2025年7月11日、ついにDCユニバースの幕開けとなる新作『スーパーマン』が劇場公開(日米同時公開)となる。今作は、マーベル作品の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを手掛けた、ジェームズ・ガン氏が監督・脚本を務めている。ハッキリ言うけど、その時点で面白さは保証されたようなものだ。きっと面白い!

公開に先駆けて、私(佐藤)はメディア向けの試写会に参加した。少々過剰なくらいの期待をよせて作品を観たのだが、予想通り! さすがガン監督、拍手喝采したくなるような安定感のある作品に仕上がっていた。もう、マジでおすすめです!

・ガン監督なら大丈夫

私はガン監督の作品が大好きだ。とにかくテンポが良くて、どの作品も最初から最後まで退屈するということがないからだ。

マーベル時代の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』3作はもちろん、DC移籍後の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党 集結』も、スピンオフドラマ『ピースメイカー』(シーズン1)も、全部見応えのある快作ばかり。ガーディアンズ以降のガン監督の作品しか知らないけど、それらの中でハズレの作品はないと断言できる。

監督の作品はどれも明るくてユーモアに富んでいる。そして人情味にあふれており、ホロリと涙を誘う場面も必ず用意されている。それは決して押しつけがましいものではなくて、思わず目頭がアツくなる自然な形で観る人の心をくすぐる。

作品全般を通して紡がれるメッセージも明白で、容易に理解できるものだ。余分な知識や特別な経験など一切不要。年齢を問わず理解できるシンプルなメッセージである。

とにかくどの作品も安心して観ていられる。「ガン節」とでも言おうか。ド派手なアクションと人間味あふれるエピソード、そこに笑いと涙を散りばめた活劇。それがガン節である。

今作はガン監督が手掛けると知った時から「じゃあ大丈夫」と確信していた。その上で試写会に臨んだのである。


・巧みなキャラクター使い

今作でもガン節は健在で、さらに磨きがかかっているようにさえ感じた。全編通して戦闘シーンが多く見応えはバツグン。「エンターテイメント」を地でいく迫力のある描写が畳みかけてくる。

スーパーマンはもちろんのこと、彼の戦いをサポートする「ジャスティス・ギャング」のメンバーの見せどころも満載。

たとえば、ハイテク装備を駆使して戦う「ミスター・テリフィック」の戦闘シーンはスピーディーかつダイナミックで、ある戦闘シーンの描写は爽快の一言に尽きる。少しクセのある知性派キャラで、スーパーマンとのやり取りもコミカルだ。

そしてパワーリングから光を出して、想像したものを形にする能力を持つ「グリーンランタン」は、ひねくれものでこれまたクセが強いキャラクターである。

ガン監督はクセのある人間を作り出すことが得意で、たとえばガーディアンズの「ドラッグス」しかり。ピースメイカーの「ビジランテ」しかりで、今作のグリーンランタンも少々……、いやかなりおかしな人物。

そういうクセ強キャラをスパイスにして、物語の奥行きを広げている。時にそれらのキャラが核心をついたことや、グッとくる発言をして、観る人を物語の世界へと引き込んでいく。



・魅力的な動物キャラ

それからガン監督を語る上で欠かせないのが動物のキャラクターだ。動物を使った演出も秀逸で、今作では「クリプト」と名付けられたスーパーパワーを持つ犬が奮闘する。

クリプトはやんちゃな性格にして、スーパーマンに匹敵するスーパーパワーを持っている。遊び好きであるがゆえに、時にスーパーマンをも翻弄することに。でも愛嬌たっぷりで憎めないヤツ。クリプトの存在が緊迫した場面の緊張をやわらげると共に、ハラハラとドキドキ、そして感動を誘う。


・センスあふれる音楽の使い方

私がガン監督の作品を好む最大の理由は音楽に精通していることである。ガーディアンズでは70年代のヒット曲をフィーチャーし、古き良き時代のロック・ソウルの造詣の深さを示しつつ、効果的にそれらの曲を使っていた。

ピースメイカーでは、80年代のハードロック・ヘビーメタルをフル活用。「ザ・クワイアボーイズ」「ファイアーハウス」「ハノイロックス」などのヒット曲を各話ごとに散りばめている。またドラマのオープニング映像でフィンランドのロックバンド「ウィグワム」の『Do Ya Wanna Taste It』を使用。この曲に乗せた珍妙なダンスはSNSで大きな話題となった。


とにかく音楽の選び方も使い方もセンスバツグン! 私はピースメイカーの第7話で使用されている。「モトリー・クルー」の名曲『Home Sweet Home』の流れるシーンが大好きだ。あんなに素晴らしいタイミングであのバラードを流せる監督はなかなかいない。元より好きな曲だったが、ドラマで流れてもっと好きになった。

今作でもそのセンスは爆発している。スーパーマンといえば誰もが1度は聞いたことのあるメインテーマがあまりにも有名だ。それをガン監督はめちゃくちゃ効果的に使っている。最新の映像美ともあいまって、曲のポテンシャルは最大限に引き出され、観る者を圧倒する。

「そうだ、これがスーパーマンだ!」と思わざるを得なかった。



・これからのスーパーマン

これまで漫画でも映画でも数多くのアメコミヒーローが描かれている。それらの中で、原点にして頂点といえるのがスーパーマンだ。1938年に初めてDCコミックの作品に登場し、アメコミ史上でもっとも歴史あるヒーローだ。

「完全無欠」と呼ぶにふさわしいキャラクターで、物語のなかではもちろんのこと、現実でも「希望」や「強さ」の象徴として長年愛されている。

そんなスーパーマンが今作では、冒頭からいきなり雪原で倒れているシーンから始まる。すでにティザー動画でも公開されているように、敗北して倒れている場面から物語が始まるのである。

軽く本編に触れておくと、今作のスーパーマンは強くない。「未熟」や「弱さ」が垣間見える場面が多々ある。だが、それが逆に親近感を抱かせる。「完全無欠」ではないことに妙な親しみを覚えるのである。

迷い、苦しみ、倒れる。そして立ち上がる。その姿に人間らしさを感じる。クリプトン星で生まれ、星の滅亡の際に両親の希望を託されて地球に降り立ったスーパーマン(カル=エル)は、ケント夫妻の元でクラーク・ケントとして成長していく。

その成長過程で培われた人間らしさが、彼の弱さからうかがえるのだ。強いだけのヒーローではない、弱さがあるからこそ人間らしい。これまでにスーパーマンは何度も実写映画化されているわけだが、それら中でもっとも身近に感じるヒーローなのかも。

その彼がこれからも成長していくと思うと、今までのヒーロー作品に感じたことのないような期待が芽生えてくる。


ヒーロー映画というと、作品の多さに敬遠してしまう人もいるかもしれないけど、今作を観るに当たって過去作を履修する必要は一切ない。なぜなら、新しいDCの世界はこの作品から始まるからだ。DCの未来も新しいスーパーマンもここから始まる。

「最近の映画は内容が複雑で観るのに疲れる」、そう思っている人にこそ観て頂きたい。手放しで観られるガン監督の作品世界に身を委ねて楽しんで頂きたい。個人的には続編に大いに期待している。ミスター・テリフィックとクリプトのこれからが気になって仕方がない。


タイトル:『スーパーマン』
公開:2025年7月11日 日米同時公開
配給元:ワーナー・ブラザース映画
Photo:(c) &TM DC(c)2025 WBEI

参考リンク:スーパーマン
執筆:佐藤英典

▼『スーパーマン』本予告


▼『ピースメイカー』のオープニング映像