競走馬にとって一度しかない舞台である日本ダービーは、馬券を買う側からしても気合の入るレースの1つ。要するに祭りである。今年から馬券を購入し始めた私(中澤)もド素人ながら何かこの祭りに乗っかりたい。そこで初めてWINS(ウインズ)に行ってみることにした

ウインズとはJRAの場外馬券売り場。やはり祭りと言えば1人より大勢でワイワイしたいものだ。そしてどうせなら、デカイウインズに行きたい。というわけで、水道橋に降り立った。東京ドームシティに日本最大の規模を誇るウインズ後楽園があるのである。

・意外とカジュアルなのかも

夏の予感を感じさせる日差し。雲一つない快晴の中、子供たちが跳ね回るように駆け巡る。休日、晴れ、東京ドームシティ。そんな完膚なきまでのカジュアルさの中見上げるウインズはまるで東急ハンズのようだ

場外馬券売り場ってもっとアウトローなイメージがあったが、入口前まで来てもカジュアルな雰囲気は失われない。そう言えば、近頃は競馬女子も多いと聞く。ウマ娘も流行ってるし、ひょっとしたら今やウインズ内も東急ハンズみたいな感じなのかも

・異世界

入場料は必要なく入口に行列などもない。そこで入口の通路を進んでみたところ奥には長いエスカレーターがあった。エスカレーターの先には投票所がある模様。

エントランス階は東京ドームシティの通りと地続きの雰囲気だったので、このエスカレーターが真の入り口と言えるかもしれない。というわけで、エスカレーターを登ってみたところ……


いや、オッサンだらけやないかい


空港のように点々と設置されたモニターにも、壁際に並ぶ投票機にも、ただっ広いフロアーには見渡す限りオッサンしかいなかった。この辺にこんなにオッサンがいたのか

声を押し殺し、モニターを食い入るように見つめるオッサンたち。そして、時に感極まって「よっしゃ」とか「来い!」とか口々に漏らす。外のカジュアルさからは想像もつかないガチ感だ。エスカレーターを登ったら完全に異世界でした。

・思いもよらない出来事が勃発

さて置き、良いところは今日やるレースがひと通り見られること。すなわち、テレビでやらない時間のレースが放送されている。

会場のオッサンたちも多分、テレビで放送されるレースだけでは物足りないからここに足を運んでいるんだろう。新潟や中京の小さなレースでも、投票機やモニターの前には毎回人だかりができている。これがガチ勢……。と、その時、思いもよらない出来事が勃発した。人だかりの中に……


原田たかし記者おった……!

同僚の原田たかし記者が普通に後楽園ウインズにいた。確かに、都内でウインズがある場所は限られている。原田記者に聞いたところ、「まあ、ダービーだしね」とのことであった。

・馬券は投票カードで購入

せっかくなので、原田たかし記者に買い方を聞いて新潟や中京の馬券を買ってみることに。馬券は、投票カードに記載し、壁際の投票機にお金と一緒に入れるだけで購入できるそうだ。

投票カードにはベーシックタイプから、連単ながしタイプ、ボックスタイプなどいろんな種類があるが、いずれも馬番をマークするマークシート方式であることは共通しており、当たり前だが馬名などは書かれていない

・オッズはモニター、データは新聞

一方、レース前のモニターでは、馬名とオッズやパドックの様子がかわるがわる映し出されている。では、どこで出走する馬の情報を調べるのかと言うと、競馬新聞かネット検索のどちらかなのだそうだ。

つまり、購入は各馬の情報を見ながら、モニターに流れるオッズやパドックの状態と照らし合わせ、投票カードに記載することになる。なんだこのマルチタスク

・素人には短いタイムリミット

しかも、グズグズしていると意外と早く締め切りがやってくる。名前を知っている馬が一頭もいないようなレースで、いちから調べて自分の賭ける馬を決断するのはなかなか大変だ。で、適当にオッズを見て賭けてみたところ普通にハズレた

小さいレースだと1番人気が実力的に秀でているのかいまいちよく分からない。GⅠに出る馬ほど実績を残してなかったりもするし。

・ウインズの魔物

しかしながら、せっかくひっきりなしにレースをやっているのに、賭けないっていうのはなんかもったいない。ウインズを楽しめていない気がするというか。ダービーまでまだ時間もあったので、前哨戦のような気持ちでいくつかのレースで賭けていったところ……


全敗した。

あいたたたた! 「せっかく来たから賭けるか」という気持ちはひょっとしたらウインズに住む魔物なのかもしれない。まあ、今日は個人的に1年に1回の祭りだから良いとして、毎週、この散財をするようになったヤバイ気がする。隣の原田たかし記者も「まあ、ダービーだしね」と言ってるし。

・降りてきた原田たかし記者

さて、そんなこんなで日本ダービー。ここまで来たら、私的には盛り上がれたらなんでもOK。だから、馬券は事前の予想記事で買っていたもののみで勝負することにした。一方、「降りてきたァッ!」と馬券を買い足す原田たかし記者。こんなに目がキマッてる原田たかし記者を初めて見た気がする。


でも負けた


ついでに目黒記念も負けた。

・ボロ負けした時のお約束

2人合わせて1回も当たらなかった。ボロ負けである。そもそも私はウインズに来るのも初めてなのでこんなに負けるのも初めてなのだが、原田たかし記者いわく、こんな日のお約束があるそうだ。それは……


酒を飲んで忘れる

というわけで、2軒ハシゴした末、競馬でボロ負けしたオッサンはご機嫌で帰っていった。水道橋の夜に消えていくその背中に私はこう思わずにいられなかった。「これが普通になったら終わりだな」と。でも、まあ……


ダービーだしね


<完>


執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼その夜の原田たかし記者のツイートがこちら