現在、アラフォー世代の女性にとって懐かしい児童書のシリーズといえば、「こまったさんの料理シリーズ」と「わかったさんのおかしシリーズ」である(断言)。
料理を作る「こまったさん派」かおかし作りの「わかったさん派」か……と、人気を二分していたが、甘いもの好きの私は断然「わかったさん派」であった。
なんと、2024年9月5日にその「わかったさん」シリーズの33年ぶりの新刊「わかったさんのスイートポテト」が発売されたのだ!!!
・ロングセラー、わかったさんシリーズ
版元のあかね書房の公式サイトによると、「わかったさんのおかしシリーズ」が発売されていたのは1987年12月から1991年11月まで。83年生まれの私はまさに「わかったさん」ドンピシャ世代。
・わかったさんのクッキー
・わかったさんのシュークリーム
・わかったさんのドーナツ
・わかったさんのアップルパイ
・わかったさんのホットケーキ
・わかったさんのプリン
・わかったさんのアイスクリーム
・わかったさんのショートケーキ
・わかったさんのクレープ
・わかったさんのマドレーヌ
の全10冊が発売されているそうな。ああ、書いているだけで美味しそう。
かわいらしい絵柄に美味しそうなお菓子! 書店で母に「この本買って!」とねだって、何冊か買ってもらって、おいしそうなお菓子の絵にうっとりして何度も読んでいたのを覚えている……。
「わかったさん」の本を見ながら「お菓子を作りたい!」と言ったものの、当時の私はまだ幼く、母も忙しかったので実際に作る機会はなかったと思う。今なら分かる。火とか包丁とか子供が使うのは危ないし、親がつきっきりでないと難しいからだ。
ついでにいうと、私は不器用なので、粉をひっくり返すとかこぼすとか、何らかの事件が起きるのは容易に想像できる。
しかし、実際に作ることはできなくても、ただ「わかったさん」の絵本を読んで、できたてのドーナツやシュークリームをほおばる姿を想像するだけでも十分楽しかった。
・ひとりでお菓子が作れる大人になった
さて、時は流れ、決して上手ではないけれど、自分でお菓子作りをするようになった。ちょっとしたお菓子作りおばさんとなったところで「わかったさん」の新刊が発売されるという情報が飛び込んできたのである。懐かしさで胸がいっぱいになる。
きっと、わかったさんの絵本を読んでいなかったら、お菓子作りに憧れることはなかったような気がする……。
新刊で作られるお菓子は「スイートポテト」。「シュークリーム」や「ショートケーキ」など、子どもが作るには難易度高めのお菓子を作っていたわかったさんシリーズとしては、意外とカンタンそう?
わかったさんの新刊を読みながら「スイートポテト」を作ってみようじゃないか!
・懐かしの鍵マーク
80年代のファンシーな空気をまとったまま、2020年代に復活したわかったさん。表紙の「スイートポテト」の文字がお菓子とお芋の形になっているところもかわいい!
表紙を開くと、わかったさんが住むタウンマップが出てきた。このマップがかわいくて、憧れたなあ。こうして町のマップなんかがあるのも、想像力を刺激してくれた。
そうそう、わかったさんって、ファッションもカラフルでかわいかったんだよね……。
そして、久しぶりに絵本を読んで思い出す。わかったさんはお菓子屋さんではなく、クリーニング屋さんだったという事実。
クリーニングの配達の途中で不思議な冒険に出て、その中でお菓子作りのキーワードが出てくるという構成だった! 不思議の国のアリスみたいだな。
それにしても、イラストの書き込みが細かくて、色合いがかわいい!
この鍵のマークがお菓子作りのコツ! (子供の頃は鍵じゃなくて、なぜか歯のマークだと思っていた)
ひとしきり読み終わって、巻末に載っているレシピを見てレッツ・スイートポテト!
・シンプルな材料とレシピ
スイートポテトの材料は、さつまいも、生クリーム、砂糖、バター、卵黄とシンプル。
子ども向けの本だからか、砂糖やバターの量は控えめ。
レシピはイラストで作り方が説明されている。今は動画や写真でいくらでもレシピが見られるけど、こういうイラストならではの味があるし、イラスト描く方が大変だよねえ。
さつまいもの皮をむいてレンジでふかして、おいもを潰して……と、作り方もオーソドックス。
しかし、大人になった今も芋をつぶすときに力を入れすぎてボウルをひっくり返しそうになったり、バターを室温に戻すのを忘れたり、芋をうまく捏ねて成形できなかったり……と、子供の頃とあんまり変わっていないのだった。
これは、子供時代の不器用な私がお菓子作りをしたら大変だっただろうなあ……などと想像する。
なんとかスイートポテトの種をオーブンに入れて、出来上がりを待つ。このワクワク感がいいね。
・焼き立てのスイートポテトは…
使い終わった道具を洗っている間に、スイートポテトが焼き上がった!
ドキドキしながら取り出すと……手作り感満載で、大人が作ったというより、子どもが作ったような見た目だ。いや〜、お菓子作りなんてもう慣れたと思ってたけど、意外と難しいね!
出来上がったばかりのアツアツのスイートポテトをほおばると……。
お芋のほっくりとした甘さの中に、バターの香りが口いっぱいに広がる。とっても素朴な味だ。自分でつぶしたから、芋のつぶが沢山残ってるし、いびつな見た目も、まさに手作りって感じ。
さつまいもそのものの味わいが残った優しい味わいのスイートポテトを食べていたら……なんだか懐かしくて泣きそうになった。
手作りおやつの代表だったスイートポテトも今は本格的なレシピも沢山出回ってるし、ブランドものの芋を使った贅沢なものも売っている。だからこそ、こんな素朴で手作り感のあるスイートポテトが貴重なもののように思えるのかもしれない。
そういえば、私が通っていた幼稚園では秋になると芋掘り遠足という行事があった。運動は苦手だったけど、芋掘り遠足は毎年楽しみにしていて、とってきた芋をお母さんに焼き芋やスイートポテトにしてもらっていた。その頃の思い出が、「わかったさん」のレシピで作った優しい味わいのスイートポテトで一気に蘇る。
「わかったさん」は新シリーズとしてこれからも発売されるのかな。私と同世代の人たちは今では子どもを持つ親になった人も多いと思う。書店でもし「わかったさん」を見かけたら、ぜひお子さんといっしょに作ってみてほしい。
※この記事の画像は出版社の許可を得て掲載しております
参考リンク:あかね書房
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
▼池袋のジュンク堂書店ではなんとランキング7位に(許可を得て撮影)
▼ジュンク堂の3階ではわかったさんグッズも売ってるよ! めっちゃかわいい!
▼買ってしまった