白なのか、それとも黒なのか? すっきり生きていければいいけれど、そうもいかないのが人生である。時に我々人間は、白と黒の間にある “グレーゾーン” にモヤッとしてしまう。例えば私、P.K.サンジュンは、早朝のコンビニでモヤッとした。
あの時、私はどうすべきだったのか? いつか同じシチュエーションに遭遇したらどう行動するのが正解なのか? ちょっと私の「モヤッと」を聞いていただきたい。
・朝のコンビニで
出社前、コンビニでコーヒーを買うのはここ数年来の私のルーティーンである。基本セブン、時々ファミマがベースとなっており、その日もLサイズのホットコーヒーを購入して出来上がりを待っていた。
その2メートルほど横のレジには90歳に届いていてもおかしくないおばあちゃんがおり、どうやら「ロールパン」を購入しているご様子。会計後「ありがとうねえ」と声をかけるおばあちゃんと外国人の店員さんのやり取りは、実に微笑ましい光景だ。
……が、会計を終えたおばあちゃんが私のいる方、つまり出口に向かってゆっくり歩いているとき “それ” は起きた。おばあちゃんはコーヒーを購入していないにもかかわらず、ミルクと砂糖を1つずつ持って店の外に出て行ったのだ。
・えっ
普通に考えれば、ミルクと砂糖を持ち帰っていいのは「コーヒーを購入した人だけ」のハズ。セーフかアウトかジャッジするならば「完全にアウト」と申し上げていいだろう。法律的に「万引き」まで行くかはわからないが、少なくともモラル的に弁解の余地はない。
一方で、おばあちゃんが「ミルクと砂糖はコーヒーを買った人しか使えないルール」を知らなかった可能性も低くはないだろう。
40代半ばの私ですら「世の中についていけていない……」と感じるほどのスピード感で、時代は変化し続けている。我々にとってはあたり前のコンビニコーヒーも、おばあちゃんにとっては “つい昨日、一昨日できたやつ” である可能性も否めない。
さらに言えば、シンプルに「タダなんでしょ?」と思っている可能性もある。かつてスーパーでは “馬鹿ほどビニール袋を持ち帰るおばさん” をよく見かけたが、それと同じく「タダなんでしょ?」とおばあちゃんが考えていても不思議ではないハズだ。
・俺には実害なし
もっと言えば、ミルクと砂糖を持ち帰られたところで、私としては痛くもかゆくもない。コンビニ側からしても、それが原因で店が潰れるほどの大損害とまでは言えない些細なことなのだろう。
おばあちゃんは知らなかっただけ。知っていたとしても、これより凶悪な事件はいくらでも世の中にはあふれている。何より私自身に損害は1つも無い。何事も無かったように、すぐに忘れてしまった方がいいのだろう。
……が、ワシはめちゃめちゃモヤッとしとるけどね!
この際、おばあちゃんに悪意があったのかどうかはどうでもいい。……が、例えば娘と一緒にいるとき同じ状況に出くわしたら、私はどう説明すればいいのだろう? どう言えば6歳の娘は納得してくれるのだろう?
もちろん「ミルクと砂糖はコーヒーを買った人だけしか持って帰れないんだよ」「あのおばあちゃんは本来良くないことをしているんだよ」とは言える。……が「なんで注意しないの?」と問われたら、お父ちゃんは返す言葉がありません。
仮におばあちゃんが身内だったら「ダメだよ、みっともないからやめろよ」と注意できるし、実際にするだろう。……が、2度と会わない可能性が高い赤の他人、ましてや悪意があるか分かりかねるおばあちゃんに、私はどうすれば良かったのだろうか?
白なのか、それとも黒なのか? すっきり生きていければいいけれど、そうもいかないのが人生である。本来は無関心を貫ければいいのだろうが、全ての人がそうなってしまった世界の未来は明るいのだろうか? あの時、私はどうすべきだったのだろう?
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.