店構えに年季が入っていれば入っているほどウマそうに見える町中華。つくばエクスプレス新御徒町駅の近くの『幸楽』はそういう意味でとてもウマそうな町中華である。この店構えを見たら、誰もが半チャーハンセットを食べたくなるに違いない。
だが、メニュー看板にはこう書かれていた。「人気No.1 半ナシゴレン+ラーメンセット 800円」と。繰り返す。人気No.1、ナシゴレン。
・地元民に聞いた店
私(中澤)がこの店の噂を聞いたのは、地元のカフェで知り合った地元民・荒井さんとの雑談からであった。なんでもフジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした』のコーナー「きたなシュラン&きたなトラン」で紹介されたこともあるのだとか。
そこで来てみたら、確かに店の軒先に11年前の「きたなトラン」星3つの認定証が飾られている。番組は4年前に終わっているが、こうやって放送の証が残っているのは番組スタッフとしても本望だろうな。
・ナシゴレン率が異常
そして、「きたなトラン」と言えど、店構えは掃除がされてない汚さではない。冒頭の通り、年季が入っている感じ。私くらいになればウマそうにすら見える。というわけで、入店してみたところ、客の半分くらいはナシゴレンを食べていた。
どうやら、人気はガチのようである。荒井さんもナシゴレン食べるって言ってたしな。ちなみに、もう半分は「半カレーライス+ラーメンセット(税込み800円)」を食べていて、「半チャーハン+ラーメンセット(税込み800円)」を食べている人はまさかの0人であった。町中華でこんなことある?
・ナシゴレンを食べてみた
しかしながら、単品メニューを見ると、「生姜焼き(税込み650円)」「レバにら炒め(税込み650円)」「八宝菜(税込み650円)」「天津丼(税込み750円)」や、焼きそば、ラーメン各種など、やはり和製中華色が強い。ナシゴレンだけ浮いてるように見えるが、どんな味なのだろうか。食べてみたところ……
いや、チャーハンですやん!
普通に町中華のチャーハンの味な気がしたが、ナシゴレンってこういうものだっけ? 念のため、もう1度よく噛んで食べてみよう。ふむふむ、具材的にも、パプリカとかは入っておらず、卵も共に炒めていることで米粒にホロホロ感がある。いや、チャーハンですやん!
しかしながら、そんなチャーハン味の奥からピリッとした辛みがやって来る。確かに、このスパイシーさにはナシゴレンの要素がないこともない。全体的な方向性が町中華のグッドチャーハンで統一されているだけに、その辛みがとてもストレンジに感じられる。ここにしかないチャーハンが爆誕していた。
・ナシゴレンの理由
インドカレーと日本のカレーくらいの違いはあると思う。一体、なぜこれほどオリジナリティーのあるものがナシゴレンと呼ばれているのか? そもそも、なぜ町中華でナシゴレンなのか? 食べても疑問が湧いてくるばかりだったので、店主のおやっさんにこのナシゴレンについて詳細を聞いてみた。
小林賢吉さん「もう大分昔なんだけど、この店を持つ前、渋谷で働いてる時に、インドネシアの人に『ナシゴレンが食べたい』って言われてね。
その時は、存在を知らなかったんだけど、『インドネシアのチャーハンみたいなもん』って話を聞いたりして、独自に研究して完成したのがこのナシゴレンでさ。それ以来、このナシゴレンを背負って生きてる」
──とのこと。圧倒的なオリジナリティーも腑に落ちた。
情報の手に入りにくかった時代と絆が生み出した奇跡のウマさである『幸楽』のナシゴレン。逆に、インターネットでなんでも簡単に正しい作り方が知れる現代では生まれない味と言えるかもしれない。そのおやっさんの歴史を感じる味わい深さに人気No.1も頷けたのであった。
・今回紹介した店舗の情報
店名 幸楽
住所 東京都台東区小島2-1-3
営業時間 11:00~15:00
定休日 水曜・土曜・日曜
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼醤油ラーメンはまさに町中華のラーメン