みんな元気セヨ！ 今韓国を代表するK-POPアイドルグループは間違いなく防弾少年団、「BTS」だ。日本や中国などの韓国と文化的に近い国々では、ヨン様をはじめTWICEまでいわゆる「韓流」の人気は続いていたが、ここまで世界を舞台とするグループは今までなかった。
そんなBTS、彼らは今韓国で音楽活動ではなく別の問題で注目を浴びている。それは韓国人の男なら誰しもが一度は面と向かうこととなるイベント。「兵役問題」だ。今回の団体活動休止の件も兵役問題の影響もあると見られている中、そのBTSの兵役問題について詳しく書いてみた。
・まず軍制度について
韓国人男性は韓国で生まれた以上、基本的には兵役の義務がある。普通の場合、18歳から28歳まで必ず兵役の義務を果たさなければならない。ほとんどの韓国人男性は、20歳から22歳の間に大学を休学するなり仕事を一時休職するなりして果たす。
・普通の軍人だけではない
韓国の兵役服務形態は普通の軍人だけではない。もちろんほとんどが「陸軍」として服務することとなるが、自分の健康状態や専攻などに合わせて服務することができる。例えば医師や歯科医師免許を持っている者は公衆保険医という国の医師として働くことが可能だ。
服務形態によって服務期間が違い、最短で1年6ヶ月、最長で3年2ヶ月となる。一応「軍免除」も存在するが、それは体が不自由であることや二重国籍、他国の永住権取得など妥当な理由がないと不可能だ。
・BTSの場合は？
実はBTSの場合、兵役問題で騒がしくなっているのは彼らの「軍免除」のためではない。彼らを「芸術体育要員」として認めるかどうかだ。
芸術体育要員とは、名前の通り芸能や体育の分野を特技とする者の兵役服務形態だ。この服務形態は3週間の基礎訓練を受けるのと、2年10ヶ月間自分の分野で働く ＋ 544時間のボランティア活動をしなければならない。
もちろん他の服務形態よりは自分のキャリアに支障を与えないが、全く影響がないわけではない。
・芸術体育要員になるための条件
芸術体育要員になるにはクリアしなければならない条件がある。まず2022年現在、体育のほうは、
① オリンピックで3位以上の成績
② アジア競技大会で1位の成績
そう。めちゃくちゃ厳しいのだこれが。例えば今プレミアリーグで大活躍のサッカー選手「ソンフンミン」は2018年度のアジア競技大会で優勝したことで芸術体育要員として選ばれることができた。
では芸術のほうの条件は、
① 韓国兵務庁で認めた国際芸術大会2位以上の成績
② 韓国兵務庁で認めた国内芸術大会で1位の成績
③ 重要無形文化財を5年以上伝授された者
ここでいう国際芸術大会はクラシックやバレエなどの大会を意味し、国内芸術大会は韓国の伝統音楽や伝統舞踊の大会などを意味する。①に該当する者はすべての楽器を合わせて年間5人くらいしかいないほど、こっちもかなり厳しい。
上記の通り、BTSがやっている「大衆音楽」のための基準は存在しない。今韓国の世論が二分裂しているのは、BTSのために大衆音楽を加えるかどうかだ。
その賛成派と反対派で分かれている意見をまとめてみたのがこちら。
・賛成派の意見
まず「芸術のジャンル差別である」は、現状はクラシックや伝統音楽などの歴史の長い文化だけが認められているが、大衆音楽も芸術として国を輝かせている文化として認めるべき。とのことだ。
次の「経済的利益」は、BTSは現在1年間1000億円を超える経済効果を出しているからだ。そんな彼らが入隊することで活動できなくなるのは、国的にも経済的損失となってしまう。
最後の「世界的影響力」は、最近はバイデン大統領よりホワイトハウスに招待されたことや、UNでのスピーチなど（ちょっと前の広島原爆Tシャツ騒動も含めて）、世界に莫大な影響力を持つ彼らを普通に入隊させるのはもったいないとのことだ。
・それに対して反対派の意見は
最初の「基準設定が難しい」は、まず大衆音楽はクラシックのような由緒深い大会が存在しない。まだ基準になりそうな世界的音楽賞、Grammy Awardsではノミネートされたものの、受賞までは至ってない。
2つ目の「国益ではなく私益にすぎない」は、結局大衆音楽はお金のための音楽であり、彼らが稼いでいるお金は結局事務所と彼らのお金である。との意見だ。
3つ目の「兵役服務は公平であるべき」は、BTSのような特別例を作ってしまうとキリがなくなる、とのことだ。有名ではないが彼らのように、もしかしたらそれよりもっと経済的効果を与えられたかもしれない若いCEOたちも2年間活動を制限されてしまっているのは、公平でないかもしれない。
・会社の株価にまで影響
BTSの事務所である「HYBE」の株価は、この記事を執筆していた2022年6月13日、1株20万ウォン（2万円）程度で最高値に比べると3分の2を下回っていた。全世界的な経済不況ではあるが、わずか2ヵ月で32％以上株価が下がったのは、BTSの兵役問題の解決が遅くなっていることに影響されているとの意見が多数だ。
・今年がラストチャンス
BTSの最年長メンバー「ジン」は、今年30歳の誕生日を迎える。実は彼の場合、すでに韓国政府が特別に兵役延期の年齢制限を高くしてあげているのだ。今年の末までが彼にとって正念場だ。
前の記事で述べたように、韓国は政権交代されたばかり。新しい政府がBTSに対してどういう決定を下すか、これからも注目だ。それでは読んでくれてカムサハムニダ！
※この記事の年齢はすべて日本の数え方で表記している。
参考リンク：韓国兵務庁公式ホームページ（韓国語）、BTSの兵役服務に対する世論調査（韓国語）、Investing.com
執筆：すんぴょんす
Photo：RocketNews24.
イラスト：稲葉翔子
▼2022年6月14日、BTSが団体活動をしばらく休止すると発表。株価はさらに暴落した。
