2024年9月4日からスシローが全ての寿司を赤シャリで提供するフェアを開始した。16日までなのでもうすぐで終了するが、奇しくも9月11日から回転寿司みさき も赤シャリ関連のキャンペーンを始めた。
スシローの赤シャリは初めての試みではなく、過去にも期間限定で実施したことのあるものだ。対するみさき は、普段から提供している赤シャリをグレードアップさせたものらしい。
期間が被るタイミングでの赤シャリ系フェア。回転寿司的に赤シャリなシーズンなのだろうか? よくわからないが、せっかくなので両方を食べ比べてみることに。
・赤シャリ
実は、私は赤シャリというものを食べたことが無い。みさきのHPを見る限り、赤酢を使用しているから赤く、これは江戸前寿司のスタイルなもよう。
これまで積極的に食べようとしなかったのは、酢飯の酢でそんなに味も変わらんやろ……的な考えがひっそりと脳内にあったからだ。
醤油の種類で味はだいぶ変わるし、ワサビの質でも変わる。シャリの握り具合も重要だと思う。しかし酢飯に使われた酢の種類による差は、さすがに素人には判別つかんやろ……と。
そもそも酢飯は、言うほど酢の主張が強くないではないか。ビチャビチャになるほど酢を使うわけでもなく、元から酢の主張はささやかだ。白酢が赤酢になったところで、わかる気がしない。
・スシロー
まあ、最終的な判断は食べてから下そうと思うが。
寿司選びの基準は、回転寿司みさきで行われている赤シャリフェアの対象メニューと同じか近しいネタであること。食べ比べる予定なので。
そういうわけで、マグロの赤身、中トロ、大トロ、炙り、軍艦。その他でカツオとエビ、イカだ。まずはこの赤身をめくってシャリをチェックしよう。
本当に赤いな。思っていたより赤い。
食べてみると……やはりスシローのマグロの赤身は美味い。しかし、白シャリとの違いについてはよくわからない。マジでなんもわからん。
まず醤油が来て、しっかりしているマグロの味が来て、それで終わりだ。ほらな? ここは、シャリだけ食ってみる必要があるか。
他の寿司はネタの風味がシャリに移ってそうなので、最も影響が低そうなエビを引っぺがし、シャリだけ食べてみることに。醤油も無しだ。
あぁ~、なるほど。これならわかる。最後にフワッと酒っぽい後味がする。酒粕みたいな感じだ。あと甘い気がするぞ。まあでも甘みはだいぶ仄かなので、特徴としては酒っぽさがメインな気がする。
風味が強い寿司ではよくわからないのではないか? こうも稀薄では、言うほど違いは出ないだろう。マグロシリーズでは全てその予想通りの感想だった。
カツオもネギと生姜がバチバチなので、寿司としてはいつも通りにしっかり美味いが、赤シャリゆえの風味的なものは、私には判別できなかった。
しかしイカを食った時に気付きがあった。お……? マグロやカツオよりも、酒フレーバーが強く感じられる気がするぞ!?
もしやこれは何を食っても稀薄なのではなく、魚との相性の影響もあるのではないか……? 大前提として、赤シャリ特有のフレーバーを強く感じるには、淡白なネタが良いだろう。
ということで新たにオーダーしたのが、こちらの鯛シリーズと えんがわ だ。
まずは「匠の鯛づくし3貫盛り」。だが、これはゴマ油やポン酢、海苔などのフレーバーが圧倒的で、赤シャリは消え去っていた。もう創作料理的な領域に入ってるな。
そして えんがわ も、大葉フレーバーが圧倒的すぎた。大葉抜きで、前に東京駅で買った伯養軒の駅弁のプリップリでジュワジュワなえんがわみたいなクオリティだったら違ったかもしれない。
しかし、ノーマルの真鯛で新展開に突入した……!
