バスで街をめぐるようになってから、街にひっそりとたたずむ歴史的な建造物や遺跡(史跡)に関心を持つようになったんですよね。その場所に関する情報や解説を読むと、一般的に知られている街のイメージと異なる側面を見出すのが楽しいんですね。どうも、こんにちは! 佐藤です。

今回は渋谷駅と東急東横線代官山駅を循環する「東急トランセ」に乗って、街をぶらり循環したいと思います。さて、どんな景色に出会えるのかな? 予告しておくと、今回は公園多めです。では、さっそく行ってみましょう。レッツゴー!

・同じ場所で2回停車するナゾルート

東急トランセは、循環型のコミュニティバスとしてはかなり歴史が古いです。1998年に東急バスの子会社として「株式会社東急トランセ」が設立され、同年代官山循環線として運行を開始しました。ちなみに会社は東急バスに吸収合併されましたが、東急トランセという名称は代官山循環線に継承されています。

路線が少々特徴的でして、青葉台2丁目でぐるっと一周してるんですよね。「伊太利屋本社」の停留所を2度通過することになります。なんでこんな経路をたどるんでしょうかね? 理由は現地に行ってわかりました。それについては後ほど……。


さて、どこから乗るのかな? 渋谷駅に来ましたけど、そもそも渋谷駅は複雑ですし、バスの路線が多すぎて、どこがとこやらサッパリですね


Appleの地図アプリを見ると、乗り場はこの辺らしいんですけど~。これは西口のバスターミナルの方かな?


案内版を見てみると、6番乗り場ですかね。数が多くて参っちゃうなあ……。


お! トランセの乗り場6番は現在地のすぐそば!! 目の前やないかい!


あ、ここにあった。気づかなかったぞ。案内版のすぐ近くで助かったよ。



もし、東急トランセを利用の場合は、商業施設「渋谷フクラス」を目指してください。フクラスの入口前に案内版があり、6番乗り場は真横ですので。

時刻表を見ると、平日昼間はだいたい20分置きに走っていますね。都心は本数が多くて助かります。


来ましたね。えんじ色の車体がラグジュアリーさを演出しています。車両はお馴染みの日野のポンチョですね。もはやポンチョなくして、日本のコミュニティバスは語れませんな。


運賃は1回乗車大人160円(ICカード157円)、子ども(12歳未満)は80円(ICカード79円)です。無事に乗り場にたどり着き、乗車できました。さあ、行きましょう、出発進行~!



・ナゾは解けた!

車窓からJR渋谷駅を見ると、ずいぶん小さくなってしまった気がしますね。再開発が進んで新しくなるのは良いけど、昔の面影がなくなるのは、ちょっと寂しい……


さて、1回目の伊太利屋本社です。一旦通過しますね。


青葉台ニ丁目周辺をぐるりと回ったところで、再び伊太利屋本社に向かう途中で、ここを2回通る理由に気づきました

地図で黄色く囲った西郷山公園東の交差点、ここ橋になってるんですよね。立体交差になっていて、1周目で下を通り、2周目で橋の上を通るルートになっているんです。橋があるから2回通ることになるんですね。


2回目の伊太利屋本社で降りて、橋を見に行きたいと思います。


そういえば、ここの停留所には経路確認の貼り紙がありました。これは運転手さんが間違えないように、注意を促すものですね。バス停上部には「経路注意!! スターフを確認」とも書かれています。


スターフとは「運行指示書」と言われているものですね。ここで経路を間違えると、もう1周することになってしまいますからね。



降りて少し歩いたところに伊太利屋本社がありました。この伊太利屋はファッションブランドで、カプリチョーザの会社(株式会社 伊太利亜飯店 華婦里蝶座)ではないですよ。そういいながら、私は混同してましたが……。


来ました、西郷橋はここですね。


先ほどこの下を通って、2回目の伊太利屋本社の停留所に向かったわけです。なぜ2回同じ停留所に停まるのか? そのナゾが解決してスッキリしました!



