さすが大阪としか言いようがない。そんな感銘を受けたのは実家に帰省してゴロゴロしていた時にオカンが話しだした噂話であった。なんでも大阪の天満に酒が1円の居酒屋があるという

天満と言えば昭和のごった煮感が残る下町。激安居酒屋がいかにもありそうだ。しかし、いくら何でも安すぎる。オカンも行ったことはないらしいので、私(中澤)が派遣されることとなった。ベッドのまわりに~♪ 何もかも脱ぎ散らして~♪

・あふれ出す大阪オーラ

さて、天満と言ってもなかなか広い。天満橋商店街は日本一長いし、商店街の周りの路地裏にも居酒屋がひしめいている。なんとなく出発してしまったが、なんとなくで見つかるものではなさそうだ。着いてからスマホで検索してみるか。と思いきや……


絶対にこれだろ!

駅の出口の真ん前に看板だらけのインパクトの塊みたいな居酒屋があった。見るまでもなく一番前の看板に「月火水木金 日本酒1円」と書かれている。大阪の中でもさすが天満だなあ。

・猛アピールする階段

看板の森の奥には地下への階段が続いている。その階段にも「たぶん日本一安いです」とアピールの文字が。

さらに壁には所せましとメニューが貼られているのだが、「死んでる生エビ2匹丸焼(299円)」など、ところどころ記載がキツめだ。メニューに大阪流の外連味(けれんみ)みたいなものが感じられる。

さらには、不穏なメニューも見え隠れしていて、ディープな雰囲気が醸し出されていた。ちなみに、今回は1円居酒屋の正体を調査に来ているため昆虫は食べないことを先に宣言しておく。

・まずは1円日本酒を注文

入店してみると、中は庶民的な居酒屋で注文はスマホで行う形。机にある印刷されたメニュー表には1円の日本酒の記載はなかったが、スマホの注文メニューを見ると「1円日本酒」というメニューがあり確かに小計も税込1円だ。


さすがにおちょこ1杯だろうと思いきや、注文してみたところとっくりで出てきた。普通に一合ある。スゲエ!

こういった爆安さを売りにしている場合、1杯目だけ1円とかのパターンがあると思う。そこで店員さんに確認してみたところ、1円日本酒は何回注文しても1円なのだという。とっくり5本飲んでも5円。ヤベエ……!!

・激安メニューは他にもある

なんなら、サントリー生ビールが1杯目は税込219円(2杯目以降は税込257円)だったり、しいたけ煮が税込10円だったり、税込109円でシンプルPIZZAというメニューがあったり、1円日本酒だけが安いわけではない。インフレどこいった!?


「おでん盛合せ(玉子無)」と日本酒のセットでも税込110円なのは、日本経済の支配から卒業しちゃってる。居酒屋界の尾崎豊とはこの店のことである

・1円で帰れるか

さて、ここら辺で複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れようじゃないか。ここまで読んで読者が最も気になるのは席料の有無かと思う。っていうか、こんなもん席料ないとおかしいよな。


席料は1人につき税込303円。お通しなどはない。ただ、その席料の説明を見ると、1つ気になることがあった


説明にはこう書かれているのである。「椅子席はテーブル料275円いただきます」と。じゃあ、椅子席じゃない場合はどうなるの?


実は、この店には立ち呑み席もあるのだ。そこでその謎について店員さんに聞いてみたところ……

店員さん「立ち呑み席だとテーブル料はないです。立ち呑みで1円日本酒とおでんを食べて110円払って帰るお客様もいますよ!」


──例えば、立ち呑みで1円日本酒だけ飲んで1円で帰ってもいいんですか?


店員さん「全然いいですよ! ちなみに、そこの立ち呑み席はMBS毎日放送の番組『ごぶごぶ』で浜ちゃん(ダウンタウン浜田雅功さん)が呑んだ伝説の席になってます!!」

──というわけで、席料はあるけど払うかどうか選べる。つまり、やろうと思ったらガチで1円とか11円とかの支払いで帰ることもできるわけだ。しかも、店的にはそれも歓迎であるらしい。

・10ベロも可

衝撃度の高い噂ほど実際に行ってみると肩透かしを食らうことが多いけど、行ってみてさらに衝撃を受けたこの店。さすが天満、ディープ大阪だ。

また、安いだけではなく、ちゃんとウマかったのもポイントが高い。おでんとかしいたけ煮とか、出汁が染み染みで110円とか11円で優勝できる。せんべろどころの騒ぎじゃねえ。時代は100ベロ……いや、10ベロなのかもしれない。

・今回紹介した店舗の情報

店名 中トロと豚足
住所 大阪府大阪市北区錦町3-12
営業時間 12:00~26:00
定休日 不定休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.