このたび2024年10月22日に、ロッテは「パイの実シリーズ」45周年を記念して、「パイの実」からチョコを抜いたものに5種類の味つけパウダーを合わせた「シャカシャカパイのみセット」を数量限定で発売した。「パイの実」ならぬ「パイのみ」である。

思い返せば5年前、40周年の時もロッテはチョコの入っていない「おおきなパイのみ」という商品を発売していた。「自社商品のアニバーサリーを祝う際にはチョコを抜く」という独特の企業体質が浮かび上がりつつあるが、ともあれ興味深くはある。

何よりかつて「おおきなパイのみ」を記事に取り上げた身として、「シャカシャカパイのみセット」をみすみす見送ることを潔しとはできない。そういうわけで筆者は同商品の実食に乗り出したのだが、待ち受けていたのは「予期せぬアクシデント」であった。

レビューに移る前に改めて説明すると、公式オンラインショップの記述によれば、「シャカシャカパイのみ」はパイ生地の食感を堪能するとともにパウダーによる味変も楽しめる「新感覚のおつまみ系パイのみ」とのことである。

同サイトにて1000セット限定で販売され、1セットの内訳は「シャカシャカパイのみ」10個と5種類のパウダー2個ずつとなっていた。ちなみに価格は送料含めて2550円で、発売日の午後の時点で販売は終了していた。

さて、重要なのはパウダーの内容だが、チーズ、ブラックペッパー、コーンポタージュ、コンソメ、たこ焼き味と多様なフレーバーが揃っている。「シャカシャカ」の名が示す通り、これらを「パイのみ」にまぶし、振って混ぜ合わせるという寸法だ。

が、しかしである。注文から待つこと数日、届いた商品を実食せんとした筆者は、まもなく上でも触れたアクシデントに見舞われた。もったいぶっても仕方ないので白状すると、シャカシャカに失敗したのである。

今、「シャカシャカに失敗した」と文字に起こしたことで内心かなりの羞恥が湧き上がっているわけだが、少々言い訳をさせてほしい。筆者とて失敗したくて失敗したわけではない。

商品に付属していた説明書きに従い、「パイのみ」の箱の中のアルミを開け、そこからパウダーを半分振りかけた。そしてアルミを閉じ、蓋をしたのち20回ほど横に振った。

その結果、失敗した。パウダーは箱の中でまざまざと偏っていた。パイには微量しか付着していなかった。この記事を読んでいる子供たちに「シャカシャカセンスを欠いた大人」の姿を見せてしまって申し訳が立たない。

説明書きの方法ではパウダーが縦に動きにくいことも影響していそうだが、何にせよ筆者には難度が高かった。ここまで難しいなら、あらかじめ法律で「シャカシャカ物取扱者」の資格が必要だと定めておいてほしかったとさえ思ったが、小言を連ねていても事態は進展しない。

そこで今回は、パウダーを直接パイに振りかけてレビューすることにした。もはや商品のコンセプトを蹂躙しているも同義だが、読者の方々にはご了承願いたい。「この手の強行策は潔しとするのか」との批判も甘んじて受け入れるつもりである。

気を取り直して、まずはチーズパウダーを試してみたところ、それまでの重い空気を打ち晴らすかのように芳醇な味わいが口の中に広がった。馴染み深く小気味良いサクサクとした食感に、新鮮かつ濃厚なチーズのテイストが見事にマッチしている。

やはり通常の「パイの実」とはまるで別物である。かといって、他のどの食べ物と似ているかと聞かれても返答に悩む。おつまみに近いが、お菓子らしさも確かに残っている。まさしく新感覚としか言いようがない。


続いてブラックペッパーを振りかけてみると、今度は打って変わって、ペッパーのひりつくような辛味と香ばしさが炸裂した。普段、甘めの「パイの実」の味つけに慣れているほど意表を突かれると同時に、「この手があったか」と唸らされるスパイシーぶりである。

「パイの実」と別物どころか、同じ「パイのみ」でもパウダーが変われば品が変わる。2種類目にして早くも振れ幅の広さを見せつけられた格好だが、3種類目のコーンポタージュ味にもまた異なる感動があった。

ひりついていた舌をなだめるような、まろやかな口当たりと優しい甘味。刺激にざわついていた味覚が一気に弛緩し、身体が温まる錯覚さえ覚える。開発者の手のひらの上でコロコロと転がされているようで、しかしそれが悔しくも心地良い。

この期に及んではもう何が来ても驚くまいと思いきや、4種類目のコンソメ味がその浅はかさをあざ笑う。パイの軽さとコンソメのコク深さのコンビネーションは凶悪で、ひたすらに中毒性が高い。そこそこ胃袋の埋まってきていた筆者の手がしばらく止まらなくなったほどだ。

極めつけに、最後のたこ焼き味である。ソースの風味の再現度がすこぶる高く、あまりパウダーをつけ過ぎるとむせそうになる。しかしそれほどに濃厚でも不思議と後を引かない。このパワフルながら計算高いパンチを受けて、ノックアウトを免れる者は希少だろう。


と、以上のレビューで、5種類のパウダーのどれもが個性と魅力に溢れていることはわかってもらえたかと思う。返す返すも惜しむらくは、上手くシャカシャカできなかった点である。

もしこの「シャカシャカパイのみ」が再販されることがあるなら、個人的には更にシャカシャカしやすいデザインを検討してほしいところだ。そして、その時は読者の方々とともにこの商品の魅力を分かち合えればなお幸いである。

あるいは次のアニバーサリーの際には、また新たにチョコを抜いた「パイのみ」が現れるのかもしれない。筆者としてはそれも大歓迎だ。お世辞を抜きに、期待して待つのみである。

参考リンク:ロッテ 公式オンラインショップ
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.