
大災害に未知のウイルスの流行に……ここ数年、予想だにしなかったことがいくつも起きている。
とりわけ、新型コロナウイルスが流行してからは、世界が一変してしまった。ときどき、まるで漫画や映画の世界を生きているようだなと思う。
あるとき、今から25年前にホラー漫画家・関よしみ先生が描いた『ウイルスの牙』という作品を読んで驚いた。まさにコロナ禍の社会の予言のような作品だったからである。
・異色のホラー漫画家 関よしみ先生
作品の話の前に、まずは作者である関よしみ先生について説明したい。関よしみ先生は一部ではカルト的な人気のあるホラー漫画家である。彼女が描くのは怪奇現象や幽霊ではなく人間のグロテスクさ。少女漫画風の絵柄と、極限状態になった人間の奇行を描くギャップがすさまじく、「トラウマになった漫画」などでもよく作品が挙がっている。
殺人事件の現場となった家に引っ越してきた隣人が狂っていく『マッドハウス』。全裸の老人が家に上がりこんできて、冷蔵庫の生魚を舐め回したあといきなり便をしだすなど、ショッキングかつシュールな描写の連続である。
紙のコミックスは絶版が多く手に入りづらいなか、電子コミックで復刻していた『関よしみ傑作集 マッドパパ』を購入したところ、1997年に描かれた『ウイルスの牙』が掲載されていた。
・『ウイルスの牙』あらすじ
主人公は推薦で進路が決定している中学3年生の女子・仁美。周囲は入試直前でピリピリしたムードのため、教室でくしゃみでもしようものなら睨まれてしまう。
そんななか、感染力と致死率が非常に高いD型インフルエンザが海外で流行し、死者が3万人を超えたというニュースが入る。感染国からの出入国が禁止されるも、ついに日本でも感染者が確認され、しだいに学校も街もパニックに。
ワクチンも治療法もないため「患者を乗せた救急車はそのまま火葬場に直行する」というデマに惑わされた人々が異常な行動を起こすようになる……。
・病気以上に怖い「人間の心理」
この作品がすごいのは、病気そのものの怖さ以上に、ウイルスが蔓延した世界と、ウイルスに惑わされる人々の心理を的確に描いている点である。
・マスクの取り合いが起こり、マスクが異常高騰
・怪しいウイルス予防商品が高額で販売される
・学校は休校に、会社も休みになり外出が制限される
・医療が崩壊する
・感染の恐怖から身近な人の間で憎み合いが起こる
・デマやウワサによって街全体が狂っていく
「事実は小説より奇なり」とはいうが、ほとんど現実社会で起きたのと同じような描写が続く。まるで新型コロナウイルスが流行した世界をそのまま描いているようで、25年前のフィクション作品とは思えないほどのリアルさにゾッとした。
・主人公の父が語る本質
また、驚くべきは、パニックに陥った人々の行動だけでなく、正しい予防法や心構えも描かれていること。この作品の良心ともいえる、薬剤師である主人公の父は「病気の予防は手洗いうがいが基本」と物語の序盤から語り、ウイルスの流行後には真っ先に「マスクをすること」を推奨する。そしてテレビのニュースを見ながらふと
「もしかしたらウイルスよりも無責任なウワサやデマのほうが怖いのかもしれん……」
と不安げに語り、その予感は的中するのである。
正しい知識を持って感染を予防し、出どころの分からないデマやウワサには惑わされない。これは新型コロナウイルス流行によって混乱した世界を生きる中で、多くの人が身を持って感じたことではないだろうか。
・人間の怖さを描く関よしみの先見性
果たして物語の最後はどう描かれているのか……それは実際に漫画を読んでみてほしい。関よしみ先生の他のホラー作品に比べると本作はシュールで残虐な要素はやや控えめな印象だ。しかし、それゆえに真摯なメッセージ性、そして人間の暗部をえぐり出す関よしみ先生の先見性を感じる。
『ウイルスの牙』が収録された『関よしみ傑作集 マッドパパ』は各社の電子コミックサイトで販売中である。なお、Kindle Unlimitedでは無料で公開中。表題作の『マッドパパ』や、行き過ぎたブラック部活が死を呼ぶ『裏切りのダンクシュート』といった収録作も面白いのでぜひ読んでみてほしい。
参考リンク:Amazon、コミックシーモア、Renta!、Book Live、まんが王国
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
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御花畑マリコ



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