2024年5月29日から、コメダの一部の店舗で興味深いコーヒーの提供が始まっている。「とろみコーヒー」だ。
一部と言えど、対象は計259店とそこそこ多い。北海道から沖縄まで幅広く分布している。実際にどのような仕上がりなのか、試してみることに。
・460円~640円
誕生や開発の経緯については、コメダ公式X(Twitter)の投稿に全て書かれている。要約すると、嚥下(えんげ)機能が低下して粘度の低い液体を飲むことに不安のある人にも、コーヒーを味わってもらいたいという考えによるものだ。
歯科医師・日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士である朝日大学歯学部の谷口裕重教授による監修を受けているそうで、ガチ感が伝わってくる。
値段は460円~640円で、販売店舗の一覧はPDFで公開されている。
さっそくオーダーしてみよう。言語設定が英語だったので把握したが、メニュー名は(取材時には)英訳されていない様子。
届いたのがこちら。パッと見ただけで普通のコーヒーと見分けるのは困難な気がする。
そんなにトロみがあるようには見えないが……おっ!? お分かりいただけるだろうか? このサラッとした液体とは違う気泡の入り具合。
液体表面もよく見ると微妙にヌメっとした感じがする。
そしてこのスプーン表面に残留する感じ。通常のコーヒーならこんなにべったりと残らないと思う。
トロみの度合いとしては、片栗粉を溶かした生姜湯より少し強いくらいだろうか。スライムほどのドロドロ感はなく、あくまでそれなりの流動性を持ってはいるが、しかし通常のコーヒーと比べると明らかにネトついた感じ!
では味はどうなっているのか? かなりの完成度で、コメダの通常のコーヒーの味だ。私はまだ嚥下機能に不安を抱えていないが、純粋にコーヒーの変化球としても面白い。
・うるおうのか?
ただし、飲みごたえや喉ごしは明かに通常のコーヒーではない。喉を通過する際の液体感はだいぶ稀薄で、胃での存在感の主張の仕方は液体というよりは、やや個体みたいな。腹持ちが良さそう。
嚥下機能が低下した人を対象としたものとのことだが、たしかに誤って気管に入り込んでしまうリスクは低そうだ。
喫茶店でコーヒーを飲むシーンというのは、コーヒー単体を味わうばかりではない。軽食を食べる際に、口内や喉を潤したくなった場合にも飲むだろう。「とろみコーヒー」にその役割は可能なのか……?
検証のため、カツカリーパンをオーダーした。こいつの給水性能は圧倒的だ。
2切れ目を食べきったところで……来たッ! 洒落にならない口腔内と喉の渇きッ!! このまま最後の1切れを詰め込んだら、窒息もあり得る……!!!
計画通りだ。ここで「とろみコーヒー」を投入。
……
……
……
……
……
潤……った……のか……?
徹底的に乾いた状態の喉にとって、「とろみコーヒー」の感触は液体を飲んだ感とはだいぶ違うものだった。しかし全く潤わないというわけでもない。
なんだろうこれは。ジェルで乾いた粘膜の表面が覆われたようというか、なんというか。液体とは違う方式で問題は解消された。
いささかすっきりしないが、喉を潤すという方面でも、いちおう役目は果たせる気がする。ただ、その度合いや気持ち良さは、通常のコーヒーの方がだいぶ優れていると思う。
そして、1つ明確な注意点がある。温度の冷め方が独特なのだ。表面は早々にぬるくなっていくが、内部はけっこう長い間アツアツなままである。粘度の高さゆえだろう。
表面温度で安心して一気に飲み込んだら、超ホットな内部にやられかねない。飲む際は、内部が想定より高温な可能性を認識したうえで楽しむと良いだろう。
参考リンク:コメダ珈琲店
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
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