「兵糧丸(ひょうろうがん)」とは、戦国時代に武将や忍者たちが戦場などで食べていたとされる携行食のこと。一粒食べるだけで腹持ちが良く、一日中走り回れる栄養食──などとして小説や漫画などに登場することもあるため、名前だけは知っている方もいるかもしれない。

そんな「兵糧丸」が手に入るお店を、現代の東京で発見した。果たして戦国の栄養食はどんな味がするのか……さっそく食べてみた!

・噛みごたえ抜群

「兵糧丸」は東京・恵比寿にある『写真集食堂 めぐたま』で2020年4月から発売された。「写真集食堂」の名の通り、5000冊もの写真集が並んでいる近代的な作りの店内……にもかかわらず、なぜか「兵糧丸」が販売されているのだ。不思議。

現在販売されている「兵糧丸」はスタンダードな「元祖(6個入・税込540円)」と、蕎麦アレルギーの方でも食べられるようにとアレンジした「黒胡麻・胡桃(くろごま・くるみ) / グルテンフリー(6個入・税込648円)」の2種類があった。ちなみに、兵糧丸はある程度の共通点はあるものの、各地域・家ごとの作り方があってバリエーション豊富なものらしい。

まずは「元祖」の方からいただいてみる。個包装されている兵糧丸を取り出してみると、見た目はお団子のようなのに意外なほどの固さを感じる。そのまま一粒口に含んでみると……めちゃくちゃしっかりとした噛みごたえが。ちゃんと噛まなければならない分、より腹持ちが良くなるのかもしれない。

おまけに、噛めば噛むほど豊富に含まれた穀物たちの風味が際立ってきて美味しい。優しい甘さが口の中にふんわりと広がっていき、何とも言えない穏やかな心地になってくる。実は「兵糧丸」、フィクションの中で「栄養満点だけどあまり美味しくない」と描写されることも多いのだが……これなら一粒と言わず、何粒でも食べられそうだ。

続いて、グルテンフリーの「黒胡麻・胡桃」の方を食べてみると……これまた美味しい。「元祖」と比べるとやや柔らかいものの、クルミが入っている分また違った噛みごたえを感じて楽しい。

「元祖」にも白ゴマが含まれているものの、「黒胡麻・胡桃」の香ばしさは格別だ。そば粉が含まれていない分「元祖」よりも風味に物足りなさを感じるかと思ったが、「兵糧丸」の違う美味しさを魅せてくれた。

お店の方いわく「食べた方が元気になるように! との思いを込めて作った」とのことだったが、「兵糧丸」を美味しく味わっているだけで元気が出てきた気がする。

・新型コロナウイルスの影響で販売

しかし、なぜ現代の東京で「兵糧丸」を販売しようと思ったのか。疑問に思って伺ってみると「新型コロナウイルス感染症が流行して暇になったから」とのことだった。

聞けば『写真集食堂 めぐたま』では元々、戦国時代や江戸時代などの昔の料理を再現していたようだ。その一環で「兵糧丸」も試行錯誤していたが、時間がなく販売にはいたっていなかったという。そんな最中、新型コロナウイルス感染症の流行により思わぬ暇が出来てしまい、持ち帰り用に何か……と考えたときに出てきたのが「兵糧丸」だったそう。

思いもよらず生まれてしまった空き時間を無駄にせず開発・アレンジに用いた結果が、現在販売されている兵糧丸というわけだ。パッと買って持ち帰れる上、栄養満点とうたわれていたほどの「兵糧丸」──戦国時代だけでなく、現代にもピッタリではないだろうか。

ちなみに『写真集食堂 めぐたま』では「新型コロナウイルスになんか負けないぞ!」と消毒・換気の徹底や持ち帰りメニューの用意はもちろんのこと、客席を離して配膳も向かい合わせにしないなど、「兵糧丸」の販売以外にも様々な工夫をこらして営業を続けている。

そして「兵糧丸」にも近々、新型コロナウイルスに討ち勝てるような、新しい仲間が登場するようだ。戦国時代の知恵と現代を生きる人々の熱い想いが詰まった「兵糧丸」。気になった方はまず一粒、食べてみては。

・今回訪問した店舗の情報

店名 写真集食堂 めぐたま
住所 東京都渋谷区東3-2-7 1F
営業時間 平日・11:30~23:00(L.O22:00) / 土日祭日・12:00~22:00(L.O21:00)
定休日 月曜日

Report:伊達彩香
Photo:RocketNews24.
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