それは突然の出来事だった。俺たちの心のとんかつチェーン「かつや」が2023年4月5日、待望の新商品についての詳細を発表したのだが、なんとその発売日が同じく4月5日だというのだ。え、発表当日!? 緊急登板すぎるだろ! こっちにも都合があるんだぞ!!

だがしかし、こういう時こそ “かつや者” としての覚悟が試されるというもの。もちろんスケジュールを調整してその日のうちに食べてきたぞ。まあ執筆の都合上、公開は2日ズレてしまったのだが(意味ねぇ)、さっそく期間限定の新商品『タレカツとうま煮の合い盛り』についてお伝えしたい!

・かつや新商品

今回もお得意の “合い盛りシリーズ” を新商品に投入してきた「かつや」。価格は丼が税込759円、定食が税込869円となっており、いつものように弁当のテイクアウトも可能(税込745円)。私(あひるねこ)が注文したのは丼の方だ。


それにしても、タレカツはまだ分かるとして、その相方に “うま煮” をチョイスするあたり実に「かつや」である。うま煮をメインに据えて全国販売しようなんていう物好きな変態飲食チェーンは、おそらく「かつや」くらいのものだろう。さすがの謎センスとしか言いようがない。

ところが……実際に届いた『タレカツとうま煮の合い盛り丼』は、私が思い描いていたものとは若干異なったのだ。それがこちら。


いやこれ……うま煮か? そう、実はこのうま煮、正確には五目うま煮で、どちらかというと八宝菜に近いのである。


なるほど、どうりで熱々のあんかけがたっぷりなワケだ。具材も白菜、きくらげ、たけのこ、小松菜、にんじん、たまねぎ、うずらの卵、豚肉と盛りだくさん。中華丼みたいな感じと言えば分かりやすいだろうか。これはこれでウマそうだぞ。


が!!


五目うま煮にばかり気を取られていた私は、ここでようやくもう一人の主役・タレカツが置かれた絶望的な状況にハタと気付くことになった。合い盛り丼なので、当然タレカツは五目うま煮のすぐ真横に盛り付けられているワケだが……


いや、拷問かこれ。


そこで目の当たりにしたのは、熱々の中華餡(あん)をヒザから下にぶっ掛けられているタレカツの姿だった。山崎邦正かよ。と一瞬思ったが、餡を掛けられるだけの山ちゃんに対し、タレカツはボディの一部を餡内部にガッチリ固定されてしまっている。『カイジ』の焼き土下座の如き圧倒的制裁である。地獄絵図とはまさにこのこと。



・受難のタレカツ

偶然か、はたまた灼熱(あつ)すぎたからか。席に運ばれた時点で、タレカツは勝手に自立していた──。あんかけにほぼ垂直に突き刺さるタレカツなどという珍景を目撃するのは、おそらくこれが生涯最後になるだろう。合掌。


……さて、タレカツはしばらくこのままにしておくとして、まずは五目うま煮の方からいただいてみたい。先ほど中華丼のようと書いたが、実際に食べるとさらにその印象は増す。オイスターソースが香る中華あんかけは見た目以上に優しい味わいだ。具材たっぷりで食感もいい。


それに気をよくした私は、そろそろタレカツを怒涛の餡攻めから解放してやろうと引っ張り上げた……の、だ、が。


うわデカッ!!!


相変わらず「かつや」のタレカツはサイズ感がバグっている。私の2歳の娘が履くスニーカーの倍くらいデカいぞ。こうして2個とも救出した結果、丼が小学校の下駄箱のような様相を呈してしまったのは想定外だったが、訓練されし “かつや者” の諸君ならば、このタレカツの実力についてはもはや説明不要だろう。


柔らかく、それでいて食べ応えがある鶏ささみのカツと、タレをまとってややしんなりした衣の味わいは「かつや」の中でもトップクラスである。ただ、タレカツとうま煮という奇天烈な組み合わせが、何らかのケミストリーを起こしていたかというと、そこまでには至っていないような気がした。



それぞれ料理単体としては非常に優秀であるものの、あくまで1+1=2。やはりタレカツはタレカツ、うま煮はうま煮と、独立したものとして考えるのがベターではないか。という、あまり面白みのない結論に落ち着いてしまったのだが、その結果、残酷すぎる事実が浮き彫りに。


そう、灼熱のあんかけ地獄に浸かることを余儀なくされたタレカツは……果たしてあれは意味があったのだろうか? いや、別に中華餡を一身にまとわせる必要性はそこまで感じないというか、なんなら終盤、とんかつソースかけて食べたからね。残念ながらただのぶっ掛けられ損である。

・罪と罰

期間限定『タレカツとうま煮の合い盛り丼』は、斬新を極める「かつや」が放った新たな異次元砲であると同時に、ファンからやたらチヤホヤされるタレカツへの凄惨な罰ゲームという意味も内包した闇の2色丼だった。耳をすませば、タレカツの悲痛な叫びが聞こえてくる……かもしれない。

参考リンク:かつや
執筆:かつや者・あひるねこ
Photo:RocketNews24.

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