・西郷山公園と菅刈公園

せっかくなので、西郷山公園を散策してみましょう。山というには、少々低い感じがしますけどね。


敷地にある記念碑を見ると、ここが「西郷山公園」と呼ばれる理由が記してありました。この付近は、西郷隆盛の弟の従道(つぐみち)が明治のはじめに入手した場所なんだそうです。帰郷した隆盛の再起を願って手に入れ、隆盛没後に別邸を造ったそうです。


従道が造った回遊式庭園は「名園」と呼ばれるほど立派なものだったそうです。いつしか西郷家にちなんで、ここは「西郷山」と呼ばれるようになったのだとか。目黒区と鹿児島県をつなぐ架け橋、それがこの公園なんですね。


すぐ隣に「菅刈公園」がありますので、そちらも行ってみましょう。下りの階段が急! 西郷山はずっと高かったみたいです。低い山なんて思ってすみませんでした!


ここの公園もまた、西郷山と同じく古い歴史があります。江戸時代にこの辺に豊後の国(大分の一部)の岡藩の屋敷があり、回遊式の大名庭園としてその名を知られていたそうです。


現在は一部庭園を復元し、その一角に和館を設けています。和館の和室は有料利用可能なのだとか。お茶会や句会などで利用されているそうですよ。



・目黒天空庭園

2カ所続けて公園に行きましたが、今日はさらに公園に行きますよ! 次の公園へGO! ここから少しバスの路線から外れます。

菅刈公園の南には目黒川が流れていて、その先に「スターバックス リザーブロースタリー東京」があります。


ここがオープンしたのは2019年2月でした。オープン初日に訪ねたら、1000人待ちで入店までに3時間かかったんだっけなあ。あれから5年も経ちましたから、今ではそれほど混んでいませんね。週末はわからないですけど。

ここの入口のロゴがやたら生々しかったと記憶しているのですが、久々に見るとやっぱり生々しかったです……。



目的地に向けて、目黒川を北上していきます。サクラのシーズンはきっとこの辺もごった返していたんでしょうね。今年は寒暖差の影響で、キレイに満開とはいきませんでしたが。


そろそろ目的地が見えてくるはず。


到着しました。これ、なんだかわかりますか? 公園ですよ、信じられないでしょ?


GoogleMapsの「イマーシブビュー」を見ると、こんな感じです。まるで闘技場のように見えるコレが公園なんですよね


ここは「目黒天空庭園」です。首都高速道路大橋ジャンクションの屋上を造成して公園にしているんですよ。公園の入口にしては物々しいでしょ。本当に闘技場みたいだ。


「絶対に負けられない戦いがある……」みたいな雰囲気の通路。どうしよう、この先に屈強な戦士とか待ってたら。「今日がお前の命日だ」とか言われちゃったりして……。


当然ながら、屈強な戦士が待っているわけではありません。入り口の先には「オーパス夢ひろば」と名付けられたフィールドありました。立派なサッカーコートですね。


屋上の庭園には専用エレベーターで上がります。ここのほかにエレベーターがもう1基。それから階段でも上がることが可能でした。


着きました、屋上です。


屋上はたしかに緑豊かな公園になっています。私の足の下にジャンクションがあって、今も車が走っているなんて信じられない!?


高さ約30メートル(最低部11メートル、最後部35メートル)にあるにも関わらず、とても手入れが行き届いています。一般の公園でも、ここまでしっかり手入れの行き届いていないところがあるというのに。目黒区の力の入れ具合がよくわかりますね。



隣には高層マンションのクロスエアタワーがあります。ジャンクションの上に公園があって、その隣に高層マンション。私の知る限りの言葉でそれを表現すると「カオス」になるはずなんだけど、それらが上手く同居してカオスになってない。それがスゴイ!


ループの向こう側には田んぼまでありますよ。


田んぼだけでなく畑もあって、ここが地上数十メートルであることを疑いたくなります


ぐるりと回って、「アプローチの場」という場所に行ってみましょう。


目の前に高い壁! この壁はもしや!? そう、これは首都高の防護壁です。つまり、首都高の下を歩いてくぐれるんですよ! 改めてスゴイ場所に公園があると実感せざるを得ない! とにかくスゴすぎて、スゴイしか言えない!


