住居エリアの電線や水道ホースの回収作業などをして、昼前にほとんどの団員が出発する。移動手段は車、新幹線、飛行機など……新人の頃は交通費を浮かすべく、先輩の車に乗せてもらったものだ。
・休む間もなく設営スタート
トラック約100台で住居ごと次の街へ移動する様子は圧巻。夜のうちに次場所のビジネスホテルに到着し、翌朝から設営作業がスタート……休む間もなく新天地での生活が始まる。振り返ると、場越しには職人技と共同生活のリアルが詰まっていた。
・名古屋公演は7月13日スタート
というわけで、今回はここまで。木下サーカス名古屋公演は「白川公園特設会場」で7月13日から10月27日まで開催される。お近くの方はぜひ会場に足を運んで世界最高峰のサーカス・ショーを楽しんでほしい。それではまた!
参考リンク:木下サーカス
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
▼打ち上げ時のジャンケン大会の様子です!
砂子間正貫





















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