現代人である私たちには、肉も野菜もパンもお茶も、食材はなんでもスーパーで買う文化がすっかり染みついてしまっている。

確かにスーパーの品はどれをとってもバラつきがなく美味しいが、稀にいわゆる “老舗店” へ行くと驚くのだ。ちょっと高いし買いに行くのは面倒くさいけど、普段食べてるヤツより本格的で美味しいやんけ! ……と。

しかし、最近は老舗店だってスーパーに負けず進化しているのだ。先日見つけたお豆腐屋さんなんて、自動販売機でほぼ24時間買える体制を整えていたんだから!

・レトロな街のお豆腐屋さん

奈良県橿原市にある今井町を訪れた時、街並みの美しさに感嘆の声を上げた。

町内には江戸時代に建設された町家がほぼそのままの姿で残されていて、まるでタイムスリップしたみたいな気分。

760棟ほどある建物のうち、なんと約500棟が伝統的な建築物というのだから驚きだ。平成5年(1993年)には国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、ドラマや映画の撮影に使われることもあるんだって。


この日も浴衣を着た若者や一眼レフを持った老夫婦など、あらゆる人が街並みを楽しんでいた。筆者もさっそくスマホを取り出して写真を撮りながら歩いていると、ふと気になるお店を発見した。

「小林豆腐店」と木製の札が下げられたその店は、いかにも老舗店といった雰囲気。一見(いちげん)では入りにくい玄人感があるのだが、きっとここの豆腐は美味しいだろうと想像できた。



残念ながら店の扉は閉ざされており、今日は営業していないように見受けられる。「食べてみたかったな」と言いながらその場を去ろうとしたところ……おやっ!?


「お買い上げは自販機で」と書いてあるじゃないか!

しかも、日曜の夜から月曜の昼までを除いてほぼ24時間買えるという、まるでコンビニのような体制を整えているのだから驚きである。


自動販売機は店舗の左側に設置されていた。


商品配置図によると、商品は豆腐だけでなく、こんにゃく、あげ、わらび餅、豆乳など。自販機1台に対して17種類が入っているそうで、かなり豊富な商品展開である。

ただし豆乳1リットル、おから、すしあげ、保冷セット(おそらく保冷剤とアルミバッグ)に関しては自販機に入っていないので、玄関のチャイムを鳴らして対人で購入する必要があるということだ。



・ピーナッツ入り豆腐をゲットだぜ!

一通り商品を見た中で気になったのは、ピーナッツ入りきぬごし豆腐。価格は税込330円だ。

沖縄や九州の郷土料理にくず粉を使ったピーナッツ豆腐(ジーマーミ豆腐)があるが、どうやらそれとは違い、大豆を使った豆腐の中にピーナッツが入っている珍しいタイプらしい。


自販機にお金を入れて番号を押すと、商品の目の前まで受け皿が迎えに来る。

パッと見る限りでは、この自販機はお菓子やパンなどを販売する際によく使われているもの。

筆者の記憶が正しければ、受け取り口へ商品を降ろす際に 商品をそれなりの高さから落とす動作があった気がする。豆腐って、そんな衝撃に耐えられるのかな?


「コットン」と落ちる音に慌てて取り出し口を開けると……


よかった! 無事だ~~!!!!

よく見ると商品がプラスチックケースに入れられていて、破損しないよう工夫がこらされていた。


自販機の横にある回収ボックスへケースを返せば、お買い物は完了だ!



・ピーナッツ入り豆腐を食べてみた

持ち帰ったピーナッツ入りきぬごし豆腐がこちら。帽子を持ったピーナッツがダンスしているパッケージは、レトロで可愛らしい。


色はうっすらとしたクリーム色だが、ピーナッツの粒的なものはほとんど見えない。少しモロモロとした質感で、絹ごし豆腐の中では固めの部類と言えるだろう。


口に入れると舌触りは滑らか。しかし、噛むと微かに「ショリッ」と言うのが面白い。

何より大豆とピーナッツという2種類の豆の香りと味がしっかりすることに驚いた。普段食べている豆腐が味気なく感じてしまいそうなほどだ……!

残念ながらピーナッツきぬごし豆腐は 6月までの限定商品ということだが、ここの豆腐であればきっとどれもが美味しいことだろう。ガツンと大豆の味がする豆腐が食べたい方は要チェックだ。

ちなみに小林豆腐店には駐車場がないため、訪問の際は近鉄大和八木駅から徒歩15分、もしくは今井まちなみ広場駐車場から徒歩5分がかかる。

せっかくの素敵な街並みなので、歩きやすい靴で散策をしながら買い物をすると楽しいと思うぞ!

執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
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