古来より人の立ち入りが禁じられた土地・禁足地。科学が発達した現代においても、これらのスポットはひっそりと、しかし確実に日本各地に点在している。
中でも、名前からすでにオーラがビンビンきてるのが石川県にある『入らずの森(いらずのもり)』だ。絶対、入っちゃいけない名前である。一体どんなとこなんだろうか? 気になったので入ってみたよ!
・衝撃
と言っても、もちろん無断で突入したわけではない。『入らずの森』は石川県の氣多大社本殿背後に広がっている神域なのだが、氣多大社の公式サイトを見てみたところ……
【衝撃】3000円で入れる。
サイトには「入らずの森詣で」というプランが載っており、これが森に入り神の気を授かるというものだったのだ。祈願料が3000円である。
そこでググッてみると、2019年12月1日から1カ月間の期間限定で400年ぶりに公開されたと毎日新聞に書かれていた。どうやら、2020年~21年はコロナ禍の影響で初詣期間を延長しているようである。
・参拝券はネット購入可
これは渡りに船というヤツではないだろうか。絶対引き返してはいけない雄島橋でムーンウォークしたこともあり、ちょうど邪気の1つも祓いたかったところである。というわけで、ECサイトのカートに「邪気退散」の参拝券を入れて時間を予約し……
氣多大社にやって来た。
大雨だ。傘が雨音でボトボト言うくらいのレベル。そう、私は雨男なのである。イギリスでは世界最恐心霊スポット「チリンガム城」にも行ったし、雄島橋よりもっとずっと前から何か悪いものが憑いているのかもしれない。3000円でこれが祓えるなら安いものだ。
・お祓い
拝殿向かって左手の社務所で受付を済ませると拝殿の中へと案内される。森に入る前に、まずはお祓いをするもよう。並べられた椅子に座ると奥の部屋に祭壇のようなものがあった。鳴り響く重い太鼓の音が雰囲気を醸し出している。
その祭壇に向かい神職の方が祝詞(のりと)をあげた後、こちらを向いて大麻(おおぬさ)をワサワサする。子供の頃憧れたなあ、大麻。なんか特殊能力的な感じがカッコ良く見えたものである。
──と、そう思っている間にお祓いが完了。お祓いって初めてだったが、なんとなく肩が軽くなった気がした。穢れも祓われたところで、『入らずの森』へGO。
・入らずの森へ
拝殿右手にある石階段を上ると森への入り口がある。と、ここから先は撮影禁止のため、画像は写真家でもある宮司の三井さんにお借りしたものであることをご了承いただければと思う。
さて、地面にはナイロンで道が作られており、それが森の中まで続いていた。これは森の土に靴が接地するのを防ぐための処置。
3500年前からあると言われる『入らずの森』は、禁足地であると同時に「日本の森の原型が見られる場所」として国の天然記念物にも指定されている。細菌や本来ない外来種の種が靴裏に付着していた場合、森の生態系を脅かす恐れがあるのだ。
というわけで、森の木々にはもちろん触れてはいけない。とは言え、縦横無尽に木が伸びており、道に倒れている木もあるため避けながら進む。
・外からは想像もつかない景色
道が作られているのはせいぜい40~50mほどで、森の始まりの部分をクルッと回る感じ。しかしながら、中に入ってみると、木から木が何本も生えていたり真横に幹が伸びていたり、外からは想像もつかなかった景色が広がっていた。
その混沌とも言える木々の渦には、生命の躍動を感じる。宮司さんの話によると、陽の光を求めて木々が枝を伸ばして良い場所を取り合い、雪や風で枝が折れてまた新しい場所ができ……ということが繰り返されるためにこういった形になるのだとか。個人的には映画『もののけ姫』の森を思い出した。
そんな森の中で、2礼2拍手1礼のお参りをして、「入らずの森詣で」は終了。お祓いから森を出るまでで16分ほど、森の中に入ったのは7分ほどだったが、やはり何かスッキリした気分になったのはさすが神の森だ。
・春に入れるのはレア
なお、2021年4月7日現在、『入らずの森詣で』は5月9日まで延長されている。普段は12月から1カ月ほどであることを考えると、春の良い季節に森に入れるのはレアと言えるだろう。ちなみに、参拝券は邪気退散だけではなく、無病息災から縁結び、運気上昇、商売繁盛など21種類あるので神の気を授かりたい人は行ってみてはいかがだろうか。
参考リンク:氣多大社、毎日新聞
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.、氣多大社宮司・三井孝秀
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▼「入らずの森」の入り口の横にある立ち入り禁止の鳥居。画像左には入らずの森詣で中の人も写っている
▼森の外の『もののけ姫』っぽい場所