ロケットニュース24

東京に来て初めて住んだ街を約15年ぶりに訪ねてみた → 駅を降りて20分後にテンションがブチ上がった

2024年4月8日

いまから思えば不思議なのだが、東京のことなど一切知らない学生時代の私は「上京したら吉祥寺に住む」と決めていた。テレビか何かで吉祥寺を見て憧れがあったのかもしれない。

あるいは、東京のようなコンクリートジャングルで暮らすには近くに大きな公園がある街じゃないと厳しいと判断したのかもしれない。

なにぶん20年ほど前のことなので詳しく覚えていないが、とにかく私は吉祥寺駅の駅前を降りてすぐ近くにあった不動産屋へ行き、そこで紹介されたのが吉祥寺駅から徒歩30分くらいのアパートだった。

家賃5万円で、お風呂はない。不動産屋の人は「学生紛争をくぐり抜けて」と言っていたので、相当な年代ものである。

そのアパートに5年ほど暮らしたのち、同じ東京の荒川区に引っ越した。以降、私は上京当時住んでいた街がどうなったのか知らない。行ってみようとも思わなかった。なぜなら……


・思い出したくない

お察しのように、思い出したくないことが多すぎた。とにかくお金がなかったし、残業が毎月200時間くらいあって睡眠時間を削らなくてはいけなかったし、無理して働いていたら腰を壊したし、保険が効かない治療をしたことで消費者金融にお金を借りる羽目になった。

そうなった原因は、ブラック企業に勤めていたからってことに尽きる。完全にそれ。もう分かっている。というか当時からメチャクチャ分かっていたのだが、分かっていてもなかなか抜け出せず、なんとか抜けだそうともがいていた時期でもあった。

早い話が、私にとって上京当時に住んでいた街を訪れることは自分がハマって溺れかけたドブを見に行くような怖さがあった。

しかしながら、さすがに何年も経つと「今どうなってるんだろう?」って気持ちが強くなってくる。そこで……。



・行ってみた

向かったのは、京王井の頭線の三鷹台駅


15年ぶりに駅のホームに降りて思ったのは、あんまり変わってないってこと。しかし、駅の階段を降りると……


どこだここ?


当時を知る人にしか分からないかもしれないが、別の街かと思うほどに変わっていた。線路の側にあったはずの八百屋さんは無くなってるし、道路だってこんなに広かったっけ?


っていうか……



知っている店が全然ない! 前はここにパンチパーマの親父さんが1人でやってる定食屋さんと、深夜までやっている中華料理屋さんと、1番端には洋食屋さんがあったんだ。

定食屋さんはたしかサバ塩焼き定食が580円くらいで、ご飯おかわり無料だったから(時間帯によっては1杯無料だったような?)とにかくお腹いっぱいになりたいときにはよく利用していた。

中華料理屋さんも仕事終わりによくチャーハン食ってたし、なんなら親父さんが使ってた中華鍋を見て自分も欲しくなったりしたんだよな〜。

そして洋食屋さん! たしか、名前は『ライラック』といったはず。この店名だけ覚えているのは、北海道でよく見る植物の名前だから。北海道から上京した身としては、初めて看板を見たときに懐かしささえ覚えた。

貧乏な自分は頻繁に行けるお店じゃなかったけど、そのぶんご褒美的な存在だったな〜。ご家族で経営されていて、「お父さんがトンカツを油から揚げるタイミングが絶妙すぎる」みたいな話をしたことを今も覚えている。あと、ホールをやってたお母さんも学生バイトもみんな親切だったんだよな〜。


……という思い出の店が!


ぜんぶ無い!!



・愕然

もちろん行く前から多少変わっているとは思っていたが、現在ある店がほぼ知らないレベルとは思わなかった。数字で言うと、知っている店は2〜3割くらい。こんなはずはないと思って駅の周りをウロウロしたものの、歩けば歩くほど愕然とした。


コロナがどれだけ大きなダメージを与えたか、改めて教えられたような気分だ。そして、飲食店を長く経営することがいかに大変かということも。


この調子だったら、知っている店で残っているのはコンビニくらいかもしれない。そう思い、坂道を登っていったら……



!!!!



知ってる!


このサンドイッチ屋さん知ってる! 昔ここでよくパンの耳を買って飢えをしのいでいたんだ。特に金欠のとき、メチャクチャお世話になったなぁ……。



懐かしい気分のあまりショーケースを覗いてみると、美味しそうなサンドイッチが並んでいた。以前と変わらないような気がするけど、フルーツサンドなんて前からあったっけ?


どうしても食べたくなったので、その店でイチゴのフルーツサンド(259円)を購入。お金を払うときに「僕20年くらい前によく利用させてもらってたんですよ」と言ってみたところ、「え〜嬉しい!」とお店の女性スタッフ。

つられるようにテンションがあがった私は「このへんメチャクチャ変わりましたね!」と言うと、うなずく女性。そこから、「あの店は今こうなって」といった周辺情報を女性スタッフから教えてもらった。楽しすぎる。なんだか地元の友達に会ったような気分だ。

で、その話の流れで「こちらで昔パンの耳を売ってませんでした? 僕よくそれを買ってたんですよ」と聞いたら、「今も裏メニューとしてありますよ!」とおっしゃるではないか。マジですか。

続けて「写真、撮ります?」と言ってくれたので、「いいですか?」と答えると……



懐かしぃいい……!


これも追加で買おうかな? 1袋50円らしいぞ。今でもメチャクチャ安いな。いや、待て。改めて見ると思ったよりもデカい

昔はこれを普通に平らげていたのだが、オッサンになった今では食べ切れるかどうか分からない。うーん、仕方がない。写真だけにしておくか。

……というわけで、イチゴのフルーツサンドだけ手に持ち、お礼を言って店を後にした。



それから井の頭公園まで歩いてベンチに座りフルーツサンドを食べたのだが、店員さんによると割と最近始まったメニューだそうだ。


やっぱり。見たことなかったもんなぁ。昔からあるものを守りながら、一方で流行りのものを取り入れて工夫を重ねているから長く続けていけるんだなぁ。

ちなみに、その三鷹台のサンドイッチ屋さん(サンドーレ)は創業が50年近くになるらしい。つい先ほど駅前で7〜8割ほどのお店がなくなっているのを見たばかりだと、信じられない数字である。


それだけ長く続けているお店なだけあって、味は文句なし。まぁサンドイッチが美味しいのはもちろんだが、女性スタッフとの会話で過去の記憶が呼び醒まされたからより美味しく感じた部分もあるだろう。

つまるところ、あの時代があったから味わえる美味しさだと。言い換えれば、高度成長時代に排出された粉塵がすべて詰まっているかのようなボロアパートとブラック企業との往復で過ごした日々が、最高の調味料になっている。

我慢に我慢を重ねたあとに食う飯は格別ということを、10年単位の長いスパンで実感したのだった。


・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 サンドーレ 三鷹台店
住所 東京都三鷹市井の頭2-10-1
時間 7:00~21:00
休日 日・月曜日

執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.



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