抜けた先にも公園は続いています。高速のジャンクション部分をこんなに間近で見られる場所って、ほかにあまりなさそう。


こちらから階段で降りることができました。天空庭園、そう呼ぶにふさわしい場所でしたね



・目黒川船入場

だいぶバスの路線から外れてしまったので、一旦戻りましょう。次は「都立第一商業高校」から乗っていきますよ。


ほどなくバスが来ました。次に目指す先は~……。また公園です!


代官山駅の停留所で降りて、再び目黒川にやってきました。中目黒駅よりさらに南へ向かいます


今回はここに1番来たかったんですよね。「目黒川船入場」です。


ここは戦前に目黒川に船を引き入れる場所として利用されていたそうです。現在は公園として活用されており、2023年4月にリニューアル。キッチンカーが移動販売を行い、フリーマーケットも催されているのだとか。


また、以前「川の資料館」として使われていた建物は、コワーキングスペースになっているそうです。


ここの地下には貯水池(調整池)が整備されていて、見学会が行われることもあるようです。機会があれば、その見学会に参加してみたいと思っています。

地下の貯水池といえば、埼玉県春日部市の「首都圏外郭放水路」が有名ですが、こんなに近くにも見学できる貯水池があるなんて知りませんでしたよ。


とても穏やかな目黒川、梅雨を迎えても、今日のように穏やかであってほしいですね。



・猿橋古代居住跡公園

再び代官山駅周辺に戻ってきました。今日はアッチ行ったりコッチ行ったりで、慌ただしく歩き回って、お腹が空きましたよ。この辺で食事をしましょう。たまたま目に入った、沖縄料理のお店「はいさいキッチン」というところにしちゃいます。


注文したのはタコライス(サラダ・スープ・ドリンク付き税込1100円)です。


表の通りからはわかりにくいですけど、静かで落ち着いた良いお店でした。1人で食事をしたい時に使える穴場ですね。


そのすぐ近くにも、地下に良い喫茶がありました。「カフェフォリオ」でコーヒーを一杯頂きましょう。


店の設(しつら)えはシンプルで上品。地下ならではの暗さが心地よく感じました。冷たいコーヒーで喉を潤して、ラストスパートです!


もうルートも終盤。最後は「猿楽町」の停留所のすぐそばの「渋谷区立猿楽古代住居跡公園」に立ち寄りましょう。


この辺一体には、大昔に古代人が居住していたと推測されています。昭和52年の発掘調査で、土器や壺などが出土したそうです。昭和53年に古代住居を復元したそうなのですが、後に焼失し、現在はその跡のみとなっています。


敷地の片隅には5基の石造物。これらは猿楽周辺にあったものなんだそうですが、道路の拡幅工事や宅地開発で移設されたものとのこと。古くからの民間信仰の象徴だったものが、片隅に追いやられてしまってるみたいで、ちょっと気の毒ですね。このまま忘れ去られるなんてことがないと良いけど



ここから再び乗って、渋谷駅に帰りましょう。もうすぐそこです。


無事に帰り着きましたよ。あとどれだけの間、この渋谷駅を見ることができるんですかね。このあたりが生まれ変わる前に、景色をしっかりと目に焼き付けておきたいと思います。


手ぶらで帰るのもアレなんで、東急フードショーでおみやげを買って帰りましょう。東急トランセにお世話になったから、東急で買わないとね。「十勝あんこのサザエ」で鯛焼き買っちゃおうかな?


編集部のメンバーに、大判焼き(クリーム、つぶあんそれぞれ税別120円)と、デニッシュ鯛焼き(税別240円)を買って帰りました。



ということで、今回はオシャレの街、代官山に行きましたけど、公園をハシゴする旅になりました。所用時間は約3時間半です。

東急トランセで公園めぐりをしたいなら、今回のルートはおすすめですよ。ぜひ1度、目黒天空庭園に行ってみてください。マジでビビりますから! では、また次の循環バスでお会いしましょう。ごきげんよう~!


参考リンク:東急トランセ目黒区目黒川船入場
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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