世界三大穀物として あらゆる国と地域で食されている、とうもろこし。とれたてを食べるとプリッと甘くて旨いんだよな。
──ここで突然ですが、皆さんにクイズです。とうもろこしの色といえば どんな色?
「黄色!」「白!」という答えがほとんどだと思うが……フフフッ。今回ご紹介するのは、なんと日本で初めて開発された “赤いとうもろこし” なのだ~~っ!!
・大和ルージュ
そのとうもろこしの名前は『大和ルージュ』。名前からなんとなく予想がつくかもしれないが、奈良県で2022年に発売された新種のとうもろこしなのだそう。
筆者は奈良県内の直売所へ行った際に、朝どれの大和ルージュを発見。1本あたり税込280円と直売にしては高価だったのだが、前から気になりつつもお目にかかれていなかったため、迷わず購入した。
そんな大和ルージュ。どれほど赤いのか? というと……
おぉっ、笑っちゃうぐらいに色が濃い。単純に赤っていうよりは茜色、ルージュという名前なだけあって口紅みたいなカラーだ。
この大和ルージュ、すごいのは とうもろこし本体だけではない。
なんとヒゲも、
茎の一部も、
皮の一部も、同じような茜色に染まっているのだ。
消費者は知り得ないが、ひょっとすると根っこや葉っぱまで色が付いているのかもしれないな。
・色の正体はアントシアニン
開発元のwebサイトによると、大和ルージュの一番美味しい食べ方は電子レンジ。500Wで4分加熱するだけでOKらしい。
というのも、大和ルージュの赤い色素はアントシアニンというポリフェノールの一種なのだそう。アントシアニンは水溶性のため、茹でるとせっかくの色が抜けてしまうんですって。
ってなワケで、数枚の皮を残してラップで包んだら電子レンジでチン!
(ちなみに この時筆者は何も考えずにレンジに直置きしたが、読者の皆さんには皿を敷くことをオススメする。なぜならラップから漏れた赤い液体が、レンジの中をビショビショにするから……)
驚いたのは加熱後に皮を剥いた時のこと。当然のことながら皮の中にはヒゲが残されていたのだが、
濡れてどす黒い色になってまるで人間の頭髪のよう。ヒゲまで赤いことは承知していたはずだが、突然ミニチュア貞子が目の前に現れたようで思わず「ウッ」とのけぞってしまった。
──さて、このあと筆者の頭を悩ませたのが味付け方法である。
普段ならば 温まったとうもろこしを塩水に浸け、5分ほど放置することで味付けをしている。これはニチレイがオススメする調理方法で、簡単ながら最適な塩味が付けられるので是非マネしてもらいたいテクニックだ。
しかし今回は、水に溶けやすいアントシアニンというやっかいな要素がある。せっかくならば赤い色のまま食べたい、でも塩味は付けたい。どちらも捨てがたいぞ。
──悩んだ末、塩水漬けと味付けナシを1本ずつ作ることにした。
塩水がどんどん赤く染まるのがもったいないが、仕方ない。
・まるでフルーツのような甘み
出来上がった2パターンの大和ルージュがコチラ。
色の抜け具合でわかるかもしれないが、左が塩水に浸けた方で、右が味付けナシの方だ。
塩水の方からわかる通り、赤色のとうもろこしでありながらも 大和ルージュのベースには通常と同じ黄色が隠されていた。赤紫×黄色の組み合わせが、ちょっと黒っぽく見える理由だったんだな。
もちろん芯までしっかり色が付いているが、
よく見ると粒の中身はクリーム色。不思議である。
それでは実食。塩水の方から食べてみよう。
カブッとかぶりついた瞬間に粒離れのよさに驚く。これはもしかしたら、朝どれを当日のうちに食べたことが大きいかもしれない。
そして次に……あ、あんま〜い!
以前 糖度20度のホワイトコーンを食べて感動した経験があるが、それに匹敵するほど。もはやとうもろこしっていうよりも、フルーツみたいな甘さだ。プリッと粒がはじけてジューシーな果汁があふれ出し、頭の中の彦摩呂が「畑の宝箱やぁ~」と声をあげた。
試しに鼻をつまんでも口の中の甘さに変わりない。香りで「甘いっぽい」気分になっているワケではないようだ。
続いて味付けナシを食べてみる。
塩水ほどのプリッ&ジューシーさは感じられないが、こちらも同様にコーンの甘みが口いっぱいに広がる。
──しかし、塩水の方が断然甘みが強くて美味しく感じられるのは きっと「スイカに塩をかけると甘くなる」と同じ効果なのであろう。
つまるところ、大和ルージュを電子レンジでチンして食べる人は「色が抜けてでもベストな味で食べたいか」「色を重視して素朴な甘みを楽しむか」という究極の選択をする必要があるのだ!
なお公式サイトでは、赤い色が水に溶けることを活かしてスープにしたり、お米に混ぜて炊いたりといった食べ方も提案されている。
まだまだ新しい品種だが、徐々に生産者が増えつつある大和ルージュ。こんなに美味しいのだから、全国のスーパーマーケットに並ぶ日も近いかもしれない。
参考リンク:社大和農園『大和ルージュ』、ニチレイ「とうもろこしの茹で方」
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.