「仙台には自販機が多い気がする」という件について、以前の記事でサラッと問題提起させていただいた。数というよりは、珍しい自販機が多い。特に食べ物の自販機が多い……気がする。私が仙台駅周辺に数日滞在した結果、非常にそんな気がした。

もしかすると、これは仙台に限った話ではなく “宮城”  “東北” といったくくりの問題なのかもしれない。しかし私は別に東北クラスタとかではないため、結果としてよく分からないのだった。

こうなっては有識者に丸投げする他にテがない。そこで仙台の自販機オペレーターに電話してみたところ……なぜか話が全然違う方向に展開したのでご報告させてくれ。

・あの件について聞かせて

今回お話を伺ったのは仙台市に本社を置き、東北・北陸地域に自販機を展開する企業『株式会社サン・ベンディング東北』の濱村さん。

サン・ベンディングさんについてネットで検索すると、すぐに「自販機神社」という、耳を疑うワードが出現する。どうやら仙台市に実在しているらしいのだが……何の話なのかイマイチ掴めないなぁ。

ただサン・ベンディングさんが昭和の体育教師クラスの熱い情熱を持った企業であることは、公式SNSの文面からヒシヒシと伝わってくる。この会社の人ならきっと「仙台に自販機が多い気がする問題」について何かしらの回答をくれるに違いない。もしも〜し?


濱村さん「こんにちは。弊社のSNSを見てご連絡いただいたとのこと、大変嬉しく思っております!」

──いや、なんかすみません。早速ですが、関東周辺と比べて仙台には自販機が多い気がするんですけど、実際のところ、どうなんでしょう?

濱村さん「ん? そうですか? 自販機メーカーさんもたくさんありますからね。正確な数が不明なので、ちょっと何とも申し上げられないんですけども……」


・マジか

「仙台に自販機が多い気がする問題」について、正確な答えは出ないらしいことがあっさり判明してしまった。マジかよ……このままでは記事にできるか微妙なラインなので、もう少し食い下がってみることに。


濱村さん「ただウチの自販機に関しましては、基本的には2台セットで設置しております。自販機自体のサイズも大きくてボリューム感があるので、存在を意識しやすい、という部分はあるかもしれません」

──あっ、そうなんですか!? それは耳より情報です! 

濱村さん「機会があれば、ぜひ見に来てください。実は最近開発した『おでん缶』の新商品が大人気なんです。ウチの自販機でしか買えないんですよ〜」



・行ってみた

ってことで、仙台へ行った。

『おでん缶』とは1990年代後半〜2000年代前半かけて秋葉原を中心に大流行した、その名のとおり “おでんの缶詰” 。当時は相当話題になったので「現物は見たことないけど聞いたことがある」という人も多いだろう。

あのブーム以降『おでん缶』の存在を思い出したことはたぶん1秒もなかったが、まさか東北で進化を遂げていたとは。濱村さんに教えられた仙台駅近くの場所へ向かうと……

おっ、あれか! 『with DRINK』とプリントされた赤いのが、サン・ベンディングさんの自販機。

かつて一世を風靡したおでん缶を製造するのは天狗缶詰株式会社(愛知)が展開する『こてんぐ』というブランドで、今回サン・ベンディングさんと共同開発したのが『ピリ辛 おでん缶』(350円)なる商品らしい。

おみやげに大量購入しようとしたところ、3つ目で売り切れとなってしまった。あっぶね! 本当に人気なんだな。



・食べてみた

せっかくアツアツなので帰りの新幹線で食べてみる。何を隠そう、私がおでん缶を食べるのは今回が生まれて初めて。

『ピリ辛 おでん缶』の中身は牛すじ、ちくわ、大根、さつまあげ、こんにゃく、うずら卵(2個)、結びこんにゃくの7種類。

この時点で箸が無いことに気づき、一瞬慌てたのだが……

ややあって、こんにゃくに刺さっている竹串を駆使すれば、箸がなくても食べられることに気がついた。これがおでん缶の仕組みなのか。初めて知ったなぁ。


これは……かなり思い切った辛さ!


うっかり勢いよくすすったら大惨事になっていたかもしれないレベルの辛さだが、チビチビ飲めば新幹線でも全然イケる……ハズ。辛いものが苦手な人は若干注意が必要かもしれない。

辛さの部分は一旦置いておくとして、繰り返すがおでん缶を初めて食べた身としては、クオリティの高さに驚いた。大根はコンビニおでんより味が染み、牛すじはホロホロ。具材が全て一口サイズなのも嬉しい。なぜアキバが中心だったのかは謎だが、大流行した理由は、なんか分かった。



・食べさせてみた

持ち帰った『ピリ辛 おでん缶』を編集部の皆さんにおすそわけすることに。

フタを開けて湯せんすれば加熱できるぞ。

2人とも、おでん缶自体は食べた経験があるらしい。


サンジュン「うん、だいぶ辛い。 “辛さの足が速い” っていうか、パッとくるね。あとからジワジワじゃなくて」



中澤「うん。おいしい。これはその、あれですね。おでんをめっちゃ食べてる人たちにとっては、いいんじゃないですか?」

サンジュン「鮮烈な辛さだよね。旨辛というよりは、極端に言うとデスソース系」

中澤「どっちかを選べと言われたら、僕は普通のおでん缶だけど……でも、たまにはこういう変化があるのも面白いと思う」



……とのことであった。東北みやげとして注目株の『ピリ辛 おでん缶』はwith DRINK印の自販機で購入可能。おでん好きも、おでん缶が懐かしいオタクも、東北クラスタも、見つけたらぜひ試してみてほしい。

なお冒頭でお伝えした「自販機神社」の件だが、仙台市の名取愛島というところガチで存在しており、サラッと伝えるには面白すぎるネタであるようだ。次回仙台へ行った時に詳細をレポートさせていただきたいので、しばし待たれよ。

参考リンク:株式会社サン・ベンディング東北
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼with DRINK印の自販機では全国のご当地ドリンクが買えたりするぞ