ネパールの国民食「ダルバート」──日本で言う “定食” のような存在で、ほとんどの日本人が毎日のようにご飯と味噌汁を食べているのと同様にネパール人は日常的にダルバートを食べている。


「ダルバート」はダル(ひき割り豆のスープ)とバート(米飯)というワードの組み合わで、ここにカレーやスパイスで味や香りづけをした野菜などのおかず(タルカリ)やピクルスのような漬物(アチャール)がついてくる。まさに定食だ。


・日替わりメニューも充実のネパール料理店

今回、足を運んだのは東京メトロ千代田線の湯島駅から徒歩1分、JR御徒町駅からだと徒歩10分ほどのネパール料理店「バイダム(BAIDAM)」。


店頭に設置された看板にも「ネパールの国民食 ダルバート」と表示があり、同店のダルバートがどのような料理で構成されているのか案内もあって親切だ。


地下への階段を降りて入店。着席すると店員さんが日替わりメニューをタブレットで見せてくれる。この日はビリヤニだった。うーん……ビリヤニもボリュームたっぷりで美味そうだ。


月の日替わりメニューはカレンダーでも案内されている。毎週どころか毎日来ても飽きずにいろいろな味が楽しめそうだ。



・5種のダルバートから「スペシャルダルバート」をチョイス

ランチメニューはスペシャルダルバート(1490円)、野菜ダルバート(990円)、チキンダルバート(1090円)、ポークダルバート(1190円)、マトンダルバート(1290円)と、充実のラインナップ。

今回は野菜カレーと肉のカレーがついてくるスペシャルダルバートをポークカレーでオーダー。


バスマティライスと雑穀米からライスを選べるのも嬉しい。ライスとダルスープは2回までおかわり無料。今まで雑穀米のダルバートは食べたことがなかったのでこちらをチョイスしてみることに。


さらにトッピングとして水牛の溶かしバター「ギュー(200円)」もオーダー。インドではバターオイルのことを「ギー」と呼ぶが、ネパールだと「ギュー」となるようだ。

店員さんから「ギューはバスマティライスの方が合うよ」とアドバイスがあったので、まずは雑穀米で。おかわりにバスマティライスを追加し、それぞれギューと楽しむというプランで行くことにした。



・カフェ飯っぽい「オシャレダルバート」

まずはサラダが運ばれてくる。この店のサラダは和風のゴマドレッシングがかかっている。インドカレー店やネパール料理店でもお馴染みのあのオレンジのドレッシングではないのも珍しい。


そして運ばれてきたのが木製プレートに美しく盛られたカフェ飯のようなオシャレでカラフルなダルバート。

左上から時計回りに旬野菜のカレー、ポークカレー、ダルスープ、ラッシー、トマトベースのソース、紫キャベツのおかず、青菜炒め、ダイコンの漬物、発酵高菜、キュウリ、ニンジン、紫タマネギ。


そして中心に雑穀米が盛られ、パパド(豆から作られた煎餅のようなもの)が添えられている。さらにライスの頭頂にはシシトウが乗っかり、大阪の有名カレー店「コロンビア8(columbia8)」を彷彿とさせる。



・お店が勧めるダルバートの食べ方を実践

メニューにはダルバートの食べ方の記載もあってビギナーにも優しい。

まずはそれぞれの味を楽しみ、ダルスープをライスにかける。カレーやおかずを好きな組み合わせで混ぜて食べ、卓上の唐辛子ソースで辛さを調整し、最後はラッシーで口直しを──というのが同店が勧める食べ方のようだ。


というわけでまずは味噌汁のごとくダルスープで喉を潤す。優しめな塩気で豆の甘みを感じる。


続けておかずをそれぞれ食べ進めていく。紫キャベツのおかずは珍しいがダルバートのプレートに並ぶと映え映えだ。


パパドを砕いてふりかけのようにライスにまぶし、ダルスープをかけて「ネパール風ねこまんま」を楽しむ。雑穀米だからさまざまな食感があってこれもまた新鮮で楽しい。


野菜カレーはトマト、ジャガイモ、ニンジン、ブロッコリー、ナス、タマネギと具沢山。トマトが全体をまとめていてラタトゥユのような優しい味わい。


ポークカレーは豚肉が大ぶりでめちゃくちゃジューシーかつ柔らかい。脂のうま味と優しいスパイスの香りでライスがもりもり食べられる。


合間にシシトウをかじるとほのかな苦みといい意味での青臭さが口中をサッパリさせてくれる。



・想像を遥かに超えてきた「ギュー」の味わい

楽しみにしていたギューに着手していく。


ライスにかけてそれだけで食べてみると……バターというよりもまるでチーズ! 日本でもバター醬油ご飯はお馴染みだし、そんな感じなのかと思いきやまったく違う。ドリアを食べているような錯覚を覚えるほどのチーズ感とクリーミーさだ。

乳牛ではなく水牛のバターだから出せる香りとコクなのだろうか。


そこにカレーやおかず、卓上の唐辛子ソースを重ねていく。唐辛子ソースは結構辛いのでちょっとずつかけていくのが良さそうだ。


さらに “追いギュー” をすれば照り照り。オシャレなカフェ飯的ダルバートかと思いきや、肉も野菜も脂質も摂れるガッツリ系の背徳飯じゃないか。



・店員さんオススメのバスマティライスとギューのマリアージュ

雑穀米を食べ終えたところでバスマティライスをハーフで追加。


ライスにギューをかけてそれだけで食べてみると……店員さんの言葉通りでした。本当に合う。このマリアージュは雑穀米以上。

バスマティライスの独特な香りとチーズを感じるギューの香りと風味、そして脂肪分から来るコク。バスマティライスとギューだけのメニューがあったら注文したいぐらいだ。


そこにカレーやおかずを重ねればスプーンが止まらない。チーズカレーを食べているような感覚さえ覚える。それぐらいギューが存在感を放っている。


最後にラッシーでお口直し。グラスではなく小皿でラッシーを提供する店にも初めて出合った。ほのかな酸味と甘さが美味しい。


次回以降、訪問するネパール料理店のトッピングにギューがあったら絶対に頼んでしまうだろう。それほどまでにその味と可能性に魅了されてしまった。


・今回訪問した店舗の情報

店名 BAIDAM(バイダム)
住所 東京都文京区湯島3-25-11 東京堂湯島ビルB1階
営業時間 11:30〜15:00(ランチ)、17:00〜23:00(ディナー)
定休日 不定休


執筆:田中ケッチャム
Photo:RocketNews24

▼ネパール料理店にはどういうわけかミニバーを設置している店が少なくない。バイダムも同様で夜はお酒と肴を提供している。湯島の梅酒も楽しめるようだ。