真鯛のコリュコリュした食感とほのかに甘く淡白な味わいに、酒粕チックなフレーバーがめちゃくちゃよく合うぞ! これは今までスシローで食った鯛の中で一番美味いかもしれない。
なんだろう、この圧倒的な相性の良さは。そういえば真鯛は酒蒸しとかもあるからな。酒と特に相性のいい魚ほど、赤シャリで輝くのではないか? マグロもカツオも全部美味かったが、しかし赤シャリとセットで食ってこその良さという点では、真鯛がぶっちぎっている説を提唱したい。
・みさき
こうしてスシローで初の赤シャリ体験をし、多少の学びを得た私は、同時期に赤シャリ系フェアを始めた回転寿司みさき へとやってきた。まずは、赤シャリそのもののクオリティをスシローと比較してみよう。
最初に頼んだのはマグロだ。全てが1貫ずつ入ったセットがあったので、それをオーダー。
これが みさき の赤シャリ。色的にはスシローと変わらないと思う。
食べてみると、やはりよくわからない。マグロがとても美味いことは確かで、トロ系はスシローより美味い気がする。しかし赤酢の存在感はとても稀薄だ。
スシロー同様にカツオも頼んでみたが、やはりカツオは生姜フレーバーが酢飯に勝る。
しかしこれは当然にも思える。なぜなら、みさきはシャリのサイズがスシローより一回り小さいからだ。物理的に小さいので、主張はより控えめとなる。
しかも魚のサイズはスシローと変わらないか、ものによってはスシローよりデカいのだ。これにより、さらに酢飯の影響力は減少する。
そこでスシローには無いが、みさきにはある最終兵器「くえ昆布〆」をオーダー! 真鯛同様に、クエも赤シャリとの相性がいい気がするのだ。
食べた結果……クエうめぇぇぇえええ! コリュコリュした食感と、明確に特徴的な味は無いままにただ旨味が滲み出てくる。美味い白身魚ってこうだよなぁ!
しかし、スシローの赤シャリVerの真鯛で感じられたような、赤酢だからこそのフレーバーは感じられない。おかしい。こういう旨味で勝負する白身魚なら、もっと酒粕っぽい後味が感じられるものではないのか?
いや待て。ここでふと思い立ち、赤シャリだけ食べてみたところ、みさきの赤シャリが、スシローよりだいぶマイルドなことに気付いた。
スシローは酒粕フレーバーが第1の特徴としてあり、次いで甘さがあった。対して みさきの赤シャリは、酒粕フレーバーが弱く、第1の特徴としては甘さがあると思うのだ。
しかしその甘さの程度はスシローと同じ。ゆえに赤シャリであっても寿司ネタとの相性の良し悪しが表に出てこない。どのネタと合わせても、みさきの赤シャリは主張してこないように感じられる。
おそらく白酢版を作って食べ比べないと、みさきの赤シャリ特有のクセのようなものに気付くのは困難だろう。赤酢にこだわっているのに、この主張の弱さはなぜだ? しばし考えて、私なりに行きついた答えはこうだ。
スシローは特別なフェアで短期間しか赤シャリを使わない。だからフェアの意義として何らかの “赤シャリらしさ” を一般人に気付かせる必要があるのではないか。そこで強めの酒粕フレーバーを用い、結果として酒粕フレーバーと相性のいい種類の魚がより美味く感じられるが、特に相性がいいわけではない魚は普通な感じとなる。
平時から赤シャリがデフォな みさき は、赤シャリと寿司ネタに相性の良し悪しが出てしまっては困る。必然的に何にでも合う赤シャリでなければならず、そんなに酒粕フレーバーも漂わせていないのではないか?
スシローと回転寿司みさきで人生初の赤シャリの寿司を食べていきついた感想は、そんなところだ。赤シャリの味がどんなものか気になって食べ比べたのだが、思いのほか奥深そうな酢飯の世界が垣間見えた気がした。
参考リンク:スシロー、回転寿司みさき
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
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