思い込みというのは実に恐ろしいもので、ときに “人生半分損したり” もする。

正直、私は人生半分損していた。これまで10年以上も新宿近辺に勤めていながら、しかも黄色と黒の看板をしっかりと視界に入れておきながら、なぜかそこを「カレー屋さん」だと思い込んでいたのだ。

お店の名前は「らんぶる」。その日、なんとなく、入ってみた。本当に、なんとなく、だった。地下へと続く薄暗い狭い階段を降って行くと……

完全なる別世界だった──。


なんなんだここは……。映画のセットなのか? なんという昭和レトロ感。それと同時に格式も品格も感じまくる。とにかく雰囲気が最高すぎる。メインのホールへ降りる階段なんて、まるで豪華客船タイタニックのようなゴージャスさだ。


そんななか注文したのは、もちろん──

チョコレートパフェ(1000円)だ。


かつて昭和の時代、モダンな貴婦人のことをモガ(モダンガール)と呼んだらしいが、そのパフェの佇(たたず)まいは、まさしく「モガ」そのものだった。


入っているのは、さくらんぼ、アイス、バナナ、みかん、ホイップクリームにコーンフレーク……と、いわゆる “純喫茶チョコパフェ” のド真ん中。しかしながら、食べた瞬間、私は本当に驚いた。

味そのものも、良い意味で “レトロ” なのだ。昭和の味というか。遠い昔に食べたことある “懐かしい味” であり、“懐かしいパフェ” なのだ。特にそれを感じたのは、バニラのアイスと、ホイップクリーム。

手作り感あふれる黄色っぽいバニラアイスと、ズドンと重いヘビィなホイップクリーム、そこに、これまた懐かしい感じのチョコソースが三位一体に組み合わさり、絶妙なハーモニーを奏でている。その曲は懐メロなんかではなく、ジャズでもなく、クラシックがよく似合う。


後日、調べてみると、同店の創業は昭和25年。チョコレートパフェは “昔から変わらないメニュー” であるらしい。どうりで懐かしい味がするわけだ。

また同店はWikipediaにまとめられているほどの有名店であり、「店内でクラシック音楽を聴かせる名曲喫茶」「旅行好きの創業者の趣味により、客船のような内装となっている」とも書いてあった。


まさか職場の近くにクラシックが聴ける豪華客船があっただなんて。しかも “懐かしウマい” チョコレートパフェが食べられるだなんて。なぜ10年近くもカレー屋さんだと思い込んでいたのだろう。人生半分損してた。でも今、知れた。これから半分、取り戻す。モガなパフェとともに。


・今回訪問した店舗の情報

店名 名曲・珈琲 新宿らんぶる
住所 新宿区新宿3-31-3
営業時間 AM9:30~PM18:00(L.O PM17:00)
定休日 元日

執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24

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