先日「ものもらい」になった。よく知られるとおり、まぶたの分泌腺に細菌が感染して起こる身近な炎症で、腫れやかゆみや痛みを引き起こす。

原因となる菌はありふれたもので、どこにでも存在する。ゆえに、思い当たることもなく気づいたら発症していた……ということが多いと思うのだが、「こんなことってある?」と思った出来事を聞いていただきたい。

なお、写真などはないが “虫が死ぬほど嫌い” という方は閲覧注意だ。


・目にはっきりと感じた衝撃

その日、筆者は意気揚々とコンビニに向かっていた。ドアに手をかけて店内に入ろうとしたその瞬間、右目から「バチン!」と音がした。正確には「音がしたような」衝撃を眼球に感じ、その場で動けなくなった。

羽虫の衝突だと思った。小学校の運動会で、だらしなく口を開けてグラウンドを走っていたらテントウムシが口に飛び込んできた経験がある。ちょうど舌の上に着地したため、噛んだり飲み込んだりという悲劇には至らなかったのだが、「この小さな身体のどこに!?」と思うほどの鮮烈な苦みを覚えている。

ともかく目が痛い。1mmとか2mmの小さな虫が正面から飛び込んできて、目の中にダイブしてしまったのだと確信した。慌ててコンタクトレンズを外し、きびすを返した。華麗な180度ターンで、コンビニ店内にいた人は目を見張ったかもしれない。

自宅に駆け戻り、洗面所で両手に水を汲んで目を洗った。怖すぎて鏡は見られなかった。グロテスクな光景が目に浮かんだからだ。

もし眼球のプヨプヨした部分に虫が張りついていたら……涙の膜で出られなくなっていたら……もしそれが生きていたら……どうやって除去したらいいのかわからない! 自分で出すのは怖いが、眼科に行くのはもっと怖い。ここは平和的に水道水で流れ出て欲しい……!

おとなしく流れ出てくれたら、この痛みは不問に付す! 生きていたら外に解放してあげてもいい。友好的にいこうじゃないか。

何度も目を洗う。しかしいっこうに痛みは取れない。それどころか水が染みるような新たな痛みさえ湧いてくる。

膠着状態だ。このままではラチがあかない。現物を確認するしかない……筆者は意を決して鏡を見た。

しかし、予想に反して目の中に異物はなかった。それどころか、充血も腫れも傷もなく、少しの異常も確認できなかった。

次に考えたのは「セミのオシッコ」のような液体が目に飛び込んできたことだった。あるいは化学物質散布などのテロに遭ったのだろうか……それくらい「目に何かがぶつかった」という物理的な衝撃がはっきりしていたのだ。

結果的に、いくら洗い流しても痛みが軽減しなかったことからセミのオシッコ説は消え、後に下まぶたの裏に小さな突起物を見つけて「ものもらい」だという結論に達した。


・「ものもらい」の誕生

筆者は「ものもらい」がこの世に生まれ出る瞬間を感知してしまったのだろうか? それとも、よくあることなのだろうか?

ちくしょう、痛い。1mmにも満たないデキモノなのに、チクチク、ズキズキと執拗にダメージを与えてくる。

くしくもこの数日前、車に乗り損ねて座席から落下(キャブオーバー車なので座席が高い)し、右半身を痛めた。右側ばかり不調が続いて、オカルティックな何かだろうか。怖い……

一般的には疲労、睡眠不足、ストレスなどで抵抗力が低下したときになるそうなので、みなさんは身体を大事にして欲しい。そして一部は市販薬で治らず重症化するケースもあるとのこと。たかが「ものもらい」と軽視せず眼科を受診して欲しい。


イラスト・執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.