まだかな、まだかな~♪ 学研の~おばちゃんまだかな~♪
いまから数十年前、小学生だった筆者の最大の娯楽が『りぼん』と『学研の科学』だったことは間違いない。最盛期には小学生の3人に2人が購読していたともいわれるモンスター学習誌だが、2010年に惜しまれつつ休刊。
少子化や出版不況、そしておそらく進学塾、eラーニング、輸入知育教材など選択肢の多様化もあり、ひとつの時代が終わったのだろう……
と思っていたが、このたび12年ぶりに復刊するという! 久しぶりだな、学研!!
・『学研の科学』(税込2970円)
新生『学研の科学』は家庭訪問販売ではなく、AmazonなどのECサイトや書店で誰でも購入可能。休刊前から書店やインターネット販売が大きなシェアを占め、宅配事業を見直していたという。
対象年齢は6歳から大人まで! 大きいお友達のことまで考慮されていて嬉しい。最近の付録つきマガジンによく見られる、ガシッと分厚い紙箱入りだ。
お前、ちょっと見ないあいだに、すいぶん太くなったな……。
立派すぎて「本当に学研か?」と思うような姿だったが、中にはばっちり雑誌が。本誌だけで全76ページあり、昨今の「付録が主役」「雑誌はおまけ」という流れとは一線を画している。
JAXA宇宙飛行士・若田光一さんのインタビューやNASAの研究者監修のロケットのしくみページなど本格的な内容。それでいて、低学年でも読めるよう、すべての漢字にふりがなつきだ。
ご存じの方も多いと思うが、学研には『学習』と『科学』の2種類があった。
当時から活字中毒ともいえるバリバリ文系だった筆者は、読み物の多い『学習』に心ひかれていた。しかし親には理科や算数のほうが真面目な勉強という印象があったようで、『科学』しか契約してもらえなかった。
筆者は言いたかった。国語や歴史だって立派な勉強なのに!
『学習』派の級友を恨めしく眺めていたことは苦々しい思い出だ。結局、理系の素養はまったく身につかず、拙文(せつぶん)をまき散らす職業に就いた。
ともあれ付録の「水素エネルギーロケット」を組み立ててみよう! SDGsに関連する学習らしいが、筆者はいまだに読み方すら危うい。
大事なところはほとんど組み上がっているので、パーツをはめ込むだけで完成する。繰り返し実験できるよう、しっかりした作りだ。
発射管の中には、目に見えないくらい小さな火花が出る点火装置が。
筆者はピンセットを使ったけれど、特別な道具は必要ない。「組立時間は子どもの手で約45分」とのこと。簡単簡単……
と余裕ぶっていたが、シールが反対であった。ロケットの翼のはずなのに、向きが逆だ。
この向きが正解。完成である。
・飛ばしてみよう!
さっそく飛ばしてみようと思う。水を使うので、濡れてもいい場所がよさそう。
飛行には「セスキ炭酸ソーダ」という白い粉を使う。ソーダと名がつくが、なめてはいけないブツらしい。水に溶かすと電気が流れやすくなるんだそう。
手回し発電機をグルグル回すと、電極から泡が出て水の電気分解が起こる。
自宅で薬品を溶かし、ひっそりと行う電気実験……別に悪いことをしているわけではないのだが、マッドサイエンティストさながらに「ふふふ……」とほくそ笑みたくなる。まぁ、原理はまったくわかってないけどな。
発射管の中に水素と炭素がたまり、水面が下がってくる。十分に燃料がたまったら発射ボタンを……
ファイアー!
「バン!」という大きな破裂音がして、ロケットが吹っ飛ぶ。思わず身体がビクッとする音量だ。
なんと勢いよく天井にぶつかって戻ってくる威力である。最大飛距離7m、最高高度3.5mだという。
発射管の角度を変えて、横に飛ばすことも可能。なんだこれ、楽しいぞ。
ロケットがすごい勢いで吹っ飛んでいく、ただそれだけなのに感動がある。手元で小さな爆発が起こっているのだ。エクスプロージョンだ!
本誌ではロケットで起きているひとつひとつのプロセスを丁寧に図解。読み込めば「数学」とか「物理」とか聞いただけで拒絶反応が起こる、筆者のような文系人間でも理解できそう。
「発射実験記録ノート」のページがあったり、改造例がついていたりして深掘りもできる。子どもなら立派な自由研究になるはず。
誌面の充実っぷりが、他誌とは違う貫禄だ。「世界とつながるほんもの体験キット」のキャッチコピーはダテじゃない。
・年3回刊行
今回ご紹介した号は2022年7月7日発売で、年3回刊行予定。おばちゃんには出会えなくなったが、たしかに “学研マインド” が息づいている。これからどんな付録がつくのか楽しみだ。
ちなみに筆者の印象に残っている付録は「アリの巣観察キット」や「カブトエビ飼育セット」などの生き物系。付録ではないが、こするとチョコレートの香りがする綴じ込みページに狂ったように夢中になったこともあった。
学研公式サイトの「ふろくギャラリー」では歴代の付録が紹介され、埋もれていた記憶に出会えるぞ。当時の家族構成、子ども心に考えていたこと、住んでいた家の空気などが思い出され、「あああぁぁぁ!」と声にならない叫びが出ること請け合いだ。
参考リンク:学研の科学
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES、RocketNews24.