デパ地下を巡っていると、いつどこのデパートで見ても「完売」の札が並んでいるお菓子がある。
先日、完売菓子として池袋東武の「タルティン」を紹介したが、今回紹介するのは富士見堂の「あんこ天米」というお菓子。
一見すると地味な和菓子ながら、銀座の松屋デパート、伊勢丹新宿など名だたる高級デパートで常に完売札が立っているのだ。
煎餅でアンコを挟んだだけに見えるのだが、そんなに美味いのか……? スイーツハンターとして長年気になり続けているお菓子であった。
・販売店舗は6ヶ所
富士見堂は葛飾区青砥(あおと)に本店をかまえる煎餅店。グランスタ東京、伊勢丹新宿本店、東武百貨店池袋、松屋銀座、エキュート日暮里にも店舗がある。
このうち、エキュート日暮里店に買いに行くことにした。開店時間が9時半と早いし、場所的に他の百貨店よりも競争率が低そうな気がしたからだ。
たまたま早起きして時間を持て余していたので木曜の朝9時8分にエキュート日暮里に到着。開店時間よりかなり早く着いたので余裕だと思っていたのだが……。
富士見堂の専用列に、すでに10人以上並んでいて驚愕。9時半になる頃には30〜40人ほどが並んでいた。
「あんこ天米」はひとり合計30枚までの制限付き。日暮里店ではバラ売り(189円)、6枚入(1200円)、10枚入(2000円)、15枚入(3000円)というラインナップだそう。
私の近くに並んでいた「あんこ天米」ガチ勢のマダムたちの世間話が聞こえてきたのだが「入荷数は日によって違うみたい」、「銀座松屋の行列はこんなもんじゃない」、「今日も買えるか分からない」といった情報が入ってきて不安になる。
朝9時から並んでも買えないかもしんないの? どんだけ〜〜〜!?
開店時間になったら、約5人ずつ店舗の方へ案内される。10分ほど経って私も案内されたのだが、「6枚入りを3つ、10枚入りを1つ」など、複数買いしていく人が多く、地方発送している人もいる。そして、ガチ勢マダムの予言どおり、私の2人前でバラ売りは売り切れたではないか。
なんとか10箱入を購入できて一安心!
自分の分を買い終わって、一周ぐるっと回ったら15枚入も売り切れていた。この感じだとオープンまでに並ばないと買えないと思っていて間違いなさそう……。予想以上の入手レベルの高さに衝撃を受けた。
・その味は……?
和菓子、しかも煎餅系でこの入手困難ぶり。とらやの羊羹しかり、福砂屋のカステラしかり、シンプルなものほどこだわりと美味しさを感じるが、この「あんこ天米」もそうなのだろうか。
説明によると「北海道産あずきのこしあんを挟んだ、塩気と甘さが絶妙な日持ちのするあんこ煎餅」らしい。
もう、期待値はMAXである。袋から中身を出してみると……
米の粒感がしっかり残った薄焼き煎餅に、思った以上に沢山のこしあんが挟んであって、どっしりした感じ。
日持ちを考えてか、あんこは水分量が少なく固めの独特の質感になっている。ひらひらした花みたいな形がかわいい。
ドキドキしながらひとくち食べると……。
煎餅が思った以上に塩気がきいていて、米の粒感を感じるハードな食感であることに驚く。
煎餅の香ばしさと、米の食感が前に出てくる感じ。その煎餅2枚に挟まれているからか、あんこの甘みは上品に感じられる。
よくある甘じょっぱい系スイーツの中では、かなり甘さは控えめな方だと思う。なるほど、これは唯一無二かも。
しかし、甘いもの好きの自分的にはもうちょっと甘さを感じたくもあるので……。
2つ目は、ちょっとお行儀わるいけど、煎餅を1枚はがして単体で食べて、残りの煎餅1枚とあんこを一緒に食べるという「オレオ式」の食べ方をしてみた。
これだと、塩煎餅単体の美味しさを味わえて、あんこの甘さもしっかり味わえるぞ。
たしかに美味しい。美味しいのだが……朝から並んで買うほど食べたいかと言われるとちょっと自信がないのもたしか。
・前情報なしで編集部に配ってみる
並んで買った私が食べると「並んだから美味いものに違いない」というフィルターがかかってしまう。
そこで、入手困難度を伝えずに編集部のみんなに食べてもらって感想を聞いてみた。
・Yoshio(和菓子党)
美味い! 塩っけがきいててロイズのチョコチップみたいでくせになる。
・中澤星児(グルメライター格付け首位)
美味しいんだけど、甘みがもうちょっとほしいかな。あんこが上品すぎる気がする。
・あひるねこ(酒好き)
塩気がきいてて美味いっちゃ美味いけど「あんこと煎餅を別で食わせてくれ」という気持ちが拭えない。
・古沢崇道(甘党)
美味しい! ぼくこれめっちゃ好きです。甘みが上品でいいですね〜。
・原田たかし(酒好き)
うーん、煎餅は塩気がきいてて美味しいけど、あんこの甘みが出てきて「?」となりましたね。
・佐藤パイセン(甘党)
これ美味しいね、特にせんべいが香ばしくてすごい美味い気がする。家にあったら食べるなあ。
と、評価はさまざま。みんな煎餅の美味しさを高く評価していたけど、あんこの入った甘じょっぱさに関してはハマる人はハマる……といった感じか。
ちなみに「これは並ばないと買えない入手困難品である」と伝えたところ、みんな驚いていた。
「美味しいけど、薄焼き煎餅を買ってきてあんこを挟んだら作れるのではないか……?」という意見も。ぶっちゃけちょっと分かる(スミマセン)。
・煎餅屋さんなので煎餅がうまい
いちおう、比較のためにしょっぱい系の煎餅も買って食べたのだが……。
個人的には「あんこ天米」よりもしょっぱい系の煎餅の上品な美味さに驚いた。全体的に味が濃すぎず、米の持つうまみや穀物の香ばしさを生かした味が多いのだ。あんこ天米の外側の煎餅も、米粒が生かされてるもんね。
特に美味しかったのは「黒米揚げ」という希少な黒米を使ったおせんべい。黒米ならではの香ばしさと、あっさりとした醤油味で、素材を生かした美味しさ。ガリガリしているかと思いきや、軽さを感じさせる食感。もう一度食べたい……と思ったのは実はこっちだった。
お店では「あんこ天米」単体だと売り切れているけど「あんこ天米」と他の煎餅がミックスされた詰め合わせなら残っている場合も多い。富士見堂の煎餅そのものが美味しいので、個人的には詰め合わせを推したい!
というわけで、圧倒的人気の「あんこ天米」がもし買えなくても、他の煎餅を食べてみてほしい。ちなみに、公式サイトで販売日時を予告して「あんこ天米」の通販も行っているので興味のある人はチェックを!
参考リンク:富士見堂
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
▼希少品! お土産などでもらったら味わっていただくべし!