2024年夏から発生した米不足。私(中澤)の家や職場近所のスーパーでも米の棚は空っぽになっていた。外食が高いから自炊したいのに、米がない。どれだけむしり取れば気が済むんじゃあ……。

まあ、誰かにむしり取られているわけではないのだが、都内の暮らしには多少うんざりしていた。北海道に旅立ったのは、そんな最中の話である。

・ライブツアーについて思うこと

北海道に行った理由は、私(中澤)がやっているバンド「si,irene(シー・アイリーン)」のライブのためであった。イギリスでライブしたりするsi,irene。最近は、旭川のライブハウス『モスキート』に出没してます。

ライブツアーって「地方のお客さんが遠征しないで見られる」とかお客さん目線の価値が語られることが多いけど、待ってるお客さんが多くない演者である私からしても普通に価値あるものだと思う。

普段、行かないような場所に行くこと自体に非日常感があって、インスピレーションがもらえる。そのキッカケをくれるのがツアーなのだ。

ただ、音楽で飯を食う目的でツアーしまくっていた頃は、作業になってそんな楽しみは感じられなかった。事実、ツアーで仲が悪くなることも多く、ツアーが楽しめるかどうかってのはバンドをやる上でかなり大事なことだと思う。楽しむ努力をする。メンバー全員がそういう気持ちなら楽しい。

それでお客さんが入ったらハコ側にも恩返しができてみんなハッピーだから、もちろん集客も大事。だけど第一義ではない気がする。まあ、商業としての音楽業界からはほど遠いバンドマンの戯言だけど。


・泣いた

そんなわけで、「ヤッホー元気?」と旭川のアングラライブハウス・モスキートに乗り込んで2DAYSで非日常感あふれるライブを味わった後のこと。

「最高でしたね!」と対バンのギタリストと酒を吞んでいたところ、宴もたけなわのタイミングでスッと何かを渡してくるギタリスト。こ、これは……


「ゆめぴりか」やん!!


米はゆめぴりか派である私。しかし、ここ最近、近所では売切れていた。お、お前……本当にゆめぴりかなのか!? 久しぶりじゃないか……!

日本人の主食である米。失くして初めて分かるありがたみというのはこういうことを言うのかもしれない。何気なく買っていたブランドとの再会がこんなにありがたく感じるなんて。ゆめぴりか最高!!



・なんでゆめぴりかくれたん?

そのギタリストとはBUGY CRAXONE(ブージー・クラクション)というバンドの笈川司(おいかわつかさ)さん。BUGY CRAXONEは札幌発でメジャーデビューしてからずっと活動してるロックバンドなので、ライブハウスシーンでは知られた存在。

でも、いくら北海道発でもゆめぴりかをくれるのは訳わからん。それなら怒髪天もゆめぴりかを配ることになってしまう。なんでゆめぴりかくれたんですか? っていうか、ゆめぴりかを持ち歩いてるのもおかしくないですか?


笈川司「俺、旭川の隣の比布町っていうところ出身で、ふるさと応援大使をやってるんだけど、実は比布町ってゆめぴりか発祥の地なんだよね」

──SUGEEEEEE!! あのゆめぴりかを生んだ町だったとは。日本中が比布町の影響下にあると言っても過言ではないだろう。

そして、そんな町のふるさと応援大使ということは、もはや日本中が笈川さんに応援されていると言っても過言ではないかもしれない。いや、それは過言か。

そんなこんなで後ほど、比布町にも行ってみたところ、笈川さんは「なんもないよ」って言ってたけど、山までぶわーっと開けた景色が印象的だった。スケール。


笈川さんの大らかな人柄も頷ける。山、川、笈川。そんなBUGY CRAXONEは2025年3月から春のワンマンツアーで全国を回ることが発表されている。みんなで叫ぼう。やなおんなー!

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼BUGY CRAXONE「やなおんな」ライブ