先日、事務所の隣の部屋に呼ばれて行ったらオッサンが上下にパーカーを着て逆立ちしていた。何を言っているか分からないと思うが、私(中澤)も何が起こっているのか分からなかった。頭がどうにかなりそうなまま意味不明なネタを手伝わされたことは、佐藤英典記者の以前の記事の通りである。

ハッキリ言って面白いのかどうかもよく分からん。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ佐藤英典。そんな「ファッションの新しい地平(本人談)」の肖像を改めて見ている時ふと思った。これ、AIで動かしたらどうなるんだろう?

・佐藤英典 vs AI

自然に動くのかな? しかし、この状態の自然な動きってどういう感じになるのだろうか? そもそも逆立ち状態であることをAIは認識できるのか。もしAIが逆立ち画像を普通に立っている人として認識したとしたら、ある意味この勝負は佐藤英典の勝利と言えるだろう。何の勝負なのかは分からないけれど

そこでAdobeの生成AIソフトである「Adobe Firefly」を使って検証してみることにした。2025年3月19日現在、Adobeにログインすることで2回まで無料で動画生成することができる。

・Adobe Fireflyの使い方

ログインしてAdobe Fireflyのページを開くと、まず表示されるのはプロンプト(文章での指示)から画像や動画を生成する画面。今回は、元画像を動画にするので、入力項目左のタブで「動画」を選び、一旦プロンプトは空で右の「生成」を押す

すると、生成画面に移行するので、元となる画像を入れる。最初のフレームと最後のフレームを入れる項目があるけど、画像は1枚しかないので今回は最初のフレームだけで。


とりあえず様子見。プロンプトに「画像の人物が踊る」とだけ入力して生成してみたところ……


踊り出す佐藤英典

・人間の可能性

どうやら、AIは頭が上と判断したようだ。佐藤英典の足を手のように動かしている。テクノロジーの進化を感じると共に、人間の可能性も感じた。我らが佐藤英典がテクノロジーに勝利した瞬間である。

あたしは人が造ったものに負けたくないの──。なぜか藤崎竜先生のマンガ『PSYCHO+』の水の森雪乃がオーバーラップした。今考えると、90年代初期ジャンプでゲームをテーマにしたSFは時代を先取りしすぎである。『PSYCHO+』はゲームがカルチャーになった今こそアニメ化すべき作品だ。



・スタイリッシュ英典

失敬、ついつい佐藤英典を放ったらかしにしてしまったが、話を戻すと、AIがカメラワークまで編集しているのが気になる。ズームアウトとかなくて良い。動画が横長なのに対して縦長の画像を使っているからだろうか?


そこで調整。画像のカンバスに余白を入れて横長にした上で、プロンプトを「視点は動かない,画像の人が手足を動かす」にしたところ……

めっちゃスタイリッシュになってしまった。いや、スタイリッシュな動きをするのは良いんだけど、動き出してからスタイルが良くなって逆立ち感がゼロになるところが気になる。これは佐藤英典がテクノロジーに勝利した代償と言えるだろう。そのまま動かすことはできないだろうか?

・サブスクプラン

ただ、これ以上作る場合はサブスクプランを購入する必要がある。おすすめは「Premium」らしく、5秒の動画が500本分作れるらしい。そんなにいらん。価格も月々税込3万1680円はさすがに高い。

そこで月々税込1580円のスタンダードプランにした。こちらでも20本生成できるので十分だ。サブスクを購入する場合は用途に合ったプランを選ぶことをオススメしたい。

・プロンプト研究

さて置き、検証を進めよう。動き出すとスタイルがよくなるのは、AIが画像を「立っている人」と認識してそれに寄せるからかもしれない。そこで人ではなく人形と指示してみた結果……

プロンプト「視点は動かない,画像の人形が2秒後前に歩いてくる」


形を画像のままに留めることに成功。AI的な人と人形のラインが分かるようだ。動画の動きに関しても、ここら辺が到達点だろう。っていうか、これ以上先は考えてない。

ただ、クレジットはいっぱい残っているし、体勢変わらずにもう少し地味な動きをさせたらもっと画像が動いた感が出るかもしれない。そこで軽い気持ちでプロンプトを「視点は動かない,画像の人形が2秒後手をバタつかせる」にしてみたところ……



さ、佐藤英典ィィィイイイ!


私はサブスクプランを解約してノートPCをそっ閉じした。やったのはAIだ



・使ってみた感想

画像からビデオを生成するAIはたくさん出ているけど、現在のAdobe Fireflyはかなり直感的に操作できるように感じた。その証拠に今回初めて使ってみた私も特に問題なく使用できたし。

一方で、使い方がシンプルゆえに言葉の不自由さも感じる。そうじゃないんだよなあとなることも少なくない。ただ、それが面白さに繋がる側面もあるだろう。

そのイレギュラーさはアナログで例えると染め物の模様みたい。使ってみて本当に凄いと思ったのは、楽さよりもむしろ「デジタルな技術でそういった偶然性がある」という点であった。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼記事内では挿入できる形式の問題でGIFにしてますが、本当はもっとなめらかです。動画は以下