世間で取り沙汰されている闇バイト。ニュースでも連日報道され、その存在自体はもはや闇でもない。むしろ、今日本で一番晒されていると言っても過言ではないだろう。今さら応募する人は、よほどのアホに違いない。
そんな闇バイトの枝葉はSNSで広がりを見せているそうな。一見、裏側を覗く風のSNSの雰囲気がマッチしたのかもしれない。ん? ってことは、SNSの本場のアメリカにも闇バイトってあるんだろうか?
・日本在住のアメリカ人
そこでアメリカ人に聞いてみることにした。話を聞いたのは、ロケットニュース24の英語版soranews24の記者であるケーシーさん。日本在住のアメリカ人であるケーシーさんなら、闇バイトの存在を理解した上で、今のアメリカの状況を語ることができるはずだ。
・闇バイトの定義
ただ、定義に食い違いがあってはいけないので、念のため闇バイトへの認識をすり合わせておいた。打ち子とかサクラとかあるように昔からグレーなバイト自体は存在したけど、今、問題になっている闇バイトは、SNSを介し、強盗とか詐欺とかのガチクロ犯罪行為実行犯を仕立て上げる現代的パターンである。
・アメリカの状況
というわけで、「SNSとかネットで内容や正体を明かさず “短時間で高収入” みたいな売り文句で、応募したら違法なことに加担させられるみたいな感じ」と説明した。押し入り強盗で捕まった人がバイトなことが判明したりして社会問題になってるんですが、アメリカってそういうことあるんですか?
ケーシーさん「日本とまったく同じような闇バイト話はアメリカでそこまで聞かない。おそらくギャングは日本よりたくさん存在しているし、犯罪者の頭は、リスキーな役柄が必要な場合ギャングの部下にそうさせる。
もちろんその部下が若者(未成年でも)で、犯罪の罰の重さを理解していないまま実行している件も多いけど、まともな生活をしている一般人が巻き込まれるより、ノリでギャングに入っている人やギャングの友達がいる人が巻き込まれるって感じだな。
要するに闇バイトみたいな犯罪ならギャングがやる。そして、ギャングの人数で足りているので一般人を使う必要がない(日本と比較的に)。だから『闇バイトに気を付けよう!』より、『ギャングに入らないで!』や『ギャングの人と軽々親しく交際しないで!』みたいなPRが多いです」
・アメリカで問題になっているSNS犯罪
ガチギャングが多いから、闇バイトはあまり流行ってないっぽい。それはそれで羨ましくない状況だけど、では、SNSで募集する犯罪行為っていうのはアメリカにはないのだろうか?
ケーシーさん「いや、ある。日本の闇バイトとはちょっと違うけど、最近アメリカでは『flash mob robbery』が問題になってる。日本語訳すると、団体万引きなんだけど、万引きと言っても、コソコソ店から物を盗むわけじゃない。大勢で一気に店に入り込んで厚かましく商品を取るって感じ。
人数が多ければ多いほど止めにくく捕まえにくいから、チャットなどで『~時で~点でやるから皆集めて』みたいなメッセージを回して実行する。
しかし、日本の闇バイトみたいに黒幕が『~すれば~円を払う』のじゃなくて、flash mob robberyはどちらかというと皆自分で盗んだ物をキープする」
──山賊かよ。これぞまさしく、SNS(ソーシャル・ネットワーク・山賊)である。
・国民性の違い
そこで私が思い出したのは、Netflixのドキュメント『ヒップホップエボリューション』だ。このドキュメントでは、1977年にニューヨークで大停電が起こった際、ブロンクスで街単位の大規模強盗祭が発生するシーンがある。
「ヒーハー!」というパレードみたいなテンションで市民が押し入り強盗する様子に、「日本じゃありえないノリだなあ」と感じたものだが、犯罪行為にも国民性の違いって出るのかもしれない。
さすがアメリカと思うと同時に、flash mob robberyがもし日本で起こったとしたら、闇バイト以上に大ニュースになりそうだと感じたのであった。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.