生きていると、「運の流れ」のようなものを感じることがある。良いことが立て続けに起きたり、あるいは悪いことにさんざん見舞われたり、といった具合にだ。
例えば最近、筆者は有名駄菓子である「おやつカルパス」を初実食し、見事に虜になったのだが、このたび2023年6月5日にその新味が発売されると聞いた時、「流れ」を感じずにはいられなかった。運命的なまでのタイミングの良さだった。
言うなれば大殺界の真逆、「大おやつカルパス界」に突入したことを確信した筆者は、まるで自分のために作られたかのような新商品──「おやつカルパス ツナマヨネーズ味」を早速レビューすることにした。
今一度確認しておくと、「おやつカルパス」とは鶏肉と豚肉を材料としたドライソーセージだ。すでにお気付きの方もいるだろうが、それのツナマヨネーズ味となると中々に難解である。どんな味なのかは謎と言っていい。
製造会社のヤガイによれば、「おにぎりや惣菜パンのランキングで常に上位であるツナマヨネーズを採用した」とのことだが、その目の付け所も謎と言っていい。あまり「なるほど」とはならない。
しかしどんなに衝撃的な商品であれ、筆者はヤガイを信じている。近隣のスーパーやコンビニを巡り、ある店舗でバラ売りされているのを見つけた瞬間、即座に購入した。1本12円ほどだった。
今回はそれが計7本、手元にある。何故7本なのかと言えば、筆者の利き手の大きさと羞恥心が掛け合わさった結果、7本が限界だったからである。ともあれ、「おやつカルパス」を初めて食べた時のように、これらを夢中で食べ尽くす未来を想像しつつ、最初の1本に手を付けた。
まず感じたのは、ツナマヨネーズの香ばしさだ。ハイレベルな再現度で驚かされた。次いで通常の「おやつカルパス」よりも控えめな塩味(えんみ)。この塩味が退いて出来た隙間にツナマヨネーズのまったりとした旨味が丁度はまって、絶妙な化学反応を誘発している。
濃厚でいて、不思議と通常の「おやつカルパス」よりも上品だ。通常のそれは駄菓子のエッセンスが強めであったが、こちらはどこかの格調高いレストランで出されてもおかしくないとさえ思える仕上がりである。この振り幅は見事と表すほかない。
しかし、正直に言わせてもらうと、上品になっている分だけ中毒性も薄まってしまっている気がする。通常の「おやつカルパス」の荒々しくジャンクな塩味にこそ引き込まれた身としては、角が取れた仕上がりに一抹の寂しさを覚えなくもない。
あくまで別の味なのだから、通常のものと同じテイストを求めるのはお門違いだとわかっている。とはいえ等しく「おやつカルパス」の名を冠しているとあっては、強烈な中毒性を期待するのも道理だ。今回は残念ながら、筆者の思考とヤガイの思惑がズレていたのかもしれない。
まあ、全部食べたのだが。
速やかに全部食べた。あたかも全部食べていないかのような筆致で、全部食べた。7本がみるみるうちに消え失せていた。
何故こうなったかと言えば、「食べやすかった」という一言に尽きる。中毒性が薄いにせよズレていたにせよ何にせよ、「美味しくて食べやすいものは消える」という当然の現象が起きたにすぎない。何だかんだで夢中になったし、食べ尽くす未来は到来したのである。
いやはや、繰り返しになるが見事である。この口当たりの軽さは強烈なメリットだ。通常の塩味が苦手だという方にも、「ツナマヨネーズ味」ならば間違いなくお勧めできる。
ヤガイを信じてよかった。ぜひ皆さんにも、こう感じて頂きたい。ラッキーアイテムは、「おやつカルパス」だ。