おおむね1000円台の格安イヤホンを購入して、その音質を比較するこの企画。初の読者おすすめ製品のご紹介である。推薦者の方によるとその製品は1000円以下でハイレゾ対応とのこと。つまりダイソーの550円に匹敵するコスパを実現していることになる。

街の量販店だと800円台で手に入るとお教え頂いたのだが、あいにく探しに行く時間がなかったためAmazonで税込1298円(購入時)のものを購入している。

さて、実際に音を聞いてみると……、これがかなり良い! 過去に紹介した製品と比較したのだが、1回で良し悪しを決めかねて、本企画初の延長戦に突入してしまった!

・再生周波数帯域広すぎ!

この製品のメーカー「ナガオカ」は宝石の精密加工機器の会社で、ダイヤモンドのレコード針のメーカーとして世界的にその名を知られている。関連会社「ナガオカトレーディング」でオーディオ・ビジュアルの関連アクセサリーの製造販売を行っているのだ。

今回紹介する「ナガオカ ハイレゾ音源対応イヤホン P908IB」は2019年7月に販売を開始しており、現在も購入可能なロングセラー製品である。


製品の最大の特徴は再生周波数帯域の広さだ。一般的に人の耳は20~2万ヘルツまで聞こえるとされており、ハイレゾの認定基準は4万ヘルツとされている。


製品仕様によると、このイヤホンは5~8万ヘルツとされている。ずば抜けて帯域が広い。


参考までに現在(2024年6月)の本企画のランキング1位と2位の2製品(JVCケンウッド「HA-FX6-T カナル型イヤホン」、セブンイレブン(JVCケンウッド)「HA-FX711F-B」)の帯域をたしかめてみると、HA-FX6-Tは20~2万ヘルツ、HA-FX711F-Bは10~2万3000ヘルツだった。このイヤホンは、2製品の4倍の広さを誇っているのである。


ハイレゾ対応のダイソー(モデル7301)でさえ、4万ヘルツまでだったのに、その倍、とんでもねえ製品だ!


だが、周波数帯域が広いからといって、いい音がするとは限らない。要はバランスなのである。野球で例えるなら、170キロを投げられる投手がいたとしても、そのコントロールがめちゃくちゃなら良い投手とは言えない

猛スピードで誰もキャッチできないなら、試合には出られない。極端にいえばそれと同じだ。



・イヤーピースが……

さて、箱には本体とイヤーピース(S・M・L)が入っている。いたってシンプルな構成。


密閉ダイナミック型で、イヤホンそのものは小ぶりである。


イヤーピースは硬めで、着け心地はイマイチかなあ。個人的には、前回のソニーのイヤーピースが良かった。収まりがよくてなおかつ抜けにくく、耳の障りも良かったな。


・聞き比べ

今回の検証に使用した曲は、ジャニス・ジョップリンの「Move Over」である。構成がシンプルで音を聞き分けやすいものとして、この曲を選んだ。

まずは低価格ながらも圧倒的なパフォーマンスを実現している、JVCケンウッドの「HA-FX6-T カナル型イヤホン」で聞いてみたいと思う。


この曲は大部分が、ギターとジャニスのボーカルのユニゾンで構成されている。曲が進むにつれて、他の楽器がバッキングに加わってダイナミックに展開していく、ロックのスタンダードだ。

HA-FX6-Tはとにかくバランス重視のイヤホンなので、この手の派手な曲調にはふさわしくないかもしれない。それでもキレイに音を分離して、すべての楽器をちょうど良い距離感で聞かせてくれる。小箱のライブハウスの真ん中に立って、演奏を聞いている気分だ。



続いて、挑戦者のナガオカP908IBでも聞いてみよう。


再生すると、まず耳についたのが高音だ。曲はじめのスネアの打撃音が、コーン! と頭の上を抜けていく。続くジャニスとギターのユニゾンもまた、心地よく突き抜けて響く。「このギター、こんなにクリアな音だったのか!」と聞こえ方の違いに驚くほどだ。

だが、鮮烈な高音と対照的に低音の鳴りが心もとない。音幅が高い方に偏っている気がする。う~ん、これは好みの問題なのだろうか? 音抜けの良さは否定できないけど、フワフワ浮ついている気もするし~……

どっちが良いと決めかねる! ってことで、サドンデス。延長戦に突入だ!


・延長戦

聞き比べで迷った場合は、自分の好きな曲を聞くとわかりやすい。ってことで、次の曲はジャズピアニスト、オスカー・ピーターソンの「You Look Good To Me」

この曲はイントロで弓弾きのウッドベースとトライアングルをバッキングに、ささやくようなピアノの音色で始まる。繊細な演奏なので、音質を聞き比べるのにふさわしいと思い、コレを選んだ。まずはHA-FX6-T。


豊かなベースの低音と、拍子頭でチーン! と鳴るトライアングル。低音・高音同時に鳴っても、きっちりキレイに聞き分けられる。その間を流れるピアノの旋律。何かが飛び抜けて良いわけではないけど、必要なものを必要なだけ届けている。そんな印象だ。


続いて、ナガオカP908IBでも聞いてみると……。


延長戦の結果は即出た。HA-FX6-Tの勝利だ。というのは、ナガオカの方は弓弾きのベースの音が浮ついている。本来、全体を包むようなズ~~ンと低音が響くはずだが、音の底が浅い。そのため高音が散っているように聞こえる。

料理でいえば、良い食材を使っているのに出汁がきいてなくて、味にまとまりがないといったところだろうか。高い食材をいかすには、土台の味がしっかりしていないとね。豊かな低音あってこそ、高音もいきるはず



とはいえ、このイヤホンには秘められたポテンシャルがある。というのも、イヤーピースを変えたら、各段に良くなる気がするからだ。付属のイヤーピースではイヤホンの本領を発揮できていない。モノを選んで付け替えたら、音質が大化けする気もするぞ。

そんな期待も踏まえて、順位は以下に変更する。


1.JVCケンウッド「HA-FX6-T カナル型イヤホン 税込821円
2.セブンイレブン(JVCケンウッド)「HA-FX711F-B 税込1207円
3.ナガオカ「ハイレゾ音源対応イヤホン P908IB 税込1298円


このランクは随時更新していきたいと思う。皆さんの音楽ライフの参考になれば幸いである。


参考リンク:ナガオカAmazon
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24