この世の中には、星の数ほどの職業がある。だが我々は、それら職業をよくわかっていない。自分の職業のことはわかっているつもりだが、他人(ひと)の職業については、イマイチよくわかっていないのだ。

ということで今回から始まる不定期連載『気になる職業インタビュー』。記念すべき第1回目の職業は「霊柩車のドライバー」である。答えてくれたのはKさん(42歳)で、仕事内容からお給料まで、すべて教えてくれたので情報共有しておきたい。

──Kさんはどのような会社で働かれているのですか?

「霊柩自動車によるご遺体搬送をメインとする会社に勤めております」


──葬儀屋さんではないのですね?

「葬儀屋さんでドライバーをしていると誤解されますが、私のいる会社はご遺体搬送がメインの会社です。大きな葬儀屋さんであれば、霊柩車や寝台車を持っているので、全て自社で行うこともありますが、最近ですと、車など持っていない葬儀屋さんも多いんですよ。

ちなみに、葬儀屋さんは、葬儀の手配や進行などすべてを請け負う会社のことです。ご遺族がまず最初にお願いする窓口で、広告業界で例えると、大手広告代理店さんというイメージですね」


──なぜ、霊柩車のドライバーを始めたのでしょうか?

「元々、ドライバーの仕事をやりたくて、仕事を探していました。そんな時に知り合いが働いていて声をかけてくれました」


──改めて仕事内容を教えてください。

「葬儀屋からの依頼で、ご遺体を搬送する業務です。依頼場所は主にご遺体がある病院、老人ホーム、警察署、ご自宅です。ご遺体を寝台車に乗せた後の行き先は、葬儀屋さんの指示に従います。

弊社でお預かりする場合もありますし、ご自宅にご遺体を運ぶ場合もあります。最近では一度弊社でお預かりをして、その後ご遺体を火葬場にお連れするのが多いです。

また、弊社でお預かりをした場合は、ご遺族が面会できるよう準備もします」


──ご自宅に一度運ばれることもあるんですね。

「そこそこ大きい一軒家だったりすることが多いですけど。まあ少ないですね」



──どんな勤務形態なのですか?

「会社にドライバーは合計30人が在籍してますが、基本はシフト制です。もちろん夜勤もあります」


──会社としてどのような体制なのでしょうか?

「基本は2〜3人が営業所で待機していて、要請があった際に車を出します。待機中は、電話対応、遺族の面会準備、葬儀社から依頼があればご遺体にドライアイスをあてるなどをしています。もちろん、火葬場へ出棺をするため、外出しているメンバーもいます」


──大変な仕事ですよね。

「みんなからは「仕事大変そう。大丈夫?」と聞かれますが、3ヶ月程度で慣れます。ただ、若い人が自ら命を絶って、その方を運んだのは悲しかったです」


──お仕事をする上で気をつけている点はありますか?

「葬儀社から搬送依頼があれば、その場所へは時間厳守なんです。そのため、渋滞、工事等があっても予定通り着かなくてはいけないので道を熟知するよう勉強しています。

また、霊柩車は非常に長くて大きいため、高度な運転技術が必要です。狭い道などは本当に難しいので、やはり道を熟知しないとダメなんです。

あとはご遺族と葬儀社様への丁寧な言葉遣いや、亡くなられた方をベッドからストレッチャーに音が鳴らないようスムーズに乗せたりですね」


──差し支えなければお給料を教えてください。

「お給料は手取りで25万円程度です」


──このお仕事をしてみて今率直にどう考えていますか? また将来についても教えてください。

「今まで様々な仕事をしてきましたが、この仕事は人に感謝されますし、私にとってはやりがいのある仕事です。ドライバーの仕事でここまで感謝される仕事はないですよ。

ただし不安もあります。ドライバーは年配の方が多く、若い人が少ないのが現状です。また、霊柩車の運転には数年の修行が必要なので、育てるのにも時間がかかります。このような仕事は敬遠されるので、将来、霊柩車のドライバーはかなり少なくなってしまっている可能性があります」


執筆:GO羽鳥
イラスト:いらすとや
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